紳也特急 213

~今月のテーマ『LGBTという枠組みのおかしさ』~

●『生徒さんの感想』
○『L・G・B・T?』
●『ジェンダー(社会的性別)とは』
○『性同一性障害は医学病名』
●『トランスジェンダーは性同一性障害を包含』
○『ジェンダークィア』
●『ゲイでも、バイでも、ストレートでもない』
○『人は経験に学ぶ』

…………………………………………………………………………………………

●『生徒さんの感想』
 「わからない」は禁句。目で見たことは耳で聞いたことよりも情報は残りづらいなど、普段の生活や考え方に関することまで教えていただきありがとうございます。これからの生活に反映させていきたいと思います。私は、母から生理の日はしっかりマークしておけと言われていて、なんとなくマークしてきましたが、それをすることで、自分だけでなく家族も楽になるし、生理が止まった時に確認できると思いました。岩室先生の体験談を元に話していただき、とてもわかりやすかったです。(中3女子)

 私は施設で暮らしています。そこには同性が好きな男の子もいました。施設の中でその子は「おねぇ」とか「ゲイ」だとか言われており、気持ちが悪いと言われていました。ですが、私はその子はその子でいいと思いました。世の中で言われている常識や当たり前などをなくしたいとも感じました。(中3女子)

 私は「愛の反対は無関心」という言葉にすごくひかれました。相手の意志を尊重せず、自分中心の人が例え誰かと付き合っても絶対に長くは続かないと思ったからです。岩室先生の彼氏にするならどのような人がいいか見極める方法がとても面白く、実際にやってみようと思いました。私にはレズの友だちがいます。私はバイです。なんでみんなは同性愛のことを否定するのでしょうか。いつか同性愛も周りに認められてほしいです。(中3女子)

 性教育で大事なことは自分の性ときちんと向き合えるようになることだと思っています。そのためにも必ずセクシュアリティ(この定義も難しいのですが)の話はしますが、最近、生徒さんの感想の中で自らカミングアウトしてくる方もいます。一方でまだ教科書には異性愛者についてしか記載されていないのが現実です。
 文部科学省が「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」という通知を出しましたが、未だに「性同一性障害」、「性別違和」、「LGBT」といった言葉が正しく使われていない、というか自分自身も安易に使っていたし、正しく、きちんと伝えようともしてこなかったことを反省しています。そこでLGBTについて再考するため、今月のテーマを「LGBTという枠組みのおかしさ」としました。

『LGBTという枠組みのおかしさ』

○『L・G・B・T?』
 Lesbianは女性同性愛者。Gayは同性愛者を指すが主に男性同性愛者の意で使われることが多い。Bisexualは両性愛者。Transgenderはジェンダー(社会的性別)を乗り越えて、反対側に行く人。日本ではトランスジェンダーを性同一性障害(GID:Gender Identity Disorder)、性別違(Gender dysphoria)と訳したり、同義語と考えている人が多かったりしますが、トランスジェンダー=性同一性障害(性別違和)ではありません。さらに言うと、LGBはどの性を愛するか、好きになるかを表現していますが、Tは自分の中の身体的性別と社会的性別の不一致を表現しています。すなわち、同じTでもLもGもBもいるということです。ということであればそもそもLGBTという言い方自体に問題がある、というか誤解、混乱を広げることになると思いませんか。

●『ジェンダー(社会的性別)とは』
 「ジェンダー」のように時代とともに考え方、整理のされ方が変化する概念を理解する上で、意外と便利なのがWikipediaだとあらためて思いました。もちろんそこに書かれていることを全部鵜呑みにするわけではありませんが、Wikipediaなどを参考に岩室なりに整理してみると次のようになりました。

 ジェンダー(社会的性別)とは、社会や文化、時代の流れの結果として生まれた、「男らしさ」、「女らしさ」という考え方、価値観。生まれ持った身体的性別(男性、女性)に対して、その人の社会的役割、思考、行動、あり様がいかにあるべきか、あることがふさわしいか、という考え方、価値観をいう。

