紳也特急 16

〜今月のテーマ『21世紀のエイズ教育』〜

●『デジカメの世界』
○『21世紀のエイズ教育』
●『21世紀に何を伝えるか?』
○『日本エイズ学会』
●『「わたしたちのエイズ」に思いを込めて』
○『世代が急速に代わっている』
●『パンフレットの申し込み・問い合わせ先』

◆CAIより今月のコラム「クリスマス」

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●『デジカメの世界』
 最近、デジカメに凝っています。SONYから出たDSC-P1をいつもカバンやポケットの中に入れて持ち歩き、シャッターチャンスがあれば取っています。先日講演に行く途中の飛行機から雲に映った機影とそれを包む虹の写真が撮れてご満悦です。もともと写真撮影を趣味としていて、というか、カメラいじりが好きでしたが、デジカメに出会ってますます写真をとることが好きになりました。デジカメの良さは、取りあえず撮影してみて、その時思い通りの写真になっていなければ取りなおせばよく、失敗例はその場で削除できます(これってパソコンで書いた文書にも当てはまります)。ただし、デジカメの欠点もあります。シャッターチャンスを大事にしないため、「取りあえず取っておこうか」という感じになってこの一瞬の画面に対する集中力がなくなり、以前だったら絶対背景に入れないものが入っていたりすることがあります。中華街の近くで「かわいい猫」と思って撮った子猫たちの背景がゴミの山、というのはいただけませんでした。一見便利なこの道具も、使いようによっては自分の感性(そんなものあったっけ?と誰かが言っているのが聞こえるようですが)を失いそうな気がしています。まさしく道具は使いようですね。

○『21世紀のエイズ教育』
★今日は世界エイズデー
 12月1日は世界エイズデー。全国各地で様々なイベントが行われていますが、どれだけ効果が上がっているのでしょうか。神奈川県では来年度エイズ関連の予算がばっさりと削られそうですがこれも財政担当者が「エイズなんてもう問題になっていない」と肌で感じているからです。エイズ対策と言えばイベント、という行政のやり方はここ数日のHIV/AIDS関係者の忙しさを見ればご理解いただけると思いますし、私にも多くのお誘いをいただきました。しかし、イベントの中味を見ると戦略のない予算消化というものも多くないですか、担当者殿。そろそろターゲットもメッセージも絞った対策に切り換えませんか。

●『21世紀に何を伝えるか?』
 20世紀の医学は病原体や病気・疾病と戦った結果、数多くの成果をあげ、がんが治ることもあるという時代になりました。その一方で、薬が効かない病原体、生活習慣の中に上手に入り込んでいる病原体、最新の治療でもどうにもならない病気・疾病、さらには様々な障害が明らかになりました。
 HIV/AIDSは20世紀の末に明らかにされた病原体/病気であり(当然のことながら昔から存在し、1960年代のアフリカでは当時小学生だった私たちの間ではslim病としてやせ細って死んでしまう病気として認識されていたという気がしています)、21世紀こそHIV/AIDSとどう共に生きるかを模索しなければならない時代になるでしょう。多くの日本人は「いつになったらHIV/AIDSが克服されるのでしょうか」ということを期待しています。しかし、そんな時代が来るのでしょうか? 正直な所、私はあと100年経ってもHIVは人類にとって遠ざけることができない病原体であり続けると思います。HIV/AIDSがなくなる時代を待ち望むほどHIV/AIDSの当事者の人達に対する共感意識が芽生えません。「HIV/AIDSは22世紀まで消し去れない」と思うことができれば「HIV/AIDSと共に生きる」ために必要なメッセージや情報が見えてくると思います。

○『日本エイズ学会』
 11月28日〜30日にかけて京都で第14回日本エイズ学会が開催されました。HIV/AIDS対策では教育に勝るワクチンはないと言われながら、今まで市販されていたパンフレットといえば「偏見差別をやめましょう」、「不特定多数とのセックスは危険です」、「握手、コップの回し飲みでは感染しません」と、それこそ偏見と差別、無用な恐怖感 を助長する表現が満ち溢れていました。 少なくとも私はそう思っています。今回の学会では、21世紀を生きる若者が必要としているのは科学的知識とコンドームの生活習慣化に向けたメッセージではないか、という視点で普及啓発パンフレットについて検討しました。
 現在市販されているパンフレット(4社の44パンフレット)の内容が若者にとって必要不可欠な情報なのか、それともかえって誤解を与えかねない情報になっているか、に分類し、そのような内容が取り上げられている頻度を分析しました。
必要不可欠な情報では
正しいコンドームのつけ方      51%
安全なパートナーの確認は困難    37%
セックスをしていれば誰でも感染?  33%
誰とでもコンドーム         32%
   等で、必要な情報がきちんと記載されているパンフレットは全体の3分の1程度でした。

