紳也特急 234

~今月のテーマ『マスクと薬と予防接種で広がるインフルエンザ』~

●『ひきこもりの方とのやり取り』
○『何バカなことを』
●『医者も勉強しよう』
○『マスクで広がるインフルエンザ』
●『抗ウィルス薬で広がるインフルエンザ』
○『予防接種でインフルエンザが広がる理由』
●『で、どうすればいい』

…………………………………………………………………………………………

●『ひきこもりの方とのやり取り』
 ひきこもりの方とメールのやり取りをしたことはありますか。もしあるとすれば、その時、何を考え、何を求めてやり取りをされていますか。実は私はひきこもっている方とやり取りをしながら、いつも楽しい思いをさせていただいています。

 何でそう考えるの?
 何でそうなるの?
 でも、それってありだよね。
 みんなとあなたはどこが違うの?

 多くの人は「ひきこもりの人との関り」というと、どうすればその人を社会に引っ張り出せるかを考えると思います。しかし、私はそんなことを全く考えないまま、いろんな新しい気付きをもらいながら、楽しくやり取りをさせていただいています。もちろん、その方から「引きこもりを解消するにはどうすればいいかのアドバイスが欲しい」という質問も来ますが、そんな時、「正解を返そう」ではなく「どうして正解を求めるのだろうか」とまた逆突っ込みをしています。ま、その逆突っ込みに懲りずにやり取りを続けてもらっているのですが、そんな中、今回、新たな発見がありました。
 皆さんはメールへの返信に送られてきたメールを入れて返しますか。返信だけでタイトルを変えずに返しますか。それとも、タイトルも変更し、送られてきた内容を残さないで返しますか。
 インターネットのルール、常識があるかわかりませんが、「返信」だけで送った内容を入れて返す人が少なくありません。Googleのgmailはただの「返信」で返すと、やり取りされたメールが一体のグループとして認識される機能もあるためか、その方法で使っている方も多いようです。しかし、私は基本的にタイトルも変え、相手方のメール内容をそっくりそのままで残さないようにしています。もちろん、「この書き込みについてこう思います」と言いたい場合は別ですが。新たに書くからこそ今、私が伝えたいことが何かがきちんと伝わると思ったからです。
 今回ご紹介しているひきこもりの方とのやり取りには二つのパターンがありました。タイトルも変え、送ったメールを引用しない方法と、タイトルも変えず、メール内容も含めた返信が来る場合がありました。岩室が書いた言葉へのこだわりがあり、思わず「そのまま返信」となるように感じました。一方で、多くの場合は、こちらが送ったメールを咀嚼した上で、自分の意見を送ってくださっていました。すなわち、余裕がある時は相手が何を言おうが、相手の言葉を受け止めた上で、自分はどう考えているのか、どうしたいのかを言えればぶつかることはありません。
 他人が言っていることを受け止められないと、「反論」、「否定」、「無視」、「排除」、「離別」といった手段に出て、気が付けばひきこもっていることも少なくないのではないかと思ったりしました。皆さんは自分が理解できないことを言われた時、どのように対処されているでしょうか。「反論」、「否定」、「無視」、「排除」、「離別」と言う選択肢を選んでいないでしょうか。それとも「咀嚼」、「反芻」、「受容」を含めた対応をされているでしょうか。そのテストケースとして今月のテーマを「マスクと薬と予防接種で広がるインフルエンザ」としました。

『マスクと薬と予防接種で広がるインフルエンザ』

○『何バカなことを』
 「マスクと薬と予防接種で広がるインフルエンザ」などと言うと、「岩室紳也は本当に医者か?」と言われそうです。というかここまで読んだ方の中に「???」と思いながら手を自分がしているマスクに持って行っている人がいると思います。この時期の研修会ではマスクをしている人が多いのですが、私がマイクを向けると、多くの人は「マスクをしたまま返事をするのは失礼」と思ってか、マスクの真ん中を持ちながらマスクを引き下げ、礼儀正しく返事をしてくださいます。その時、岩室紳也は「マスクを触らないでください。インフルエンザに感染しますよ」と心の中で叫んでいます。