 昔は「女性は家庭に入り、子どもを産み育てる」というのが社会的多数派の価値観だったのが、女性の社会進出や育メンという考え方が出てくるなど、「ジェンダー(社会的性別)」は時代とともに変わっています。

○『性同一性障害は医学病名』
 正直に言うと、岩室も「トランスジェンダー=性同一性障害(性別違和)」と安易に考えていた時期がありました。さらにLGBTという言葉を多くの人が安易に使う時代になったからこそ、ここで今一度整理しておく必要があります。
 性同一性障害(性別違和)は医学病名だということが重要なポイントです。身体的性別(男性、女性)についてくる社会的性別がご本人の中で一致しないために違和感、不全感を持っている人のことを言います。病名というぐらいですので、当然のことながら治療を希望される方がいます。MTF(Male to female)身体的性別が男性だった人が女性になる場合もあれば、FTM(Female to male)身体的性別が女性だった人が男性になる場合もあります。

●『トランスジェンダーは性同一性障害を包含』
 自分が生まれもった身体的性別(男性、女性)と、生まれた後に経験する、自覚する社会的性別(男らしさ、女らしさ)が一致しない人をトランスジェンダーと呼んでいますが、身体的性別と社会的性別が一致していなくても、ご本人の中に違和感が生まれず、そのまま生活し続けている方もいます。性同一性障害(性別違和)と診断されない、すなわち身体的性別は男だけど社会的性別は女としてその人なりに女らしく生きていて、身体を変えたいとは思わない人もいます。すなわち、トランスジェンダーとは身体的性別と社会的性別が一致していない人のことであって、必ずしも性同一性障害(性別違和)という病名が付く人だとは限りません。

○『ジェンダークィア』
 一方で自分の身体的性別とは関係なく、社会的性別が男性でも、女性でもどちらでもないと思っている人をジェンダークィア(Gender queer)と呼びます。生まれ持った身体的性別とある意味その時代の社会が押し付けてきたジェンダー(社会的性別)に対して一番大事なのが自分の気持ちの性別、すなわち性自認がどうかということを教えてくれているのがジェンダークィアの方々だと思いませんか。

●『ゲイでも、バイでも、ストレートでもない』
 今回、このようにLGBTについて改めて掘り下げようと思ったのには、自分自身の浅はかさからきた経験がきっかけでした。HIV/AIDSの診療をしていると、ゲイやバイセクシャルの方との接点が多く、自分なりにきちんと向き合っている、向き合おうとしているという自負がありました。トランスジェンダーについても性同一性障害(性別違和)の方の診療も行っていますので、それなりに理解しているつもりでした。
 ところが少し前、HIV感染が判明した男性が受診された際に、「ゲイの方ですか」と聞いたところ「???」という感じの反応でした。なぜストレートな表現で「ゲイの方ですか」と聞くかというと、私自身が「ゲイ」ということに違和感がないことを伝え、その後の性生活についてもきちんと話ができるような関係性を構築しようという思いからです。
 「ゲイ」で「???」だったので「バイですか」と聞いたらますます「???」という感じでした。
 詳しく話を聞いてみると、それまでずっと女性と付き合ってきたのが、一人の男性と出会い、夢中になってしまったそうです。その彼に対して、私は「ゲイ」か「バイセクシュアル」か「異性愛者」かといった枠にはめた質問をしていたことに、私自身の未熟さを感じました。

○『人は経験に学ぶ』
 これまでLGBTという言葉を何気なく使っていた自分でしたが、気が付けばあいまいな思いでLGBTの方々と向き合っていたのだと思い知らされました。
 人は経験に学ぶ。経験していないことは他人事。
 今回の経験に学び、これからも少しでも成長し、いろんな人のお役に立てるようにしたいと思っています。次はどのような経験をいただけるのでしょうね。これからも失敗経験を積極的に受け入れ続けたいと思っていますのでよろしくお願いします。