紳也特急265号

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全国で年間200回以上の講演、HIV/AIDSや泌尿器科の診療、HPからの相談を精力的に行う岩室紳也医師の思いを込めたメールニュース! 性やエイズ教育にとどまらない社会が直面する課題を専門家の立場から鋭く解説。
Shinya Express (毎月1日発行) 
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~今月のテーマ『ストレス解消はマスクなしのリアルな会話から』~

●『生徒の感想』
○『AIDS文化フォーラム in 横浜での感染対策』
●『AIDS文化フォーラム in 横浜での気づき』
○『オンライン顔・カメラ顔』
●『マスクなしのリアルな会話を』
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●生徒の感想
 今回の講演でコロナウイルスに関して話してくださり、テレビで話す専門家や政府関係者よりも納得のできる話でした。(高校2年女子)
 感染症の「どこから、どこへ、どうやって」の正しい知識は、私たちにとって一番欲しい情報だったと思います。(高校2年女子)
 「ウイルスは、どこから、どこへ、どうやって」という言葉は国の偉い人とかにも聞いてもらいたいくらいのいい言葉です。(高校2年男子)
 僕はなぜ、どうしてそうなるのか、感染するのかを考えずに、マスクは義務なんだとか勝手に思い込んでいました。先生の講演を聞いて、訳も分からずに周りがやっているから、流れに身を任せるのは危険なんだと感じました。(高校2年男子)
 私は早くマスクをせず、高校生活を楽しみたいです。まだマスク越しでしか顔を知らない子さえいます。将来マスクなしで出かけることができたとしても同級生の顔が分からなければただの他人として判断してしまうでしょう。だから、マスクをせずに高校生活を楽しみたいです。(高校2年女子)
 コロナはとりあえずマスクして、消毒すれば大丈夫ということではなくて、消毒のタイミングを考えたり、むだにマスクの表面をさわるなら条件によってはマスクをしない方がよい時もあるのだと思いました。特に小さい子はいろんなところを触ったりするので、マスクがかえって危険になることもあるんだと知ることができました(高校2年女子)
 今のこのコロナの状況でマスクは絶対必要で、ウイルスを取り込まないようにしてくれる一番のアイテムだと思っていました。けれど、マスクを着けていることでたくさん空気を吸い込もうとするため、その分吐く息も多くなるから鏡が曇るというのを聞いてなるほどと思いました。ある程度の距離があるのならマスクを外した方がいいということが分かったのでこれからの生活に生かしていきたいと思います。(高校2年女子)
 
 夏休み前に高校2年生に話した時の感想です。いろんなことを考えてくれていて、うれしかったです。講演後も保健室でも1時間以上いろんな質問がありました。Facebookで紹介しましたが、中学生の時に私の話を聞いた生徒さんが、仲間3人に呼びかけて作ってくれた「コ」「ン」「ド」「ー」「ム」と書かれたプラカードを講演中に掲げてくれ、それを持って一緒に写真撮影もさせていただきました。世の中には「正解」を求めている人が多いと思っていましたが、少なくともこの学校の生徒さんたちは「考えるための情報」を求めていました。
 岩室紳也自身も考えるための情報と機会を常に求めていますが、コロナ禍で仕事が減り、行きつけの飲み屋さんにも行けず、いろんな人に会えない状況が続くと考えるための情報もいただけず、本当にストレスフルな毎日です。しかし、8月上旬に開催されたAIDS文化フォーラム in 横浜でいろんな人とマスクなしのリアルで話す中で、考えるための情報をいただけただけではなく、大いにストレス解消をさせていただきました。そこで今月のテーマを「ストレス解消はマスクなしのリアルな会話から」としました。

ストレス解消はマスクなしのリアルな会話から

○AIDS文化フォーラム in 横浜での感染対策
 今年のAIDS文化フォーラム in 横浜は昨年に引き続きオンラインでの開催となってしまいました。いつものかながわ県民センターが耐震工事のため、あーすぷらざという音楽の生演奏もできる会場をお借りすることになっていました。そこでのハイブリッド開催を目指し、千葉ダルクの方々による琉球太鼓の演奏と、映画「プリズンサークル」の上映ができるのを楽しみにしていたのですが、緊急事態宣言の発出でオンライン開催となってしまいました。
 とはいえ、配信会場では感染予防策を徹底し、登壇者がリアルで、対面しながらマスクなしでトークを展開するプログラムを実現することができました。飛沫感染対策として配信スタッフとは2m以上の距離をとり、登壇者間はアクリル板による飛沫飛散防止。エアロゾルと飛沫核(空気)感染対策として登壇者の背後から排気口に向けた空気の流れの創出による積極的な排気、飛沫核、空気の追い出し。接触(媒介物)感染対策として入退室時の手指のアルコール消毒と室内飲水は用意したペットボトルとし、配信会場内で登壇者やスタッフが感染するリスクを最小限にする対策を徹底しました。
 
●AIDS文化フォーラム in 横浜での気づき
 私が登壇したプログラムはすべて他の登壇者とのトーク形式でしたが、マスクなしのリアルでの対面トークとオンライントークの違いについて大きな気づきをいただきました。トークの場面は次の4つのパターンでした。
 
 岩室を含む登壇者全員が同じ配信会場でトーク。
 岩室を含む登壇者3人が配信会場から、1人がオンラインで参加。
 岩室が配信会場から、他の4人の登壇者全員がオンラインで参加。
 岩室が配信会場から、もう1人はオンラインで参加。
 
 いろんな人と対面で話す機会が減る中、登壇者全員が同じ会場でトークをしたプログラムは参加していて非常に充実感を感じるとともに、楽しさが抜きんでていました。もちろん、登壇する前はお互いにマスクをつけて挨拶をしたり、下打ち合わせをしたりしたのですが、マスクを外して、お互いの表情が見える状態でトークが始まるや否や、それぞれの気持ちがはじけたようにトークが展開されていました。初対面の人もいる中、だからこそ一人ひとりの表情や体全体で表している思いを感じながら、ごく自然な形で他の人の話に途中から入ったりすることもできました。というか、一人ひとりが本来はそのような関り方をしていたんだということを思い出しては楽しみ、日頃のストレス解消をしていたように思います。中高生に話をする時に、「2m以上の距離を取り、マスクを外して話す」ことの大切さを伝えてきましたが、これからは自分自身の経験として「マスクなしのリアルトークの大切さと楽しさ」を伝えたいと思いました。
 ところが登壇者のお一人だけがオンライン参加だと、対面で話している人たちの話が盛り上がる一方で、オンラインの方について、「いつ、どのようなタイミングでこの人に振ればいいか」といった流れづくりに気を取られてしまいますし、その方もどこで話に入ればいいかを探り続けておられると感じました。もちろん話の流れはそれなりにスムースに進んだのですが、その方が同じフロアにいらっしゃればもっと盛り上がったのだろうなと思いました。
 登壇者全員がオンラインでの参加の場合はいかに話の流れをスムースに運ぶかといったことに全精力をつぎ込んでいて、一人ひとりとのトークの楽しさはやはり少なかったと言わざるを得ません。
 二人でオンライントークをした相手は同じ運営委員の宮崎豊久さんでした。お互い気心も知れている間柄だったので、その場は上手くまとめられたとは思いつつ、もしリアルだったらもっと気分的にも盛り上がっただろうと思いました。おそらくオンライン故の一瞬のタイムラグのため突っ込みが一瞬ずれることで、言葉が弾んだキャッチボール的なやり取りができないのだと感じました。
 一方でプログラムを聞いていた方の立場から考えてみました。視聴者はどのセッションも画面越しで視聴しているため、配信会場の人もアップでうつる時はオンライン参加の人と同じように映るのでどちらも同じだと思ったのではないでしょうか。さらにAIDS文化フォーラム in 横浜のオンライン配信チームは秀逸で、スタジオのようにカメラ3台を切り替え式で操作していたので、配信会場の映像もスピーカービューで見ているとどのセッションの映像も同じように見え、会場とオンラインの違いを感じなかったと思われます。オンライン授業、オンライン会議、オンライン講演会が当たり前の世の中ですが、だからこそオンラインの限界と問題点についてさらに検証を重ねる必要があるようです。

○オンライン顔・カメラ顔
 皆さんはテレビに映っている人たちをどのような感覚で見ているでしょうか。何となく平面的で、テレビに映っている人たちとの交流感はないですよね。今回、オンライン参加されている方々と大きなテレビ画面越しでトークをしたのですが、画面に映っている顔が「オンライン顔」「カメラ顔」だと感じました。もちろん笑うなどいろんな表情をされるのですが、ギャラリービューでみんなが同じ画面に映っていても、やはり交流感は乏しいと思いました。
 一方で、会場で一堂に会している他の登壇者はどちらかというと横顔が中心で正面の表情は見えないにも関わらず、いろんな場面でうなずいたり、いろんな表情を見せたり、さらには見ていなくても反応していることを感じる中で、一緒にいるという感覚をもらえました。カールロジャーズが「人は話すことで癒される」という言葉を発した時代はオンラインで話すということは想定されていなかったでしょう。今回、「話す」というのは単に言葉のやり取りをするだけではなく、リアルに会って言葉を交わすことに加え、その場の空気をも共有することだと実感させていただきました。
 では、なぜ「オンライン顔」「カメラ顔」だと癒しにつながりにくいのでしょうか。そう考えた時に思い出した言葉が「コミュニケーション」でした。コミュニケーションの語源は「わかちあう」「共有する」だそうですが、カールロジャーズが言った「話す」というのは、単に言葉を交わすだけではなく、言葉以外の雰囲気やしぐさをも含んだ「コミュニケーション」という意味だったのだと納得しました。

●マスクなしのリアルな会話を
 当たり前のことが当たり前ではなくなってしまったコロナ禍で、夏休みも延長して学校に行けないなど、児童、生徒たちが相変わらず大人たちに振り回されています。「オンライン授業をするんだからいいだろ」とか、「半数は学校に来ている」といった安易な考え方ではなく、マスクなしで相手の表情を見ながら会話をすることの大切さを、生徒一人ひとりが改めて感じる場面を作ってもらいたいと思います。
 行政の要請を無視してお酒を提供している居酒屋が各地で繁盛しているようですし、横浜市内にもそのようなお店は数多くあります。神奈川県知事はマスク飲食を求めていますが、もちろんそのようなお店の利用者はマスクなしで談笑しています。ではこの人たちは単に「酒が飲みたい」「コロナなんて関係ない」「行政のいうことなんか聞いてられるか」といった不埒な考えの人たちでしょうか。もしかしたら本能的に人が必要としていることは何かを理解し、本能的に自分自身の身を守っている人たちかもしれません。なぜならそういうお店を覗くと、不思議と談笑している人たちは自分の飛沫が相手の顔や料理にかからないように角度をつけて話をしているように見受けられます。
 ストレスだらけの世の中になっていますが、いま、何を、どうすれば少しはストレス解消になるのかを一人ひとりが考えなければならない時かもしれません。皆さんはこれからどうされますか。私はマスクなしの会話の場面を一つでも多く作っていきたいと思います。もちろん感染予防対策をしっかり徹底した上で。

紳也特急 264号

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全国で年間200回以上の講演、HIV/AIDSや泌尿器科の診療、HPからの相談を精力的に行う岩室紳也医師の思いを込めたメールニュース! 性やエイズ教育にとどまらない社会が直面する課題を専門家の立場から鋭く解説。
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~今月のテーマ『考えることの難しさ』~

