紳也特急 2

~今月のテーマ「HIVの感染経路再確認」~

「いま、感じていること」

 慶応大学の医学生がレイプ事件を起こし退学になったことをもう少し考えてみました。
 泌尿器科医にならなければ、さらに性教育に関わっていなければ自分はこの事件をどのように受けとめていたでしょうか。少なくとも泌尿器科医になってこのように多くの経験を積んでいなければ自分はレイプが犯罪であるという認識を持てなかったと思っています。

 「レイプは被害者を一生苦しめることになる」という話を中学生にした時にある女性から「レイプは犯罪である」と言わなければ生徒は正しく理解してくれません、とアドバイスを受けました。「犯罪である、警察に捕まる、大学を退学になる、職場を首になる」といった具体的な表現を加えなければ生徒がアダルトビデオや漫画「レイプマン」から得ている安易な「レイプ」のイメージを変えることはできないようです。
 慶応の先生たちだけではなく多くの医学関係の偉い先生たちは学生や医者の不祥事があるたびに「面接を重視する」ということを言っていますが、面接する側が本当に面接をして判別する力があるのでしょうか。どのような面接をすればこのような事件を起こさないといえるのでしょうか。女性と男性ではレイプに対する考え方が違うと思います。正直な所、私は女性の側からの対応についてうまく表現できませんので男性の立場で考えたいと思います。

 男性の立場で考える時、いつも自分に置き換えて考えるようにしています。読者の男性の方に一緒に考えてもらいたいことは高校を卒業した時の自分、あなた自身のことです。私は男子校だった桐蔭学園を卒業した時点では女性を見るだけで落ち着かないくらい初心(うぶ)でした。京都の市電で予備校に通う途中に女子高が2校あり、その女の子達と一緒になるだけで興奮し、夏に半袖同士で素肌、といっても腕が触れるだけでドキドキで思わずカバンを体の前に持っていきました。痴漢行為が脳裏をかすめることもありましたが、痴漢行為を思いとどまったのは相手を不愉快にさせるからいけないという思いやりではなく、痴漢をして捕まるのはみっともないという気持ちが抑制していたと思います。でも自分の性欲は勉強に集中するだけでは抑えられるものではありません。この時に役だったのは桐蔭の「尚友寮」での生活でした。4人部屋。しかも勉強部屋と寝室が別というマスターベーションに十分配慮した構造でした。さらに仲間が最高で、開けっぴろげにオナニーをし後輩へのメッセージを自分の精液で寝室の壁に書いて残すという兵(つわもの)?もいました。自分の部屋でオナニーができない先輩後輩のためにもトイレはきれいに掃除してありました。エロ本や東京スポーツのエッチ記事を想像力たくましく読んでいましたが、実態は無害な男たちの中で過ごしたおかげで自分の性欲を自分でコントロールするすべを身につけていました。痴漢をしそうになっても思いとどまり、デパートのトイレに入って用を足す。一見誰にでもできる簡単なことのように思われますが、自信を持ってオナニーをし、自分の性欲と上手に付き合えるようになっていなければセルフコントロールは効きません。痴漢やレイプは犯罪です。しかし、男の中には痴漢やレイプをしたいという潜在的な欲望があります。欲望をどうセルフコントロールしているか、していたかを考えると私にはオナニーこそ救世主だったと思います。

 中学生、高校生に男の性欲の話をする時によくかかってくる「オナニー不安症」の電話相談を紹介しています。

相談者:もしもし。僕、オナニーしすぎています。どうしたらがまんできるでしょうか。学校の先生はクラブ活動に夢中になれといいますが効果ありませ
ん。
岩 室:どれくらいしているの。
相談者:週2回に抑えています。
岩 室:何年生?
相談者:中3で受験目前です。
岩 室:どうして回数を減らしているの?
相談者:し過ぎると記憶力が悪くなると友達に聞いたので。
岩 室:それはウソだよ。
相談者:先生はどれくらいしていましたか。
岩 室:おれは受験前は毎日していたよ。多い時は日に5回。(会場から笑いとどよめき)
相談者:おかしくなりませんでしたか。
岩 室:なんとか医者になったよ。
相談者:もっとやっていいんですね。
岩 室:がんばってやってください。
相談者:どうもありがとうございました。