●『医者も勉強しよう』
 今回の原稿の内容を岩室から聞いていた人が、かかりつけのお医者さんに「インフルエンザを予防するにはどうすればいいか」を聞いたら「マスク」とのこと。「マスクは意味がないという医者もいますが」とさらに振ったら東京大学を出たというその先生は「そんなのはヤブ」とバッサリ。でもその先生は本当に感染症を知っているのでしょうか。おそらく私のHIV/AIDSの患者さんを紹介すると「診療経験がないから」と断ることでしょう。
 実は私のHIV/AIDSの患者さんは施設等に入るにしても、あまり問題は起こっていません。「なぜ?」と聞かれることが多いのですが、それは「治療をしているHIVを持っている人は他人に感染させる力がないから」と言い続けてきたからですが、最近、世界中でU=U、すなわちundetectable(検出されない)ということはuntransmittable(感染させない)ということだとわかってきました。でも、先入観を覆すことはすごく難しいことだとインフルエンザが教えてくれています。

○『マスクで広がるインフルエンザ』
 インフルエンザの感染経路は「接触感染」と「飛沫感染」です。「飛沫」は「しぶき」と読むように、「ハクション」とくしゃみをした時に飛ぶ「しぶき」が感染する原因だということを示しています。大事なことは「しぶき」には重量があるということです。皆さんも自分ですごいくしゃみをし、しぶきをばらまいた時に、そのしぶきが落ちていくのを見たことがあると思います。実は「飛沫(しぶき)」は2メートルぐらいしか飛びませんし、飛び出したら重力で落下し、机、家具、床に付着します。
 インフルエンザに感染するのは、口、のど、鼻にある粘膜にインフルエンザウィルスが付着した時です。もちろん至近距離でくしゃみ(飛沫)をかけられたときに口を開いていたりすれば喉の奥にインフルエンザウィルスが飛び込み感染することがあります。しかし、飛沫感染は実は少ないのです。当たり前のことですが、他人にくしゃみをひっかけられる場合はそう多くはないですよね。
 ところが飛沫が落下して付着した机、家具、床に触れればあなたの手にインフルエンザウィルスが付着します。ということは人がいるところで生活している人は、ほぼ全員、自分の手にインフルエンザウィルスを付けているということです。その手で「予防」のつもりで付けているマスクに触れれば、マスクの表面にインフルエンザウィルスが付着します。飛沫の水分が乾燥すれば、インフルエンザウィルスは吸い込まれやすい状況になるため、吸い込まれ、のどに付着し、インフルエンザに感染します。いかがでしょうか。

●『抗ウィルス薬で広がるインフルエンザ』
 世界で一番抗インフルエンザウィルス薬を使っているのが日本です。しかし、日本が一番感染率が少ないという話は聞きません。当たり前のことです。確かにタミフルにはじまり、最新のゾフルーザ等々、抗インフルエンザウィルス薬は多く、服用すると症状も急激に改善し、患者さんは楽になります。薬の副作用の議論もありますが、それはさておき、薬を飲んで、症状が治まったらあなたならどうしますか?
 文部科学省はインフルエンザと診断されたら「発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後二日を経過するまで」出席停止、登校禁止としています。しかし、社会人に対してその拘束力はありませんので、皆さんは仕事に、買い物に行きますよね。しかし、感染した人は症状が治まってもウィルスの排出は続いているため、その人はインフルエンザウィルスを拡散中ということになります。

○『予防接種でインフルエンザが広がる理由』
 今年はインフルエンザに感染している人が過去最高になりそうとのこと。だから症状を和らげるためにも今から予防接種をと言っている先生がいます。もちろん患者さんのことを考えれば適切なアドバイスだと思います。しかし、症状が軽ければその人は医療機関でインフルエンザに感染しているという診断を受けないまま外出するでしょう。でもしっかり感染力はあります。すなわち、本人は楽になっても、実はインフルエンザを広げる役割を担うことがあります。

●『で、どうすればいい』
 結局のところ、「接触感染」を防ぐしかありません。だから、以下のことを守りましょう。

1.(自分がくしゃみ、咳をしている場合以外は)マスクはしない
2.特に子どもにはマスクをさせない。
3.(他人がインフルエンザウィルスを付着させた可能性があるところ)蛇口等はつかわない。
4.手で顔を触らない。
  この中で、一番現実的な対応が「マスクをしない」ではないでしょうか。

 「反論」は大いに期待していますが、単なる「否定」や「無視」で終わってしまうと先に進みません。また、この程度のことで「排除」、「離別」が生まれるのはもったいないです。ま、日本人はお金があるのだから「無駄」も大事なのかもしれませんが(笑)。