●『生徒の感想』
○『何故、“AIDS”文化フォーラムなのか?』
●『若者たちは今』
○『聞きたいメッセージを“考えたい”』
●『考えることを阻害する要因』
○『マスクをしている方が感染』
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●生徒の感想
 男子の気持ちを代弁してくれてありがとうございました。(高2男子)
 医者はとても素敵な職業だなと思いました。私も先生のようなあたたかい医者を目指して頑張りたいです。(高2女子)
 正直、タイトル「自分らしく生きる」を見て、自己啓発系のセミナーかな、面倒くさいなと思っていましたが、いろいろためになるはお話、ありがとうございました。(高2女子)
 物事を疑ってみることはすごく大事だと思いました。何故その行動をするのか考えて日々過ごしたいです。(高2男子)
 今回の話を通して、今まで自分の考えが間違っていたことに気づいた。特に、自分(男)が女性を好きな理由を知らないのに男が男を好きな理由を求めるのはおかしいという話には「確かになー」と思いました。(高2男子)
 コロナやAIDSも同じ感染症で、これらの感染症に対する正しい知識ってなんだろうか、と改めて考えさせられました。(高2男子)
 なぜマスクをつけるのか。3密を回避するのか。盲目的に信じるのではなく、自分たちの目で見て、考えないといけないなと思いました。(高2男子)
 先生の話で非常に印象深かったのが「I love you」の語源の話です。すごく驚いたとともに、これから英文で“愛してる”という時に、すぐに”I love you”と書けなさそうです。「愛してる=大切にする」素晴らしいと思いました。自分がそういう立場(性行為を行うなど)になったとき、相手を大切に思う、思いやる、そんな「love」の気持ちが相手とのきずなを強めていくのかなって考えました。このお話を聞くことができた私は本当に本当に幸せです。今まで無知だった自分が怖いくらいです。このような機会をくれた先生方と岩室さんに感謝します。今まで以上に親を尊敬できました。どうもありがとうございました。(高2女子)
 「私が言ったことを信じないでください」という言葉や、何でもすぐ信じるのではなく、自分で考えることが大切だということが一番印象に残りました。(高2女子)

 以前、長崎で講演をした際に一人の高校生が「考えることを放棄しないようにしたいと思いました」という感想をくれました。「考えている人」はなぜ考えられるのか。「考えていない人」はなぜ考えられないのか。「考えてもらう」ためにどのような働きかけをすればいいのでしょうか。新型コロナウイルス感染症が話題になってからすでに1年半が経過しましたが、ますます「考えていない」「考えたくない」人が増えているように思っています。そこで今月のテーマを「考えることの難しさ」としました。

考えることの難しさ

○何故、“AIDS”文化フォーラムなのか?
 第28回目を迎えるAIDS文化フォーラム in 横浜が8月6日~8日に開催されます。今年こそは多くの人と対面でお会いできればと思っていたのですが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、今年もオンライン開催となります。オンラインとはいえ、「ともに生きる ~つながりの参加者になる~」をテーマに貴重な数多くのプログラムが無料で体験できますので、皆様のご参加をお待ちしています。

 https://abf-yokohama.org/

 でも、よく「まだAIDSですか」「何でエイズですか」「もういいんじゃないですか」と言われます。しかし、ぜひ“考えて”いただきたいのが、一つの感染症について、いろんな人が、いろんな角度から28年間も(もちろんその前からですが)“考え”続けている感染症はどれだけあるでしょうか。
 感染しているウイルスはまったく同じものなのに感染経路で「いいエイズ(薬害)」「悪いエイズ(性感染)」と区別し、結果的に差別を助長した経験もしました。なぜそのようなことが起こるのかをそれこそず~~~~~~っと“考え”続けてきました。しかし、“考えていない”人たちが、新型コロナウイルス対策と称して、「夜の街」「接待を伴う飲食」「酒類の提供」を「悪い新型コロナウイルス」と位置付けて、偏見や差別を助長しているだけではなく、どう予防すればいいのかが国民に伝わらず、結果的に大流行となっていないでしょうか。

●若者たちは今
 65歳以上のワクチン接種率は1回目85.7%、2回目73.1%(2021年7月29日現在)となっているため、高齢者の感染者数も重症者数も減ってきています。その結果として、数字上20代、30代の若い世代の感染割合が高くなるので「若者が問題だ!!!」とまた犯人捜しの報道が繰り返されています。しかし、高齢者の割合をワクチン接種前に戻すと、全体の割合の中で若者たちが特に増えたわけではありません。
 では、なぜ20代、30代の感染者数が多いのか。そもそもこの世代はどこから感染予防の情報を得ているのかということを“考える”必要があります。もちろん割合の問題ですが、新聞は読まず、テレビのニュースも見ません。ワイドショーを見たとしても正直なところ「ウイルスは、どこから、どこへ、どうやって」といった具体的、かつ実生活に役立つ情報はなく、「自粛」「気を引き締めて」「3密回避」が繰り返されているだけです。ネットニュースを見ても「感染が増えている」と思うだけですし、感染した知人がいても、若者の場合多くは軽症か無症状なので「大丈夫」と思ってしまいます。40代、50代は重症化する人がいるといっても、人は経験に学び、経験していないことは他人ごとだということを“考えれば”、「医療崩壊」を訴えるだけではなく、この世代が関心を持つ情報は何かを“考えること”が求められています。

○聞きたいメッセージを“考えたい”
 YouTubeのコンドームの達人講座の再生回数が新旧のバージョンを合わせると667万件に達したのは、YouTubeという新しい媒体だったことに加え、ちょうど若い世代がお互いに性に関する情報交換をしなくなった時期に一致した結果、若い人たちのディマンド(要求)に合致したからだと“考えています”。しかし、私の分析が正しいか否かの証拠、エビデンスはありません。
 若者たちが興味を持つのはSNSではなくその中身です。知り合いの50代の方の家族内に新型コロナウイルスを持ち込んだのは若いお子さんでした。その若い世代に「キスでうつる」という性教育を親はもちろんのこと、マスコミもしたがりません。すなわち若者たちのディマンドにもニーズにも応えていないのが今、専門家たちが発信しているメッセージです。必要なのは「強いメッセージ」ではなく「聞きたいメッセージ」だということを“考えていただきたい”ですが、実はこれは非常に難しいことです。
 
 
●“考える”ことを阻害する要因
 ところが感染症対策に限ったことではないのですが、“考える”ことを阻害するのがエビデンス、根拠、正解を求める風潮です。最初の頃は、「確かに論文になっていることは大事」と思っていましたし、今でもそれを否定するつもりはありません。しかし、新型コロナウイルスに長く向き合い続ける中で、世の中がエビデンスとされている論文に振り回されていると“考える”ようになりました。
 私もいろんな論文を書いてきましたが、論文として一番大事なことは、嘘がないことと、論理に一貫性があることです。例えば「調査の結果、感染はAから空気中に、そして空調の関係から空気の流れに沿って広がったエアロゾル感染と“考えられる”」と書き、そこに矛盾がなければ論文として採用されます。しかし、“考えられる”ということは、違う可能性も“考えられる”とも読めるのですが、読んだ人はエアロゾル感染だったんだと鵜呑みにし、“考えること”を放棄していないでしょうか。
 
○マスクをしている方が感染
 感染症で感染経路を実験的に実証することは不可能です。「キスで唾液による感染はない」と言い切る医者もいますが、感染している人とディープキスをして何人が感染するかといった実証実験などできるはずがありません。さらに感染した人が自分のプライベートな生活について言わないでしょうし、聞く側も聞きづらいと思うのが今の日本です。
 ということで、「ウイルスは、どこから、どこへ、どうやって」を“考えつつ”、どの感染経路が多いとか少ないとかではなく、あくまでもいろんな可能性について紹介し、できる人が、できることを積み上げられる環境整備を心掛けるしかありません。
 エビデンスは得られなくても“考える”ことの大切さを教えてくれた経験がありました。ある中学校の養護教諭が肌感覚で「マスクは本当に有効ですか?」と聞いてきました。そこで「マスクをしている生徒と、マスクをしていない生徒のどちらがインフルエンザに感染するかを調べてみてください」とお願いしました。マスクをしていると多くの人は、つい手に着いた飛沫を無意識の内にマスクの表面に付着させ、最終的に飛沫の水分が蒸発するとウイルスを吸引してしまうリスクがあると“考えた”からです。結果は「マスクをしている生徒の方がインフルエンザに罹患していた」でした。もちろんこのデータは発表できません。なぜなら「リスクが高いとわかっている行為を止めさせずにデータを収集したのであれば倫理的に問題だ」と言われてしまうからです。こう話すと必ず「エビデンスは?」という反論がありますが、その反論こそ「考えることの難しさ」をスルーしていると“考えてしまいます”
 “考えて”みてください。国民に感染予防方法を具体的に伝えることなく、「自粛」「気のゆるみ」「3密回避」と叫んでいるだけの方がよっぽど倫理的に問題だと“考えて”しまうのですが、この“考え”、変でしょうか。

紳也特急 263号

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全国で年間200回以上の講演、HIV/AIDSや泌尿器科の診療、HPからの相談を精力的に行う岩室紳也医師の思いを込めたメールニュース! 性やエイズ教育にとどまらない社会が直面する課題を専門家の立場から鋭く解説。
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~今月のテーマ『受援力』~

●『生徒の感想』
○『上から目線の「受援力」』
●『結果的受援』
○『先輩保健師さんに教わった空気感染対策』
●『握手でパニック』
○『アベノマスクのおかげ』
●『食べ物についた飛沫は喉につかない!?!』
○『目に入るのはコンタクトレンズとともに』
●『タバコの回し飲み禁止』
○『受援力はわかちあい力』
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●生徒の感想
 とても面白かったです。政府や世間が唱えていることとは着目点が異なっていて、それでも納得できるようなデータであったり、自ら行った実験であったりとわかりやすく説明してくだったためよく理解できました。ただマスクをすればいい。距離をあければいい。窓を開ければいいわけではなく、何を、どうして、何を防ぐためにどうすればいいのか、とても参考になりました。(中3女子)
 岩室さんが話していたことは「確かに」と納得できるものばかりでした。例えば、鏡をくもらせる時、マスクをつけていない時より、マスクをつけていた時の方がくもっていて、飛沫が見える実験でも飛沫が2メートル飛んでいることを証明してから、背中合わせなら近づいて話してもよいなど、納得してしまいました。(中2男子)
 最初は、感染予防はさんざんテレビなどで報道されていたので知っているつもりでしたが、先生の話を聞いて、自分が知らないこともたくさんあるのだと思いました。(中3男子)
 今回、岩室さんの話を聞いてコロナに対する姿勢が変わりました。岩室さんは日本(小池都知事など)がいっていることは100%安全ではなくどこか違うことがあると言っていて、僕もそのことは気づきました。これまでの感染予防対策を見直そうと思いました。(中2男子)
 テレビが正しいのか、岩室先生が正しいのか、話を聞いてそう思った。でもお話やその根拠も納得できたし、試してみたい。最近不織布マスクをつけていない。今つけているものよりも効果があるから、学校とかでもつけていきたい。今の方法から変えるところなどいろいろあったのでバンバン活用したい。(中1女子)
 岩室先生はコロナウイルスに対して真剣に向き合っているのだろうと、講演を見て心から思いました。(中2男子)
 おにぎりを食べる時にフィルムをとってから手を除菌した方がいいことを知りました(中3女子)
 話し合う時はお互いに向き合わないように話す(中3男子)
 私はマスクは絶対に必要なものだと思っていましたが、状況によっては外した方が良いということがわかりました。(中3男子)
 私は吹奏楽部で、マスクはしないし、飛沫飛びまくりで心配だったのですが、下を向き、対面でなければ飛沫が飛ばないと聞いたのでそれを試したいです。風向きで窓に向かって空気を流すというのも実践したいです。部活でも家でも使えるのでみんなに伝えようと思います。(中2女子)
 ウイルスが動いてたりの動画もあり、わかりやすかったです!(中2女子)
 ウイルスは見えないからこそ、他人事ではなく、自分事としてとらえて行動していきたいです。(中2女子)