誤解を与えかねない抽象的な表現として
うつらないこと           76%
不特定多数、不安を感じる相手、買売春62%
感染の不安、心配なこと       60%
安全なパートナー          38%
正しい理解             33%
無防備なセックス          18%
   等、でした。
 不特定多数とセックスをしてもコンドームをしていれば感染しません。「正しい○○」と言えば感染した人は「間違っている人」というイメージになります。「○○ではうつりません」を強調しすぎると「どうしてそんなに強調するのか?」と不安を助長します。問題点を指摘するだけではなく、自ら新しいパンフレットのあり方(思春期の生と性/わたしたちのエイズ:日本家族計画協会刊)を提案しました。学会場で取材を受けた朝日新聞が12月10日の日曜版で取り上げてくれると言ってくれました。よかったらご覧になってください。

●『「わたしたちのエイズ」に思いを込めて』
 今回のパンフレットの題は「思春期の生と性/わたしたちのエイズ」としました。「思春期の生と性」を前面に出したのは、エイズ予防は大変重要な課題ですが「思春期を生き抜く」難しさの一つにエイズ予防があるということ、そして若い人達に「HIV/AIDSはあなたたちの病気ですよ」ということを強調したかったからです。私は常々「エイズを題材に様々な問題(偏見差別、道徳、買売春、等)を語らないでくれ」と言っています。HIV/AIDSは一つの病気であり、それを主たるテーマにすること自体が誤解を生むと思っています。
 大人がセックスでHIVに感染して私の外来に来ても「自己責任」の病気として割りきれます。もちろん当たり前のことですがその人達にも最良の医療を提供すると言う点では差別もしません。しかし、10代に感染したと思われる人だと私は「あなたの自己責任です」というふうには割り切れません。どうしてこの人が感染しないで済むようなメッセージを「私が」事前に送れなかったのだろうかと「私」の責任を感じてしまいます。私が思春期の真っ只中にいた時にはHIV/AIDSは日本に上陸していませんでした。今の私が感染していないのは偶然HIV/AIDSが日本に上陸していなかったからかもしれません。現代の若者が思春期を生き抜く時に、HIV/AIDSを無視することはできません。今回パンフレットを作成するに当たり、若者の感染予防を最大の目標としました。そしてその彼らの仲間や家族が感染した時に戸惑わなくて済むような情報提供もしてみたつもりです。

○『世代が急速に代わっている』
 中学生や高校生にはこのパンフレットのようなメッセージが必要だと自信をもっていましたし、実際に話をしても素直に聞いてくれます。しかし、先日20歳過ぎの専門学校生に話した時、彼らがあまり知識もないであろう(と岩室が勝手に思いこんでいた)ゲイ人達のことに話が及んだ時、「友達がゲイだと言ってきたらどう思いますか」という私の投げかけに対して「その人の指向だから良いんじゃないですか」という冷めた、極めて当たり前の返事が返ってきて質問を投げかけている私がかえって恥ずかしくなりました。20歳が境になるかはわかりませんが、世代間の認識のギャップ、そして性の多様性についての理解と共感の輪は確実に広がっていると思います。若い世代の方が偏見も差別もなくエイズやゲイのことを見ていることは確実です。

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(学生の感想文の中から)
 中学生の時(ゲイのことを)告白された友人を改めて思い出しました。彼は自分がゲイであることを恐れていましたが、高校でAIDSのことを少し学び、再び彼と連絡を取った時、私の不安は消え去りました。もちろんHIV感染については必ず意識するようにということはお互いに口にしていましたが、自分がゲイであることは彼にとっては既に1つパーソナリティになっていました。
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 大人たちが持っている偏見や差別のない若い人達に、あなたならどのようなメッセージを送りますか?
 ピアカウンセリング(仲間同士のカウンセリング)をする時に若いあなただったらこのようなメッセージをどのように受けとめますか?
 ぜひパンフレットを読んでご意見をください。

●『パンフレットの申し込み・問い合わせ先』
社団法人日本家族計画協会
〒162-0843
東京都新宿区市ヶ谷田町1-10保健会館新館
TEL 03-3269-4727
FAX 03-3267-2658

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1部でしたら下記の方法でお送りします。
1.宛名を書いて送料160円分の切手を貼ったA5の
  パンフレット(A4を二つに折ったもの)が入る封筒
2.代金250円(切手でも可)
を同封の上
〒243−0004 厚木市水引2‐3‐1
神奈川県厚木保健所
岩室紳也
         宛に送ってください。
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◆CAI編集者より今月のコラム
「クリスマス」

2000年もいよいよ今月をもって終わりを迎えるが、その前に一大イベントクリスマスがやってくる。
今年はどうやって過ごそうか、そろそろ悩みはじめている。クリスマスと言えばドイツのクリスマスは本当に素敵らしい。夏にドイツに行ったが、あの町並みを雪が覆い、神聖な音楽が流れる様子は、想像しただけでうっとりしてしまう。

しかし、結局はカップルだらけのデートスポットに行く気にもなれず、家でひっそりと過ごすことになりそう。去年はケーキを15個食べて、あれからすっかりケーキ恐怖症に・・・。

                              I.Y(♀)