 この話をすると会場(男子生徒)に安堵の雰囲気が流れるのが伝わってきます。さらに、親向けには「家の中にオナニーを安心してできる環境づくりを心掛けていただきたい」と話します。自分の部屋はもちろん、風呂場、トイレがオナニー部屋になります。ノックさえもせず部屋にやたらと入ってくる親、「いつまで長湯をしているの、最近色気づいたのか」と文句や心無い言葉を投げかける親、「お母さんおしっこ」とあまり上品ではない親。息子のトイレが長かったらお隣に「すみません、ちょっとトイレを貸していただけますか」というのはできませんか。

 昔の男にとって常識だったオナニーを満足にできない男が増えていることが問題だと思います。友達同士の会話にオナニーがあまりのぼらなくなった今こそ、性教育の中で大人が正しく教える必要があると思いませんか。
 もし私が面接官だったら「あなたはオナニーを自信持ってしていますか。どれくらいしていますか。」と聞くのでしょうか。そして、慌てて「そんなことしていません」と答える人には「1年間毎日のようにしてから来年再度受けてください」とアドバイスをするのでしょうか?????

◆今月のトピックス
「HIVの感染経路再確認」

傷があってもうつりません。
 保健所でエイズ相談を受けていると相変わらず「傷口があるとうつりますか」という質問があります。先週私が対応しただけでも2件ありました。教科書にもそのような記載がある以上、多くの人が疑問に思ってもしょうがないのかもしれませんが、「傷口」でうつるなら先月のテーマ「握手でHIVはうつる」ことになります。皮膚に傷がある人は大勢いますし、アトピー性皮膚炎ややけどの傷にHIVがついて感染するなら満員電車で感染する人がいるはずです。握手で手のささくれにHIVがつけば何人かに一人は感染することになりますがそのような人は事実として一人もいません。「電車や握手で皮膚や手についたHIVは乾燥するから感染力を失う」と思っている人もいるでしょうが、そもそもウイルスは乾燥ごときでは死にません。血液製剤も真空乾燥だけで加熱しなければ感染力があることは薬害エイズで証明されています。血が出ている傷はもっと安全で、血を出している血管の中にHIVが入ることはできません。HIVを押しこまないためにもまずは水などでHIVを洗い流してから止血等の傷の処置をしてください。

HIVを血管の中に入れなければ感染しません
 HIVは血管の中のリンパ球に入って増殖することで感染が成立します。感染するためには薬害エイズのように血管の中にHIVを注射するのが最も危険で、血管に直接入る感染として今後も麻薬の回し打ち、輸血、そして針刺し事故があります。
 それ以外の感染としてはHIVが血管に入り込める場所(子宮内膜のように血管が豊富、直腸や尿道粘膜直下の血管)にHIVが(性行為で)付着し長時間かけて血管に入り込むことで感染が成立します。結局、コンドームなしのセックス、麻薬の回し打ち、輸血以外では感染は成立しません。このことを正しく伝えることが重要です。

フェラチオは?
 HIVがどのような経路で感染するかを明らかにするには「人体実験」しかありませんが、今時そのようなことができる訳がありません。よく「口の中に、目の中にHIVが入ったら」という質問を受けますが私は感染しないと考えています。口や目の中に入ったHIVは唾液や涙で洗い流され血管の中に入り込めないと思います。大事なことはフェラチオにしても自分がしてもらう行為だということではないでしょうか。フェラチオはしたいが感染が心配なので誰かに感染しないという保証をして欲しいというのは虫が良すぎませんか。

◆読者の方から
 『深夜特急』にかけたネーミングでもあるのかな、とちょっと思ったのですが、違いますか?

紳也
 話の内容は一般には「深夜」帯のものとして受けとめられがちですが、今回の話も昼間、学校でしています。あまり深い意味はないと思いますがCAIとしてはいかがですか?

◆CAI編集者より今月の一言

 先生御指摘の通り、深い意味はありません。メールニュース創刊にあたり題名を考えておりまして、偶々旅先で車窓から中国の、のどかな農村を眺めていたら考え付きました。私自身、沢木耕太郎『深夜特急』は大好きな著書の一つでネーミングをかけたことも間違いありません。それと、メールニュースの特徴である情報の速効性を表しています。先生の名前が紳也(しんや)でなければ、このネーミングはなかったと思われます。そんなところでしょうか。