 中学生に新型コロナウイルス対策の基本的な話をした際の感想です。「ウイルスは、どこから、どこへ、どうやって」を彼らが理解できるように伝えただけです。ただ、今回の話はよくよく考えてみると、新型コロナウイルスがまん延し始めてから考え、組み立てたものではなく、1990年代に保健所に勤務していた際の結核やHIV/AIDS対策に始まり、2009年に発生した新型インフルエンザの講演を依頼されたりする中で、いろんな人の声を聴きながら、考え、積み上げ続けてきた内容です。今月のテーマを考えていた時に「感染症の危機管理時に求められている専門職の受援力」という講演依頼を受け、「これだ」と思い、今月のテーマを「受援力」としました。

受援力

○上から目線の「受援力」
 被災地のみならず、いろんなところで「受援力」という言葉が使われています。あるサイトには「『受援力』とは、『助けて』と言える力」とありましたが、本当にそうでしょうか。松本俊彦先生、熊谷晋一郎先生たちと「助けてが言えない」という本の中で行った座談会『「依存」のススメー援助希求を超えて』を思い浮かべていました。「『助けて』と言える力」と言っている方はどれだけ上から目線なのか考えたことがあるでしょうか。
 岩室紳也は、自分が困っても、わからないことがあっても「助けて」とは言えませんし、一度も言ったことはないと思います。自分が言えないのに、他人に「助けて」と言いなさいとは口が裂けても言えません。「助けてと言いなさい」と言っている方は自分で何度も言ってきた方なのでしょうね。そうであれば、どのような場面で「助けて」と言ったか、なぜ言えたのか、その結果どのように助かったかを話していただきたいと思います。それとも正解依存症、すなわち、自分なりの「正解」を見つけると、その「正解」を疑うことができないだけではなく、その「正解」を他の人にも押し付ける、自分なりの正解以外は受け付けない、病んだ状態なのでしょうか。

●結果的受援
 では、岩室紳也はこれまで一切誰にも助けてもらっていないかというとそれは全く逆で、いろんな人の助けがあったからこそ、いま、こうやってメルマガを書かせていただいていますし、新型コロナウイルス対策でもいろんなことを考え続けられているのです。すなわちこちらから「助けて」と言わなくても、いろんな人が「助けになる関わり」をしてくださっているのです。
 結果的に「助けられている」、結果的受援ということでもいいと思いませんか。では岩室紳也はどうやって結果的受援を手にしてきたのでしょうか。それは一つ一つの関係性の積み重ねの結果でした。

○先輩保健師さんに教わった空気感染対策
 新型コロナウイルスに関わり始めて最初につまづいた、というかよくわからなかったのが「エアロゾル」でした。ところが、結核対策でエアロゾル感染より感染予防が難しい空気(飛沫核)感染について保健所で学ばせてもらっていました。保健所の医師や保健師は結核患者さんが出れば患者さんや関係者からの聞き取りをし、患者さんの搬送、施設での啓発活動などに関わります。その際に自分自身が感染しないため、患者さんと向き合い続けてきた保健所のベテラン保健師さんに高性能のN95マスクを使うことでマスクの材質や装着法等を教わる中で、空気中をさまよい続ける結核菌に感染しないために一番重要なことは風上に立つことだと学びました。言われてみれば当たり前のことですが、目からうろこでした。
 新型コロナウイルス対策でエアロゾル対策として初期のころから「換気」の必要性が強調されていますが、よっぽど強力な換気扇でない限りさまよっているすべてのエアロゾルを換気扇に向かわせることはできません。だから「排気」という視点で換気扇に向かってサーキュレーターを使用し、空気の流れを創出することが必要になります。ところが、世間ではビルや車両等の換気の専門家の意見を聞き、CO2センサーを設置したり、「何分で空気が入れ替わるので安心です」といった感染症対策とは別次元の、CO2、二酸化炭素滞留対策をあたかも感染症対策かのような錯覚で啓発しています。びっくりなのが空気を循環させている空気清浄機の売れ行きです。まったく意味がないというつもりはありませんが、空気清浄機が起こす気流の結果、感染されている方の風下に立つことになった人は空気清浄機で感染リスクが高まることになります。今や電車の窓が開いているのは普通ですが、ぜひ、利用する場所は進行方向に向かって一番前の窓の前にしてください。一番後ろの窓だと、車両内のすべての方の空気(エアロゾル)の通り道、排気道になります。
 ただ、誤解のないようにしていただきたいのですが、電車内でのエアロゾルでクラスターが起こったという報告はないので、空気の流れでエアロゾルが拡散すれば感染予防になるのかもしれません。でもそのような「エビデンス」はありません。

●握手でパニック
 忘れもしない1994年1月29日、HIVに感染していたパトリックと握手をし、彼の掌の汗が私の手につきパニックになったものの、もちろん感染していませんでした。この経験が、パトとの関りがなければ「ウイルスは、どこから、どこへ、どうやって」ということを突き詰めなかったと思います。一方でエイズパニックの頃、この話を中高生にさせていただく環境をいただけたからこそ、上から目線ではなく、中高生が理解できる「ウイルスは、どこから、どこへ、どうやって」の話の内容をより研ぎ澄ますようになりました。男性同性愛や新宿2丁目に関わる機会を得たからこそ、「感染機会」が危ないのではなく、「感染経路」対策が重要だと気付かされました。

○アベノマスクのおかげ
 マスク不足で世間が大騒ぎをしていた時、わが家に例の「アベノマスク」が届きました。新型コロナウイルス予防の際に、マスクが果たす役割とマスクの材質別のデータを視覚的に示したいと思っていた時だったので早速中学生にもわかる、洗面所の鏡にマスクなし、アベノ(布)マスク、ポリウレタンマスク、不織布マスクで息を吹き付け、曇る度合いを見せる実験をしたところ、マスクによるエアロゾルの増加とポリウレタンマスクを通過する飛沫を映像化できました。これも安倍首相の支援を有効に受け止めた結果でした。

●食べ物についた飛沫は喉につかない!?!
 ある消化器内科の先生に「食べ物に飛沫に入ったウイルスが付着しても、それがのどに触れれば咽頭反射が起こるのでものを食べての感染は起こらない」との指摘を受けました。「確かに???」という思いになりながら、一方で小学生みたいに「じゃあ、手洗いは不要で、素手で食べても大丈夫?」と思っていました。「今回の新型コロナウイルスは飛沫やエアロゾルでうつるので密がダメ」という意見が多いのは承知していますし、それを否定するつもりはありません。しかし、手洗いを推奨しながら、食べ物についたウイルスでは感染しないというのはどう考えても矛盾します。
 悶々とした思いで日々考えていたら、食事中、食べ物を咀嚼しているとおいしい味や香りが口中に広がる感覚を味わっていました。食べ物をかみ、味わっていると飛沫がエアロゾル化して吸い込まれる。この先生の指摘がなければここまで頭を悩ませず、ある意味正解依存症のまま、「接触(媒介物)感染はおこる」と伝えていたと思います。新たな「ウイルスが、どこから、どこへ、どうやって」の気づきが生まれた瞬間でした。

○目に入るのはコンタクトレンズとともに
 新型コロナウイルスの侵入経路として「目」が言われていますが、目をこする人もそれほどいないし、目に前にいる人の飛沫が飛び込むとも思えないけど、一応感染経路として伝えなければと思っていたら、講演を聞いてくれた人が「コンタクトレンズを清潔に扱うことも大事ですね」との感想をくださいました。「いただき」と思いましたが、ここでも気付きをくださった方の指摘の、支援のおかげでした。

●タバコの回し飲み禁止
 新宿2丁目にあるレズビアンのお客さんが多いお店に2回目にお邪魔した時、「岩室さんの話、すごく役に立ちました」と感謝されました。喫煙OKのお店だったので、「お客さんがタバコのフィルターを触る前に手指消毒を徹底してください」とお伝えしていたのですが、「お店のお客さんはタバコの回し飲みを楽しむんです。それだけは禁止にしました」と教えてくれました。岩室が想像だにできなかった、タバコの回し飲みによる間接キス。確かにハイリスクですよね。

○受援力はわかちあい力
 岩室紳也の感染症対策に関する学びはすべて他者にいただいた気づきを積み上げた結果です。「空気感染予防は風上に立てばいい」というのは小学生でもわかる、でも感動的な気づきでした。いくら一人で考えても、書物を読んでも気づけないことは多々あります。それらを気づかせてくれる周囲の人とつながり、コミュニケーションを通したわかちあいを重ね続けると、気が付けばいろんな人と共有できる情報が組み立てられているようです。「受援力」は「わかちあい力」とも言えます。
 ぜひ皆様も、他の人の指摘を「くそ・・・・」や「違うよ!!!!」、「見返してやろう」ではなく、どれもありがたい指摘と思って自分の中で咀嚼し続けませんか。きっとびっくりするような気付きが生まれると思います。多くの指摘に、支援に改めてお礼申し上げます。

紳也特急 262号

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全国で年間200回以上の講演、HIV/AIDSや泌尿器科の診療、HPからの相談を精力的に行う岩室紳也医師の思いを込めたメールニュース! 性やエイズ教育にとどまらない社会が直面する課題を専門家の立場から鋭く解説。
Shinya Express (毎月1日発行) 
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~今月のテーマ『国民が見抜く中、次なる対策は』~

●『一般の方からの質問』
○『専門家って何?』
●『鋭い疑問との対話』
○『質問者の感想』
●『一緒に考える対話の大切さ』
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●一般の方からの質問
 2児の母親です。岩室先生を知ったのは、私の妹がとても優秀な医療者で岩室先生を常日頃尊敬している話を聞いていたからです。
 ある専門医は、子どもは感染の中心ではないと仰っているのにも関わらず、推奨と称して半強制的に学校生活、屋外で遊びときもマスク着用をさせています。マスクによる精神的肉体的ダメージがあることも知らない保護者が沢山おり、報道されることは一切ない現実。
 コロナは怖くない病気だとは決して思っていません。医療者は本当に毎日大変な思いをされているのは分かっています。しかし、医療逼迫が騒がれる中で、サラリーマンは減給、倒産の不安。子ども達はマスク、除菌の徹底で基礎免疫力の低下や顔が見えない生活で、他人と距離を置くことに慣れる大人になってしまう不安、赤ちゃんは生まれた世界はマスクだらけ、口元を見てコミュニケーションを学べない。慢性的な酸素不足。子ども達のマスクによる弊害は隠れた場所で出ている、または数年後に出てくるかもしれない。学生は就活の不安やバイトを減らされ学費が払えない、実家に帰れない。このコロナ騒動は自分や大切な人の命を守るためにやっているのに、自殺者が増えたり、職を失う人が増えたりしたら本末転倒です。どうして多くの国民が今の状況に疑問を持ったり声を上げたりしないのでしょうか。こうなってるのもコロナだからしょうがない、で良いのでしょうか。
 この世の中にはコロナにかかるかもしれない、以外にも事故にあうかもしれない、物を喉に詰まらせるかもしれないなど、かもしれないで溢れています。それなのに、大切なものを失ってまで、コロナをこんなにも恐れ続けることは正しいのでしょうか。テレビでは日々感染者数、自粛、のことしか報道されません。マスクによるダメージや子ども達のこと、PCR検査とはどんなものか、PCR検査陽性者が必ずしも感染者ではないこと、などあげたらキリがありませんが、もっとそのようなことを多角的に報道したり、声を上げたりする方が増えて欲しいとおもうのは、間違っていますか。
 コロナで死ぬのは駄目で経済で死ぬのは良いとか、医療者を守るためにも今は我慢の時だ、とか、そんな感情論な話ではなく、もっと多角的にこのコロナのことを考えないと、子ども達や若者の未来が明るくならないと思わずにはいられません。ぜひ岩室先生のお考えや意見を聞かせて下さい。そして納得したり、さらに考えたりするきっかけにしたいです。
 
 ボリュームを少し削らせていただきましたが、失礼ですが素人の方でもここまで、的確に事態をとらえておられることに勇気をいただきました。そこで、今月のテーマを「国民が見抜く中、次なる対策は」としました。

国民が見抜く中、次なる対策は

〇専門家って何?
 新型コロナウイルスが教えてくれた一番大事なことは私を含め、「専門家」と称する人ってどのような素晴らしい、素人にはない知識、見識、見解、意識、能力、判断力を持った人か、ではなく、単に資格を持った人であったということではないでしょうか。少なくとも、今回ご質問いただいた方は現状を非常に的確にとらえておられますが、多くの専門家もマスコミもこのような視点で発信していません。するどいご質問を参考に、いま、一人ひとりが考えるべき方向性を再確認してみました。

●鋭い疑問との対話
 今回、あらためてリスクコミュニケーションの大切さを実感させていただきました。コミュニケーションの語源は「わかちあう」です。決して「わかりあう」のではなく、それぞれの視点を共有することが重要です。なので専門家とされる岩室は「返事」、「答え」を返すのではなく、あくまでも質問者の方の鋭い質問に自分の思いをお伝えする「対話」をさせていただきました。

1. 新型コロナは治療薬が無いから怖いのか
 「怖い」の基準は難しいです。正しく恐れる、怖れるという言葉もありますが、岩室紳也は怖くないです。人は亡くなる時は亡くなりますし、悲しいことですが、そうなった時はその事実を淡々と受け入れるしかありません。ただ、見方を変えると、新型コロナウイルスの感染経路と予防策ははっきりしているので、そういう意味では怖くないとも言えます。むしろ専門家と称する感染予防の素人さんたちが好き勝手なことを言っていることの方が「怖い」です。

2. 恐れる程の死者数、死亡率なのか
 私の患者さんも重症化しましたし、ECMOのお世話になりつつも幸い回復されました。その経過を見ると他の肺炎等よりは早く劇症化します。若い方でもそのような事例がありますし、全国的に見れば既に20代が7名、30代が22名亡くなっています。「恐れる」とかではなく、その事実を認識しつつ、一人ひとりが淡々と、公衆衛生医は考えられる予防方法を発信し、各自は自分ができる予防方法を確認し続け、医療者は最新の治療方法を実践し続けることが重要です。

3. 大阪を例に挙げると飲食店はクラスター割合2%、高齢者障害者施設施設や病院が70%となっているが、どうしてマン防などと2%の飲食店を重点的に対策しようとするの
 感染症対策を含め、健康づくりでハイリスクアプローチ、早期発見早期治療、ダメな人対策で上手く行ったものはありません。一方でクラスター潰しという言葉を聞くと多くの一般の方だけではなく、公衆衛生をきちんと勉強していない人はその方向性を支持します。そもそも飲食店とか、高齢者障がい者施設といった感染機会をターゲットにすること自体が問題です。そこで、どのような感染経路で感染拡大が起こったかを検証し、一人ひとりが対策を講じることが重要ですが、相変わらず感染経路が含まれていない「3密」という言葉が使われています。
 ちなみに高齢者のワクチン接種が進んでいますが、本当に施設でのクラスターを予防したいのであれば、まずはそのような施設の職員にワクチンを打つべきではないでしょうか。

4. 指定感染症から外せば、民間病院で診たり、インフルなどと同様に自宅療養が出来、医療が逼迫しないのではないか
 残念ながらもっと深刻な診療拒否が起こる可能性があります。実際、私のHIVの患者さんが診療拒否に今でもあっています。「私たちは診る能力がありません」といえば堂々と診療拒否ができるのが日本の医療制度の実情です。でも、2類相当だと行政が責任を持たなければならないので多くの医療機関に診療体制、ベッドの確保を要請できますので痛し痒しです。私も当初は5類でと思っていましたが、しばらくは行政がきちんと責任を持つ体制がいいようです。

5. 変異株の感染力について
 変異株の話をすること自体、予防の観点から考えると意味がありません。感染経路は変わらないので、感染力が高まろうか低くなろうが、やらなければならない予防策は同じです。

6. ワクチンが普及したらマスクは外せるのか、普通の生活を取り戻せるのか
 ワクチンは重症化予防効果しか確認されていません。マスクを外すこととは無関係です。子ども達だけではなく、そもそも、大人もどこまでマスクが必要かを考える必要があります。私は大人もちゃんと咳エチケットを徹底すればマスクはいらないと思っています。実際、街中を歩く時、私はノーマスクです。一方でお子さんが体育の授業中にマスクをしていたからと考えられる死亡事故がありました。このお子さんの死を無駄にすることなく、しっかりと議論をしたいものです。
 意外と見落とすマスクの真実
 https://vimeo.com/541441821

7. PCR検査の正確性について
 私はHIV感染症のPCR検査をやっていますが、コロナは採取方法の問題もあり、まだまだ精度が低いと考える必要があります。もちろん一定の意味はありますが、抗体検査を含めて考えて使う必要がありますが、必要な事例でもそこまでトータルで組み合わせた報告はほとんどありません。

8. 感染者(無症状者含む?)が他人に感染させる確率は2割以下と厚労省のホームページにあるが
 このデータは意味がないと思います。感染している人のウイルスが他人の体の中に入れば感染しますので、確率の問題を取り上げても意味はありません。「恐れる」とか「恐れない」ではなく、できることを一つずつ積み上げ、万が一感染したらその事実を受け入れるしかありません。

9. 他の死因は一年毎にリセットされるのになぜコロナはいつまでも累計なのか
 いろんな古い記述に振り回されず、ご自身で何が科学的な事実化を考えてください。コロナ問題も、オリンピック問題も完全に政治ネタになっています。その中で私はできることを積み重ねるだけです。

10. 自殺者、しかも若い世代が増加
 若者の自殺の増加はは現場で感じています。2021年3月にお邪魔した二つの中学校で生徒さんが自殺していました。でも、多くの人は他人ごとです。私は公衆衛生の立場から「感染症」も「自殺」も同し予防の視点で同時に取り組んでいます。公衆衛生では当たり前の視点ですが、感染症専門医は感染症と自殺の関係について深く対策を含めて突き詰めて考えたこともないでしょうし、予防のために何をすればいいかに思いを馳せられないと思います。少なくとも公衆衛生をきちんと勉強するまでの岩室もそうでした。もちろん感染症専門医に自殺対策を求めるつもりもありませんが、だからこそ謙虚に予防が専門の公衆衛生医にバトンを渡し、わかったような発言を控えていただければと思っています。

〇質問者の感想
 淡々と向き合うことの大切さ、理解しました。あまりこのような意見のお医者様に出会ったことがなく、こういう答えを求めていたと目から鱗でした。変異株で学校でクラスターとの報道が過剰にされ出しているので、また休校になるのかと思うと、子供を守るために行なっている対策も、子供達を苦しめる結果にならないと良いのですが。
 コロナ禍なので仕方がないと多くのことを我慢したり制限したりしていますが、これ以上、今しかない子ども達の自由を奪わないで欲しいと願うばかりです。
 先生のご回答、参考にさせていただき、コロナとの向き合い方、これからも周りに流されずに自分で考えて生きていきたいと思います。

●一緒に考える対話の大切さ
 このパンデミックが始まった頃から岩室が書かせていただいていることやHP等で発信していることとマスコミが発信していることを比較してくださいと言い続けています。私の発信は岩室理論でもなければ、特定の人を否定するものでもありません。淡々とウイルスと向き合ってきた結果をお伝えしているだけです。そして、そのことを受け止めてくださる方との対話を続けることで、結果的に本当の意味でウイルスと共生する社会になると期待しています。

紳也特急 261号

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~今月のテーマ『一人対話のすすめ』~

●『生徒の感想』
○『独り言と一人対話の違い』
●『なぜ、???が浮かぶのか』
○『Why do you think so?』
●『風俗で広がる新型コロナウイルス』
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●生徒の感想
 私は下ネタを言うのがダメなことだとずっと思っていました。なので皆の前では下ネタを言わない純粋な人でいようと思っていました。でも、男子も、女子も、それを知ってるのが普通で、言わない人の方がおかしいのかもと今日の講演を聞いて感じました。私はそっち系のことを知るのが怖いと思ってたり、知ったら嫌われちゃうから友達が話してきても聞くだけに今まではしてました。でも、たまには、そういう話をして悩みをなくすこともいいなと思いました。(中3女子)

 私は、付き合っても、結婚はしたくない。そういう系の行為をするなら一生独身でいいと決めていました。でも、それははずかしいことではなく、あたり前のことなんだとなって少し安心しました。(中3女子)
 
 先生が女子は生理のとき、出かけることや歩くことさえも嫌になると男子に教えてくれました。私も生理のとき、けっこうイライラしてしまって友達や家族にあたってしまうことがよくあります。でも、その理由を言うことは私にはできません。今日、先生が男子に伝えてくれて、そういう女子の事情をしってもらえてよかったなと思いました。ありがとうございました。(中3女子)
 
 先生のお話の中で一番心に残ったのは「何か悩みがあったら、恥ずかしがらず誰かに相談することが大事」ということです。相談などをすることのできる相手は二人ぐらいいますが、そこでも「恥ずかしいな…」と思う部分もあります。でも、それを一人で悩んで悪くしたり、平気だと思って勘違いしてしまったりすると、恥ずかしい」よりもっと大変なことになってしまうこともわかりました。(中3女子)
 
 おしゃべりによって、自分の気持ちをよくすることにもとても共感できました。学校生活の中でも、友人と実際に顔を見ながら話すことで、感情を共有できるのだと思います。友人に不満や悩みをいったら解決できることもあるし、気分が上がることもたくさんあります。今後も今日の“経験”を活かしていきたいと思います。(中3女子)

 今回、感想を読ませてもらいながら、必ずしも話したことを正確に受け取ってもらえてない場合もありますが、紹介させてもらった感想が全部女子というところが興味深かったです。私の話を聞きながら、自分自身と、自分自身の思いと対話しているのかなと思いました。そこで今月のテーマを「一人対話のすすめ」としました。

一人対話のすすめ

○独り言と一人対話の違い
 広辞苑で「対話」を検索すると、「向かい合って話すこと。相対して話すこと。二人の人がことばを交わすこと。会話。対談」とあります。「独り言」は「相手なしに、ひとりでものを言うこと。また、そのことば」とのこと。対話が成立するには誰か他の人が必要ということですが、皆さんもありますよね、自分の中で気がつけば一人で対話をしていることが。
 人の流れを抑えることで感染拡大を抑え込むという発想で東京、京都、大阪、兵庫に緊急事態宣言が発出されました。確かに人と人が会わなければ感染は起こりません。一番確実な感染予防方法は、ずっと一人で閉じこもり、一切差し入れも受けない生活です。
 
 一人で閉じこもり、一切差し入れも受けない。そんなの無理。
 でも、確かにそう言われてみればそうだよね。
 じゃ、感染しない方法を勉強して身に着ければいいんじゃない。
 でもこれまでいろんなことをやってきたけど。
 じゃ、感染している人はなんで感染したの。
 密だった?
 でも密でも背中合わせだったら感染しないでしょ。
 だいたい「3密」には感染経路は含まれていないよね。
 感染経路って何だっけ?
 
 実は岩室紳也の頭の中でこのような一人対話が日々繰り返されているのですが、これは自分の思い、正解を聞き手に押し付けるのではなく、自分が何らかの提案をしたら、それに対してどのような反応があるのかをイメージするためです。

●なぜ、???が浮かぶのか
 緊急事態宣言が発出された4月25日に宮城県から夜行バスで上京してきた若い二人の女性がテレビのインタビューに答えて「緊急事態宣言が出ているのは知りませんでした」と言っていたのが印象的でした。この記述を読まれた時、どのような言葉が皆さんの頭の中に浮かびましたか?
 
 「なぜ、この二人は知らなかったの?」
 それとも
 「バカじゃない、あんなに報道しているのに」
 ですか。
 
 私はこの報道を視聴しながら、
 
 この女の子たちは新聞も読まないし、ネットニュースも見ないよね。
 でも、そのことを多くの大人たちは知らない。
 だいたい若者対策と言えばSNSにアップすれば自動的に見てくれると勘違いしている大人が多い。
 自分でSNSをやればわかりそうなものだけどやったことがない人がそう考えても仕方がない。
 緊急事態宣言の認知率を調べればいいけどその発想もない。
 こんなにいいことをやっているので知っていて当たり前と思っている。
 だってNHKが放送しているんだから当然知っているよね。
 で、NHKのニュースに視聴率ってどれぐらいだったっけ?
 大人でさえも10人に1人見るくらいでしょ。
 
 3度目の緊急事態宣言が発出されましたが、「これまでより強力な」と言いつつ、アルコールを悪者にしていますが、ニュース番組でも、ワイドショーでも「緊急事態宣言でアルコールを禁止することの根拠は何ですか?」という突っ込みがほとんどないばかりか、コンビニの前で路上飲みをしている映像が流れる。突っ込んだとしても「飲食店で酔っ払ってマスクを外してうつす事例が多い」と誰かが発言すると、「感染者の半数が感染経路不明となっているのに、今の発言は本当ですか」と突っ込むことはしません。岩室紳也の頭の中では次のような対話が延々と続きます。
 
 確かに酔っぱらうと感染予防という意識が弱くなるのはわかる。
 でも、そもそも感染経路についてわかっているのかな。
 飛沫感染なら人と人の間にアクリル板があれば大丈夫。
 行きつけの飲み屋さんは隣の客との間にアクリル板があるから安心。
 じゃ、飛沫が料理に落下した料理を食べるところを注意すればいい。
 いやいや、接触(媒介物)感染のことを知らない人が多い。
 そもそもこの言葉自体が難しい。
 じゃ、どう伝えれば伝わるのか。
 
 他の人が言っていることを否定するのではなく、自分の中で一度噛みしめ、疑問に思ったことを質問するためには、ある程度訓練が必要なのかなと改めて思っています。と同時に、なぜ、自分の頭の中で???が、一人対話が浮かぶのかを考えていました。
 
○Why do you think so?
 小学校の6年間を過ごしたケニアのHospital Hill Schoolの先生たちのおかげだと思います。いつも“Shinya. why do you think so?”と突っ込まれていました。で、“Because・・・・”と返事をしていたように記憶しています。ケニアでは「正解を覚える」のではなく、「何故」や「根拠」を考えるように繰り返し教え込まれていました。
 前号で「「わかりあう」ではなく「わかちあう」」を書かせていただきました。いま、「世の中は多様性を認めよう」をスローガンに偏見や差別の解消を訴え続けていますが、そのような活動を、啓発を、教育をしなければならないのは人間にはそもそも多様性、というか、他者との違いを認められない何かがあるからです。では、岩室紳也はどうかというと、小学校に入った時は学校で唯一の東アジア人で超マイノリティーでした。一方でなぜか黒人の女の子に対して恋愛感情を持ちませんでした。でも担任の白人の女の先生は黒人男性と結婚してハーフの子どもを出産しました。どの事実も、そこに事実として存在するだけで、理解することでも、わかりあうことでもありませんでした。ただ、わかちあうことでした。
 Whyへの答えがないことも多々あります。だからこそ、答えがないことを受け入れるためにも、答えがないことについて対話を、自分の中で、そしていろんな人と続けることが求められているのでしょうか。
 
 Why do you think so?
 わかりませんが、どうもそう考えた方が今の自分の中でスッキリします。
 変なの。
 でもこれが今の自分が考えられる限界です。
 それならそれでいいんじゃない。
 そうですね。

●風俗で広がる新型コロナウイルス
 ある児童相談所の職員の方から、新型コロナウイルスが風俗産業に従事している人の間で広がっているように感じるのですが岩室先生はどう思いますか、と聞かれました。
 
 新型コロナウイルスはACE2受容体から取り込まれる。
 このACE2受容体はいろんな臓器に分布している。
 膀胱、前立腺に分布しているということは尿道粘膜や亀頭部、外陰部にも。
 唾液のみならず、いろんな体液にもウイルスは存在する。
 風俗産業では「キス」という行為を行わない場合が少なくない。
 でも、フェラやクンニで体液、唾液の交換が起こって感染しても不思議ではない。
 もちろん狭い空間、換気も悪いということで飛沫やエアロゾル感染もあるし。
 専門家には「エビデンスは?」と一蹴されること間違いなし。
 大体、保健所が「風俗の利用は?」と聞いても言うはずなし。
 そもそも「キスで感染」ということが言えない日本で「風俗で感染」はとても言えない。
 
 ということは・・・・・・と続く一人対話。

 


 

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~今月のテーマ『「わかりあう」ではなく「わかちあう」』~

●『生徒の感想』
○『わかりあえない自分を認める』
●『AIDS「文化」フォーラム』
○『「わかりあえない」のは当たり前』
●『「わかちあい」を促進するする「対話」』
○『「わかちあい」を阻害する「わかったつもり」』
…………………………………………………………………………………………
●生徒の感想
 はじめは90分間ずっと話を聞くのは大変そうだなと思っていましたが、あっという間に講演が終わっていて、すごく驚きました。(中3女子)

 私は今、お付き合いしている男子がいるのですが、その人に何度もせがまれ、少し困っていました。なので今日、岩室先生の話を聞くことができ、自分でやりたくないと思った時はきちんと断ろうと思いました。(中3女子)

 先生のお話を聞いている内に気がついたことがありました。それは、話の中に出てきた感染症や依存症について、どうしても他人ごとだと思ってしまう根拠のない自信を持ちがちになっているということでした。(中3女子)

 全然知識がなかったことがわかりました。先生にあの2時間で教えてもらったことは、今後の人生で役に立つと思うので、これからもそういった「正しい知識」を学ぼうと思いました。
 僕がこれまで参加した講演会は、パワーポイント等を使った、いわゆる「全く身にならない講演会」だったので最初は先生の講演会を「たいくつそう」だと思っていたのですが、いざ始まると、先生の話をあきずに聴き、良い経験にすることが出来ました。ありがとうございました。(中3男子)

 若い人たちに話す機会は、私自身にとって元気をもらえる場になっています。感想文だけを紹介すると彼らが私の話をそれなりに受け止めてくれているように思うかもしれません。でも、実際は私の話に対して必ずしも快く思っていなかったり、反発している生徒さんもいたりしますが、そのような生徒さんは、担任の先生たちが読むであろう感想文に本音を書くはずもありません。
 そんなことを考えていた時の講演でインターネットの専門家の宮崎豊久さんに教えていただいた「コミュニケーション」の語源が「わかちあい」だということを再確認していました。正直なところ、65歳の私が10代の若者たちの感覚について理解することも、また、若者たちがこの年配者を理解することも難しいと思います。年齢に関係なく、人と人が「わかりあう」ことは不可能と言ってもいいと思います。しかし、私が若者たちの感覚を、若者たちがこの年配者の思いをお互いに「わかちあう」、「共有する」ことはできるかと思っています。そこで今月のテーマを、「わかりあう」ではなく「わかちあう」としました。

「わかりあう」ではなく「わかちあう」

○わかりあえない自分を認める
 ゲイの友人に「何でゲイなの」と聞き、「岩室さんは何で女が好きなの」と返された時、「男なら女でしょ」とつい言ってしまった自分がいました。今だったらきれいごととして「LGBTQをはじめとしていろんな生き方があるよね」と言えますが、そもそも人は、自分とは違う他人を本当に理解できるのでしょうか。自分がなぜ女性に惹かれるのかを説明できないことを思い知らされたこの会話を通して、そもそも相手を「理解できる」、お互いが「わかりあえる」というのは空想ではないかと思っていたようです。ただ、そう思っている自分に気がつくのにその後何十年もかかり、こうやって文字化できたのはごく最近の出来事でした。

●AIDS「文化」フォーラム
 今年で28回目を迎えるAIDS文化フォーラム in 横浜ですが、これまでも多くの人たちから、どうして「AIDS」にこだわるのか、「文化」と名付ける意味は何か、と指摘され続けてきました。実は同じ思いを私自身も持っていましたが、最近になってやっと「AIDS文化フォーラム」の名の意味とその重みがわかるようになりました。
 27年前に始まったAIDS文化フォーラム in 横浜では、何と27年間もHIV/AIDSについて考え、対話し続けてきました。他の感染症で、市民が、同じ市民のためにその感染症について考え、いろんな人と対話し続けてきたフォーラムはあったでしょうか。当時の事務局長だった長澤勲さんが「フォーラムがHIV/AIDSを医療だけの問題としてとらえるのではなく、広く文化の問題としてとらえることに重きを置いているからです」と教えてくださっていました。しかし、正直なところ当時の私の頭の中は「??????」でした。今思うと、私はこの「文化」という表現について、命名者の思いを「わかりあう」状況にはありませんでした。しかし、「何だかよくわからないけど、何となく間違いではなさそうだし、まっいいか」という気持ちで「わかちあう」ことはできていたようです。そして、28回目を迎える今年のフォーラムでは、人が生きていること自体を「文化」ととらえるからこそ、HIV/AIDSを単なる感染症ととらえるのではなく、HIV/AIDSでつながった人たちを通して様々なことが「わかちあえる」と感じています。
 
○「わかりあえない」のは当たり前
 先日、違法薬物所持で刑務所に入っていた人が出所し、私の外来に来られました。その人が刑務所に入っていた時に一度だけ刑務所に出向き面会していました。その時のことを「何で先生が来たのかわからなかった」と話してくれました。なぜ岩室が会いに行ったのか。目的は何だったのか。そのように聞かれても正直なところ答えはありません。たまたま行く時間とそちら方面に出向く機会、さらに刑務所から手紙をいただいたといういろいろが重なったからとしか言えません。正直なところ会ったからと言って何かが変わるとも思っていませんし、その人がどのような思いで刑務所に入れられる行為に至ったのかもわかりませんし、わかろうとする気もありません。すなわち、「動機」は「わかりあえない」けど、「結果」を「わかちあいたい」と思っていました。
 
●「わかちあい」を促進するする「対話」
 斎藤環先生に教えていただいた、「対話(dialogue)の目的は『対話を続けること』。相手を変えること、何かを決めること、結論を出すことではない」という一言は非常に示唆に富んでいます。「わかりあう」ということは結論を共有することですが、「わかちあう」ということは「対話を続けること」のようです。すなわち、お互いが目指している方向性や、思っている結論が違っていても、まずは「そういう考え方をする人もいるんだ」ということを「わかちあう」ことが重要です。
 
○「わかちあい」を阻害する「わかったつもり」
 これも斎藤環先生の言葉ですが、「議論、説得、正論、叱咤激励は「対話」ではなく「独り言」である。独り言(monologue)の積み重ねが、しばしば事態をこじらせる」はまさしく今起こっている新型コロナウイルス感染拡大の第4波の原因ではないでしょうか。新型コロナウイルスの感染拡大を見ていると、多くの人たちは感染拡大を予防する方法について確固たる自信があるようです。しかし、結果として収束していないところをみると、それは単に「わかったつもり」になっているだけではないでしょうか。予防策を広げなければならない社会を一つの「文化」ととらえ、尊重し、その文化を「わかちあう」ためにも、まずはその文化の中に飛び込むことから始める必要があります。当然のことながら私は「こうすれば感染拡大が収まる」という結論は持ち合わせていませんが、夜の街と言われている一つひとつの店にお邪魔すると、「ここはこうすれば」というアイディアは自ずと生まれます。
 若い世代で感染が拡大する要因を一つ一つ、「キスでうつるって知っている」とか、「タバコのフィルターを触る直前の指の消毒ってしないよね」と対話を重ね続けることで、気がつけば感染拡大が収まっていくのではないでしょうか。何呑気なことを言っているんだとお叱りを受けそうですが、急がば回れという言葉もあります。
 新型コロナウイルス対策でこそ一人ひとりの生き方を「文化」ととらえ、「わかちあう」ことからはじめ、お互いができることを考え続けることが求められているように思いますが、おそらく何言われているのか「わかんな~~~い」と言われてしまうのでしょうね(苦笑)。

紳也特急 259号

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~今月のテーマ『できることの積み重ねか、決め打ちか』~

●『生徒の感想』
○『決め打ち脳』
●『HIVの感染経路に唖然』
○『単純化は誤解の元』
●『なぜ積み重ねができないか』
○『できる人が、できることを』
…………………………………………………………………………………………
●生徒の感想
 正直なことをいうと、この話は大切なことなのだろうけど、ちょっと不愉快という気持ちになりました。でも、寝ずに講話を聴いていたのは、不愉快と思いながらも岩室さんの話に引きつけられるというか、何と伝えればいいのかわかりませんが、興味を持っていたのかもしれないと時間がたってから思いました。不愉快と感じたのは、まだ私が性感染になることはなく、またゲイなどではないからだと思います。死ぬまで性交渉をしないかもしれないけれどもしかするとすることがあるかもしれない。そんな時にはこの講話を思い出し、安全面を考えたいと思います。もしかすると私も同性を好きになるかもしれないですし。最後に一つ思ったことは男って大変だなと感じました。(高1男子)

 最初、岩室さんが、「このネクタイの柄は何かわかる?」と聞き、正解がコンドームと知ったとき、この人はおかしい人なんじゃないかと思いました。しかし、講話を聞いたらすごい真面目な人で、一生懸命な人だと思いました。(高1男子)

 私は1回SNSで男友達に性的に嫌なことを体験した事があります。あくまでSNS、スマホの上での話なので何もなく解決したのですが、今でも男性が怖いです。男友達と二人で遊んだり話したりするのが嫌です。精神的にも無理です。これからは被害に遭わないように努力したいです。(高1女子)

 私は「〇●〇●」の名でメールを出したものです。そこでは私の個人的な相談しか出来なかったので、ここでは講演の感想を書こうと思いました。まず、我々が持っているHIVの偏見と同じ偏見を先生も持っていたこと。押し付けがましくない、安心して聴ける話でした。それから、同性愛の話等幅広く話されていましたが、私が一番感銘を受けたのは「男性器の話」です。ちゃんと洗わないと、子宮頸がんの元になる汚れが取れないからよく洗え、と。最初は女がいる意味があるのか・・・?と思っていましたが、最終的にはどちらにも有意義な講演でとても興味深かったです。私は講演会というものが大嫌いでしたが、先生の素晴らしい講演のおかげで、そのイメージは大分払拭されました。これからもこころから応援しています。頑張ってください。(何回も言いますが丁寧なメールの返信も本当にありがとうございました。)(高1女子)

 国や都道府県の新型コロナウイルス対策を見ていると、相変わらず気の緩み、不要不急の外出自粛といった曖昧なことを、ただただ繰り返すだけです。この1年間で国民の知識はどれだけ増え、どれだけ感染予防の行動が浸透したのでしょうか。学校での講演会が復活する中で、話せば話すほど「そうだったんだ」という反応をもらいます。感染予防の基本はウイルスがどこから、どこへ、どうやって移るかですが、それを一言で伝える方法はありません。「3密を避ける」という決め打ちはある意味正解ですが、それだけでは感染拡大は予防できません。となると、感染予防のためにできることは何かを考え、それを積み重ねることしかありません。そこで今月のテーマは「できることの積み重ねか、決め打ちか」としました。

できることの積み重ねか、決め打ちか

〇決め打ち脳
 相変わらず「空気感染が一番の原因」と声高に主張している医師がいました。私はそのような主張を聞いても、その先生と議論する気にはなりません。なぜなら「で、どう予防すればいいのですか?」と突っ込むだけです。空気感染が唯一の感染経路であれば、今後、手洗いも不要ですし、ポテトフライは素手で食べてOKということです。マスクはすべてN95にするしかありません。ふと思ったのですが、会食の時に自分の足元に頭上に向かう扇風機を置き、自分の頭上に個人用換気扇を置けば、空気感染は予防できます。新しい商売が見事成立です。
 このように、感染経路を知る意味は、「で、どうすれば予防ができるか」を考えるためですが、不思議と感染経路を決め打ちする人は、「決め打ち脳」とでもいうのでしょうか、その次に大事になる予防方法について教えてくれません。

●HIVの感染経路に唖然
 HIV/AIDSも感染経路が混乱していた時代があったことを思い出し、ふと最新の高校の教科書を引っ張り出してびっくり。「コンドームを正しく使うことで粘膜同士の直接接触を避け、感染を防止することが重要です」と書かれていました。「唖然」。言葉を失いました。
 HIVは粘膜と粘膜の接触で感染するわけではありません。当たり前のことですがHIVは感染している人の精液、膣分泌液、血液を主とした体液に存在します。それらをセックス、輸血、薬物の廻し打ち、刺青時の針と墨の共有、さらには出産や授乳という行為で他の人にうつします。この当たり前のことが以前は書かれていたのですが、時が流れ、気がつけばいつの間にか間違った表現に書き換えられていました。

〇単純化は誤解の元
 「3密を避ける」という言葉は「粘膜の接触を避ける」と同じように一見正解に見えます。しかし、3密でも背中合わせなら大丈夫です。粘膜同士でもそこに精液が、膣分泌液がなければ感染しません。さらにHIVについてはU=U、すなわち治療をしていて血液中のウイルス量が検出限界以下(undetectable)になっている人は、コンドームなしで精液を相手の膣や直腸内に入れても相手を感染させない(untransmittable)のです。このことももちろん教科書に書かれていませんが、このように予防をするということは決して単純に「これだけすれば感染しない」といった決め打ちで出来るような単純なことではありません。

●なぜ積み重ねができないか
 最近、学会等でオンライン講演をさせていただくと、〇〇学会の専門医資格の認定のため5択の試験問題を作らされます。もちろん落とすための試験問題ではないので単純明快な質問を作成していますが、そのプロセスで気づかされたことがありました。試験問題を作れないのが新型コロナウイルス感染予防対策でした。
 
 新型コロナウイルスに絶対感染しないためにできることの組み合わせは
 1.絶対人に会わない
 2.絶対に差し入れをもらわない
 3.3密を避ける
 4.マスクをする
 5.手洗いをする
 
 一見すると1と2が答えだと思います。しかし、人に会っていなくても、感染している人が近くにいて、その人が排出したエアロゾルが漂ってくる可能性は否定できません。空気感染すると言っている人もいます。3密でも背中合わせなら大丈夫と思いきや、エアロゾル感染は否定できません。さらにマスクをしているとエアロゾルの排出が増えます。手洗いをしてもその後、口や目に入れるものを触るまでの間に何かに触れればアウトです。すなわち、感染予防を考えるには、「たら」、「れば」を繰り返し考える必要があります。しかし、そのことが苦手な人が多くなっています。なぜなら「答えはこれ」と覚える勉強法、というか暗記法を徹底的に叩き込まれたからでは。「たら」「れば」といった対話をしていると、気がつけば対話の中で迷子になってしまうのではないでしょうか。

〇できる人が、できることを
 この時期は学校の体育館で講演を頼まれることが多くなるのですが、2月の中旬にお邪魔した体育館で大きな気づきをいただきました。午前中にお邪魔した学校は体育館のすべての扉が開けられていて、生徒さんは寒さに凍えながら、でも「換気が大事」ということで我慢をして講演を聞いてくれていました。午後にお邪魔した学校も気温が少し上がったものの、ドアが全開だったのでやはり寒かったのですが暖房器具をフル稼働させていたので少しは暖かくなっていました。その時、ふと天井の方を見たら体育館の壁の上部にある窓が全部しまっていました。さらにその窓のところに扇風機がついていました。さて、皆さんはこの体育館でどのような感染予防対策を行いたいと思いますか。その根拠を含め説明して見てください。私は次のように考え、頭の中を整理していました。
 
 1.フロアに近い窓や扉は閉じる
 2.暖房は普通に入れる
 3.体育館上部の窓を少し開ける
 4.窓の外に向かって扇風機を作動させる
 
 このようにすれば暖房とそこにいる人が排出するエアロゾルを含んだ暖かい呼気で上昇気流ができエアロゾルの体育館外への排気に向けた空気の流れが創出されます。「予防に換気」と決めつけず、できる人が、できることを考え、共有することを積み重ね続けましょう。

紳也特急 258号

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~今月のテーマ『マスクが外せる社会になるには』~

●『生徒の感想』
○『マスクなしで街中を歩く』
●『根拠のない押し付けが横行』
○『スーパーコンピューターよりリアルな実験』
●『考えることを放棄させるmonologue』
○『考えさせる「対話(dialogue)」の重要性』
●『「根拠がない=議論に値しない」という風潮』
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●生徒の感想
・私のクラスは女子は割とオープンだから楽でいいけど男子はちょっとな・・・。そういう話をすると、謎な反応するんですよ。先生の講演を聞いて、皆、岩室先生みたいになればいいなぁ!って思いました。変なプライドで話さないより、オープンにそう話してくれた方が安心する。人っぽくて。だって、そうじゃないと将来彼女と上手く行かないでしょう。(高1女子)
・先生の話は長かったです。けど、長い話に合った量の情報が入っていた。時間を忘れて聞いていました。面白い話も交えながら話してくれたので飽きることなく、深く印象に残っているものも多くあります。(中3女子)
・「絆」という字は助け合いの意味だけではないことも知りました。困った時には友だちに相談して「お互いさま」という気持ちを持てるようにしたいと思いました。(中3)

 生徒さんの感想を読んでいると、私の話を参考にしながらも、自分自身で考え、次のステップに進もうとしている事が伝わってきます。今はまっているNHKのドラマ、「ここは今から倫理です。」の第2話で高校の倫理の教師が「対話の授業」を仕掛ける場面を見ながら、いま、一人ひとりが求めているのが対話(dialogue)だと思いました。一方で、新型コロナウイルス対策で専門家たちは自分の思いや自分が信じている論文を押し付ける独り言(monologue)が横行しています。新型コロナウイルス対策で求められていることも対話(dialogue)を通した、一人ひとりが納得できる社会づくりです。私が気になっていることの一つがマスクの問題です。そこで今月のテーマを「マスクが外せる社会になるには」としました。

マスクが外せる社会になるには

○マスクなしで街中を歩く
 新型コロナウイルスが蔓延し始めた昨年の3月頃から緊急事態宣言が出ている今でも、私はオープンエアーの街中を歩く時にマスクはしていません。建物の中に入る時は「マスク装着のお願い」というステッカーが貼られているのでポリウレタンマスクをつけていますが、診療や会議、講演の際には不織布マスクです。
 今回の緊急事態宣言が出た後、街中で誰かとすれ違う時に「この人避けているな」と感じることもあります。「他の人が怖がっているのだからマスクをするべき」という意見があることも承知しています。しかし、マスクだけではないですが、新型コロナウイルス対策についてあまりにも誤解や思い込みが多い中で、どうすれば一人ひとりが考えてくれるようになるのか、個人レベルですがささやかな投げかけをしているつもりです。

●根拠のない押し付けが横行
 バイデン大統領が公共交通機関を利用する際にマスクの着用を義務化した一方でアメリカではマスクは絶対にしないという極端な人たちもいます。皆さんはどう思いますか。こう問いかけると、多くの人は公共交通機関を利用する際にマスクをするのは常識で、何バカなことを聞いているのかと思っていないでしょうか。最近「ウレタンマスク警察」なる人たちがニュースで取り上げられていますが、どの話題もそもそもマスクの目的、素材、用途等についての検証や考察がないまま、思い込みの押し付けになっています。

○スーパーコンピューターよりリアルな実験
 一方で昨年紹介されたスーパーコンピューターの富岳を使ったマスクの飛沫抑止効果に関する実験結果が再度ニュースとして取り上げられていますが、まずは小学生でもできる、お風呂場の鏡に息を吹きかけるだけの実験をやってみてください。マスクなし、ポリウレタンマスク、布マスク、不織布マスクを試すと不織布マスクが一番鏡を曇らせない、すなわち不織布マスクがエアロゾルの排出を抑制されることがわかります。もっともメガネが曇ることから、総排出エアロゾル量の減少に役立っているかは不明です。ポリウレタンマスクや政府から配布された布マスクだとマスクなしの場合より鏡の曇り方が増し、それらのマスクをした場合はエアロゾルの排出が増えているのがわかります。考えれば当たり前のことですが、マスクをしていると、口腔内、鼻腔内の温度が上昇するだけではなく、呼吸が苦しくなるのでより深呼吸になってエアロゾルの発生量を増やしているのです。さらにポリウレタンマスクの場合、曇った鏡を丁寧に見ると、エアロゾルの中にぽつぽつと大きな飛沫が見えます。調理をしている人がポリウレタンマスクを使えば、飛沫が料理に付着する可能性が高くなります。

●考えることを放棄させる
 スーパーコンピューターの富岳を使った実験の数々が報道される度に「こんなに税金をかけなくても」、「そもそも入力されているデータが間違っていると結果も間違っている」、「元となる論文をそのまま紹介すればいいだけ」などと思っていました。しかし、富岳の実験を紹介する本当の目的は違うところにありました。
 水戸黄門の印籠ではないですが、「この富岳の結果が眼に入らぬか」と言われたら、岩室のようなひねくれ者でなければ「はは~~」と平身低頭、信じてしまうとマスコミは思っているのです。少なくともそのニュースを取り上げたディレクターはもちろんのこと、ニュース原稿を読むアナウンサーもそう思っているのでしょう。新型コロナウイルス対策では、受け手が自ら考えなくてもいい、というか、考えることを放棄させる一方通行、monologue、独り言のような伝え方が主流になっています。

〇考えさせる「対話(dialogue)」の重要性
 一方で文部科学省は新しい学習指導要領の中で「対話的な学び」ということを盛り込んでいますが、この「対話的な学び」は大人社会にこそ必要です。
 「マスクを外した方がエアロゾル感染のリスクが下がる」と言われたらあなたはどのように反応しますか。
 1.あり得ない、バカじゃない
 2.そうなんだ
 3.どうしてですか?
 4.知っています
 概ねこの4つの反応になるのではないでしょうか。1は頭から否定。2は鵜呑み。3は否定をせず、相手に問いかける対話にする。4は既に知っている。今回、「マスクが外せる社会になるには」と投げかけた背景には、その反応として「新型コロナの収束が大前提」と結論ありきの人がいることも承知しつつ、一方で「どうすればそのような社会になるのか」と興味を持ってくれる人もいると期待してのことです。

●「根拠がない=議論に値しない」という風潮
 小学生でもできる実験はもちろんのこと、考えれば当たり前のことなのに「根拠は?」、「論文を示せ」という人が後を絶ちません。困ったものだと思っていたところ、あるメーリングリストに知り合いの公衆衛生学の教授が次のようなコメントを寄せていました。ご本人の了解を得た上で紹介します。
+++++++++++
 世の中の変な風潮に警鐘を鳴らさないといけないと考えています。EBM(Evidence Based Medicine)の副作用かもしれませんが、「根拠がない=議論に値しない」という風潮です。いわゆるEBMで言うところの「根拠」がなくても、たとえば理論的に考えて正しいことはいくらでもあります。例を挙げます。
 飛行機に乗った際に、非常時の説明で、酸素マスクが出てきたときには、子ども連れはまず大人が先に装着して,その後に子どもにつけるように、と言います。「共倒れ」を防ぐという意味で、正しい方法です。しかし、絶対と言って良いと思いますが、いわゆる「根拠」はありません。
(1) 自分で考えることを放棄した。
(2) EBMを逆手にとって、自分に都合の良い論調を張る。
 人災です。
+++++++++++
 マスクが外せる社会になるには、一人ひとりが考え、周囲との対話を重ねるしかありません。新型コロナウイルスがこの世から消えるはずがないので、どうこのウイルスと共に生きるかを、これからもいろんな人と考え続けたいと思います。

2020年11月24日に出演したBS⁻TBS 報道1930の公式YouTube。
【新型コロナ感染対策の“盲点” 間違えると逆効果も…】

新型コロナウィルスについての考え方

 

紳也特急 257号

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~今月のテーマ『新型コロナウイルス対策のブレイクスルー』~

●『中学3年生の感想』
○『ブレイクスルーとは』
●『「感染経路」が議論にならない理由』
○『感染経路、感染者は犯人ではない』
●『感染経路別にできること』
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●中学3年生の感想
・コンドームは正しく使用していても破けてしまうことがあること知りました。大人でもあまり知っている人の少ない知識を知ることが出来ました。
・性教育で気持ち悪くなかったのは初めてです。
・今日の講演会はおもしろく場が和んでいたのでとても岩室紳也先生の話が聞きやすかったです。性の話などもとても良かったのですが、実際に岩室さんが経験した話や、かんじゃの話など色々と学べるお話をしてくださったのがとても印象に残りました。今までの講演の中で一番聞きやすい、かつとても学ぶことが多い講演でとても満足した講演会になってよかったです。
・今回は笑いを交えた講演会だったので楽しく聞くことが出来ました。Love(大切)の反対は無関心ということも初めて知れました。人は依存するのではなく、人との絆を結び、初めて自立できるといった自分のいままでの考えを一新するようなことも学ぶことができたのでよかったです。
・画像や映像を使わず、声だけでものすごい情報を伝えるのはすごいし、耳からの情報なのでとても覚えやすいし、分かりやすかったです。

子どもたちにとっての性教育は、大人たちにとっての新型コロナウイルス教育と同じです。その生徒さんへの性教育ですが、生徒さんに直接、マスクなし(もちろん2メートル以上の間隔を取り、かつ小さな声)で講演する機会を大人への新型コロナウイルス教育を兼ねて徐々に復活させています。昨年は3月1日からの講演がすべてキャンセルになるとんでもない年でしたが、今年はそのようなことがないことを祈っています。何より、緊急事態宣言が発出されたにもかかわらず、新型コロナウイルスに感染している人が連日のように「過去最高」と言われる中、首相の「静かな年末年始」のお願いではウイルスは抑えられません。分科会の尾身会長が力を込めて指示棒を振り上げても、感染拡大が止まらない状況が何より国民の実情を物語っていると思いませんか。
では、いま、何が求められているのでしょうか。2020年1月号は「HIV対策のブレイクスルー」ということで書かせていただいたので、2021年1月号は「新型コロナウイルス対策のブレイクスルー」としました。

新型コロナウイルス対策のブレイクスルー

〇ブレイクスルーとは
Oxford Dictionaryでbreakthroughを調べると“A sudden, dramatic, and important discovery or development.”とありました。研究社 新英和大辞典第6版でbreak throughを日本語に訳すと「(壁などを)突破する。(努力の末に)大きく前進する、大発見をする。」とありました。
確かに、今の日本は流行語大賞を獲得した「3密」神話が根深く定着し、大きな「壁」となっています。年末に行きつけの飲み屋さんで飲んでいたら隣の方が「COCOAを入れていますか?」と話しかけてこられたので、素性を明かし、そのお店の感染予防対策に関わらせていただいている旨を紹介させていただきました。このように国民一人ひとりの中で、何を「(努力の末に)大きく前進」させればいいのでしょうか。

●「感染経路」が議論にならない理由
2020年12月31日にNHKのニュースで「バスツアー 休憩中の換気や車内の食事禁止を 国立感染症研究所」というのが流れました。「接触」「マイクロ飛まつ」という言葉が使われているため、一見「感染経路」についてきちんと議論をしているように思ってしまいます。しかし、「乗客と乗務員は常にマスクを着けていたことから、報告書では、さらなる感染対策として、頻繁に触れる場所を中心に清掃や消毒をし、休憩時の換気や、軽食を含めた食事の禁止といった対応を取ることが望ましいとしています」とあります。マスクをすることでかえって「マイクロ飛まつ(エアロゾル)」の排出が増えるので、本気でマイクロ飛まつ(エアロゾル)対策をするのであればマスクをしないという選択肢も提示すべきですができていません。
さらに、これだけの人が感染したということは、どこかの旅館の調理人が無症状の感染者で、ポリウレタンマスクやマウスシールドで調理をしていた可能性を抗体検査等でフォローしたのかということが気になります。でも、保健所の方々に聞いてもそのような調査をしている余裕も、予算もないのが実情です。

〇感染経路、感染者は犯人ではない
HIV/AIDSに初期の頃から関わる中で、自分自身の反省を込めて振り返ると、「感染経路」という言葉を使いながら実は「感染者」を見ていた時期がありました。さらに「感染者」という言葉を使うこと自体、適切に「感染経路」を捉えていないことに気づかされた場面がありました。
ある時、次のような指摘を受けました。「岩室先生のご家族がHIVに感染していたら他の人にどうその事実を伝えますか?」と。私には妹がいますので、「妹はHIV感染者です」ではなく、「妹はHIVに感染しています」と言うのにも関わらず、どうして統計数字等を語る時は「感染者」という呼び方になるのかという指摘でした。
「感染」というのはあくまでもその人の現状です。その人がどのような経路で感染されたかを丁寧に学ぶ必要があります。大人がHIVに感染する経路はセックス、輸血、薬物の廻し打ち、刺青となります。科学的にとらえ、適切な、効果的な啓発活動が求められていたにも関わらず、多くの人たちが「不特定多数とのセックス」といった修飾語をつけて、誤解を招き、偏見を助長する啓発をしていました。「不特定多数とのセックス」を声高に叫んでいた人たちは、まるで今の政府や専門家のように「夜の街や接待を伴う飲食店」と脅している人たちと同じでした。

●感染経路別にできること
緊急事態宣言の前から、それこそ3密という言葉が使われる前から感染経路別対策を確認し続ける重要性を指摘し続けています。それが日本全体でできていない理由は「犯人」を探し出し、自分はカヤの外に置きたい他人ごと意識のなせる業のようです。となると今求められているブレイクスルーは、改めて感染経路別にできることを再確認することです。

飛沫感染対策:相手の顔に、料理に飛沫をかけないために不織布マスクを使用し、マスクの表面は触らない。
エアロゾル対策:排気に向けた空気の流れを創出し、可能な範囲でマスクを外す。
接触(媒介物)感染対策:口に物を入れる直前の手指衛生を徹底し、他人の料理に飛沫をかけない、料理食器は他人から遠くに置く。
唾液感染対策:キスの前後に何かを飲むか、覚悟のキス。

一見シンプルなことのようですが、エアロゾル対策でマスクを外すことや、不織布マスク以外は単なるポーズだということは大きなブレイクスルーです。ここにたどり着くまでに紆余曲折もあり、これからも修正の連続だと思っています。ぜひ「犯人探し」の発想から抜け出し、一人ひとりができることを徹底する1年にしたいですね。私はできることを重ね続けたいと思います。

本年もよろしくお願いします。

紳也特急 256号

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全国で年間200回以上の講演、HIV/AIDSや泌尿器科の診療、HPからの相談を精力的に行う岩室紳也医師の思いを込めたメールニュース! 性やエイズ教育にとどまらない社会が直面する課題を専門家の立場から鋭く解説。
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~今月のテーマ『新型コロナウイルスに見るヘイトスピーチ』~

●『高校2年生の感想』
○『ヘイトスピーチとは』
●『気の緩みで感染拡大?』
○『換気の専門家は役に立たない』
●『マスクではなく不織布マスクを』
○『直前の手洗いを』
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●高校2年生の感想
・今回の講演はパワーポイントなどを使わず耳でしっかり聞く講演だったので、より頭に入ってきた。(男子)
・先生のぶっちゃけた話を聞くと、今までは恥ずかしいことだと思っていた性の話も別に恥ずかしがることじゃないし、もっと友達と気軽に話せるような内容であってもいいんだなと思いました。(男子)
・さまざまな話を聞いていく中で、人間の本質を考えて物事を捉えている人だと分かった。(男子)
・自分の経験則に伴って、色々な知識を人に教えることができて、すごいと思う。さまざまな話を聞いていく中で、人間の本質を考えて物事を捉えている人だと分かった。軽率に考えていることが取り返しのつかないことになるということは分かっているつもりだったけれど、話を聞いていると改めて考えさせられた。(女子)
・自分が今まで思っていた、固定概念というものも今日の講演を通してもう一度考え直すべきところがあるなと思うことが出来ました。(女子)
・中学3年生の時にも私の行っていた中学校に来てくださり、お話を聞くのは2回目だったのですが、前に聞いた時と今回聞いたのとでは感じ方がちがくておどろいた。(女子)
・私は今までウイルスの8割ほど空気中をさまよっていると思っていたのですが、飛んだ後、床に落ちていることを今日初めて知りました。(男子)
・マスクをつければけっこう予防になると思っていたけれど、そこまで簡単なことではなくて、一長一短があり、マスクをつけているからといってしっかり予防されているわけでないことを知った。細かく考えることで、一般的に言われているようなこととは違った結果が見えてくる。(女子)

 高校生を対象とした性教育の講演会として呼ばれてはいるものの、このご時世なので新型コロナウイルスの話を盛り込むと食いつきが違います。どうしてそんなに食いつきがいいのかを考えながら話していると、実は彼らがマスコミやわかった気になっている大人たちからトップダウンの感じで「マスクをつけろ」、「手を洗え」、「換気をしろ」、「3密を避けろ」と言われていたからだと気づかされました。これらの言葉は一見合理的に見えるのですが、できていない人を排除、否定するような雰囲気です。しかし、私の話は、できる人が、できることを、できるようにするにはどうすればいいかをただただわかりやすく伝えているだけなので、高校生にはストンと腑に落ちるようです。このやり取りの中で気づかされた新型コロナウイルス関連で発せられているヘイトスピーチの数々を何とかしなければなりません。そこで今月のテーマは「新型コロナウイルスに見るヘイトスピーチ」としました。

新型コロナウイルスに見るヘイトスピーチ

○ヘイトスピーチとは
 法務省はヘイトスピーチを「特定の民族や国籍の人々を、合理的な理由なく、一律に排除・排斥することをあおり立てるもの」と定義しています。「合理的」というのは広辞苑に「道理や理屈にかなっているさま」とあります。ヘイトスピーチと聞けば神奈川県川崎市が全国初の罰則付き条例を施行したことは記憶に新しいのですが、今回の新型コロナウイルスでも「夜の街」、「ホストクラブ」、「接待を伴う飲食店」といった「特定の地域や職業の人々を、合理的な理由なく、一律に排除・排斥することをあおり立てるもの」になっていないでしょうか。
きれいごとではなく、その是非はともかく、正直な感情として「特定の民族や国籍の人々」に対して拒否的な感情を持っている人は少なからずいます。同じように「特定の地域や職業の人々」に対して拒否的な感情を持っている人も少なからずいます。「その感情を変えなさい」というつもりはありません。しかし、その感情を感染症対策に持ち込むと方向性を見誤るだけです。こう書くと「夜の街」、「ホストクラブ」、「接待を伴う飲食店」を営業自粛に追い込めば感染拡大は抑えられたではないかという反論が聞こえ、一見「合理的」と勘違いしている人を勢いづけることでしょう。しかし、それは人の交流が減れば感染症は減り、交流が再開すれば感染症が増えるだけという科学的事実、理屈に気づいていない人の発想でしかありません。

●気の緩みで感染拡大?
 いろんな政治家、専門家、行政担当者、マスコミがこぞって「気の緩み」といった非科学的な情報発信をしています。しかし、この発言こそが感染している人たちに対するヘイトスピーチではないでしょうか。青山学院大学の原晋監督が「政治家の皆さんは『気の緩み、気の緩み』と国民に責任を押しつけるようなところがある」と言っていますが、本当にその通りです。では、本当に気の緩みで感染する人ってどのような人かを考えてみました。
 中高生向けの講演会で最近よく話すのが、HIV/AIDSの患者さんを始めて受け入れた時のことです。患者さんから私が感染するとしたら針刺し事故以外は考えられません。全国的に、全世界的に見ればもちろんHIVに関連した針刺し事故はあります。しかし、実際に、特に初期の頃は医療関係者一人ひとりが針刺し事故を起こさないよう細心の注意を払っていたので事故はほとんど起こりませんでした。「気の緩み」が生まれるような余裕などあるはずがありません。新型コロナウイルス患者を受け入れている多くの病院でも院内感染が起こっていないのは同じように注意を払っているからです。
 こういうと「院内感染が複数の医療機関で起きている」という反論が寄せられるでしょうが、「気の緩み」なのか、「感染経路の誤解」なのかの検証が必要だと考えています。

○換気の専門家は役に立たない
 冬場に向かって換気をどうするべきかを議論するため、換気の専門家の空気調和・衛生工学会や日本建築学会の関係者の方がいろいろ発言されていますが、そもそもエアロゾル感染する新型コロナウイルス予防で「換気」という概念を取り入れること自体、感染経路や予防を理解していないと言わざるを得ません。
 エアロゾル感染よりも長時間病原体が空気中を漂っている、空気感染する結核菌対策に関わる保健医療関係者が一番気を付けているのが空気の流れです。患者さんが風下、保健医療関係者が風上に立てば患者さんが排出し空気中に浮遊している結核菌は保健医療関係者の方には流れてきません。エアロゾル感染でも同じ理屈です。その次に考えなければならないことが、空気の流れが十分確保されない場合など、患者さんが排出する菌が保健医療関係者の周囲に漂ってくる場合の予防策としてN95という高性能のマスクを正しい方法で装着することです。今回新型コロナウイルスでは、「換気」という言葉が独り歩きしているのは、感染症を理解していない人が発したメッセージだということです。空気の流れを創出した結果として、空間の空気をいかに外に排出するかを考えるべきで、換気は結果として起こることです。

●マスクではなく不織布マスクを
 「マスク」という言葉も独り歩きし、マウスシールドやフェイスシールドまでがマスクと誤解されています。マスクの材質もマスクの効果に影響するのですが、今や何かで口を覆っていれば許されると言ったとんでもないマスク大国日本になっています。先日BS-TBSの報道1930という番組が私の指摘を受けて実験をしてくれました。
 BS-TBSの報道1930ダイジェストYouTube 
 マスクの目的は感染している人の飛沫を拡散させないことですので、鼻からあごの下までを覆う不織布マスク以外は意味がないことを周知徹底する必要があります。もっとも、テレビではマウスシールドをつけて料理をしている番組もあれば、先日某県で飲んでいたら調理をする人がマスクをしていないと言ったとんでもない事実に日々直面しています。これからは「マスク」ではなく「不織布マスク」と言い続けましょう。

○直前の手洗いを
 手洗いや手指消毒も「何のため」ということが抜け落ちているようです。手洗いはあくまでも手についたウイルスがフライドポテトやタバコのフィルターに付着させた後に口の中に運ばれるのを防ぐために行う行為です。ということはこまめに洗うとか、どんなに長時間手を洗わなくても、飲食やタバコ直前に手洗い、手指消毒をすればいいのです。「いやいや、その手であちらこちらを触られたらウイルスをまき散らしているのと同じではないか」と反論を受けそうですが、そこを触った人も飲食やタバコ直前に手洗いをすれば大丈夫です。
 「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」といいますが、今撃たれている球(対策)は流れ弾となって多くの人を傷つけているだけではなく、本当に有効な対策が見えなくなっています。今一度、何ができるかを考え、できることを一つずつ積み上げたいと思います。