紳也特急251号

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■■■■■■■■■■■  紳也特急 vol,251  ■■■■■■■■■■
全国で年間200回以上の講演、HIV/AIDSや泌尿器科の診療、HPからの相談を精力的に行う岩室紳也医師の思いを込めたメールニュース! 性やエイズ教育にとどまらない社会が直面する課題を専門家の立場から鋭く解説。
Shinya Express (毎月1日発行)
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~今月のテーマ『新型コロナは性感染症』~
●『夜の街』
○『性を語れない日本』
●『キスでうつる新型コロナ』
○『夫婦間感染は仲がいい証拠』
●『正確に伝える意味』
○『キスをしてもうつらないために』
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●夜の街
 街の灯りがとてもきれいねヨコハマ、ブルーライト・ヨコハマ。
 東京で一つ、銀座で一つ、若い二人がはじめて逢った、ほんとの恋の物語。

 ちょっと古いですが、夜の街はこれらの歌を生んだ日本の財産ではないでしょうか。
 ところが都知事だけではなく、マスコミも新型コロナウイルス感染で「夜の街」、「接待を伴う飲食」、「ホストクラブ」、「キャバクラ」といったことを盛んに叩いています。まるでそれらがなければ日本から新型コロナウイルスを除去することができるかのような勢いです。その一方で、なぜそれらの環境の中で新型コロナウイルスが広がっているのかについての詳細なコメントや情報提供が行われていません。では一番の感染経路は何でしょうか。

 3密(密閉空間で換気が悪い、近距離での会話や発声、手の届く距離に多くの人がいる)→No
 飛沫感染→No
 エアロゾル感染→No
 接触(媒介物)感染→No
 何を隠そう、「キス」だったのです!!!!!!

 そこで今月のテーマを、「新型コロナは性感染症」としました。もっとも、正確に言うと新型コロナウイルスは性感染もするウイルス、ということですが。

新型コロナは性感染症

○性を語れない日本
 「夜の街」、「接待を伴う飲食」、「ホストクラブ」、「キャバクラ」といった抽象的な表現ではなく、はっきりと「新型コロナウイルスはキスでうつるのです」と言えばいいのですが、それが言えないのが日本人、日本のマスコミのようです。まるで、エイズパニックの頃のように、いや今でもそうかもしれませんが、性に絡んだ話をするのが本当に苦手です。HIV/AIDSで世間がパニックだったころ、岩室はシンプルに「HIVに感染するのはセックス。だから感染を予防するにはノーセックスかコンドーム。このシンプルなメッセージでいいんです」と訴えていたら、ひどいバッシングに遭いました。「思いやりが大事」、「セックスを奨励しているのか」、「コンドームを使えば誰とでもセックスをしていいのか」とわけがわからない反論ばかりでした。でも、今回の新型コロナでも同じようなことが起きています。日本人はやはり性に関わる言葉を口にできない国民なのでしょう。

●キスでうつる新型コロナ
 ホストクラブでの感染拡大を機に「エレチュー」という言葉が一般の人に知れ渡りました。エレベーターの中でチュー(キス)をすることですが、大事なことは何故キスで新型コロナウイルスが感染するかということです。流行の初期の頃から、新型コロナウイルスはのどや鼻にいて、咳や大声で飛び出した飛沫やエアロゾルに含まれたウイルスが直接感染していない人の鼻やのどに入ったり、落下したウイルスが食べ物などを媒介としたりして、のどの奥に持ち込まれて感染が成立すると言われていました。一方で「唾液でPCR検査」というのを聞いたことがあると思いますが、唾液中にも多くの新型コロナウイルスが存在します。キスをするとお互いの唾液の交換が行われるので、感染している人の唾液の中のウイルスが感染源になるのです。

〇夫婦間感染は仲がいい証拠
 これまでも、都内在住者から帰省先の「友人」、「知人」が感染したということは繰り返し報道されていましたが、その際にキスでうつった可能性に関する報道はありませんでした。正直、私も新型コロナウイルスが広がり始めた当初からキス、唾液で感染するということをほとんど意識することも、発信することもありませんでした。しかし、発信しなければと思っていた矢先に「夜の街」報道が始まりました。
 「夜の街」の前に考えなければならないことは、夫婦や恋人のどちらかが新型コロナウイルスに感染してしまった場合、相手にうつしてしまう可能性が高いことです。皆さんは自分の大事なパートナーに感染させたいですか。冗談じゃないですよね。でも、「新型コロナウイルスはキスでうつる」ということを知らないと感染させてしまう可能性があります。もちろん知らない内に感染していて、無症状のため、自分自身の感染に気付くこともなくパートナーに感染させてしまうということは十分考えられます。でもパートナーがウイルスをもらってしまうというのは仲がいい証拠とも言えます。

●正確に伝える意味
 「新型コロナウイルスはキスでうつる」と知った人はどのような行動をとるでしょうか。

 キスをしない
 パートナー以外とキスをしない
 お客さんとキスをしない
 ホスト、ホステスとキスをしない
 キスをした後、2週間は他の人とキスはしない

 いろんなことを考えると思います。しかし、知らないと、ついパートナー以外の人とキスをしたり、「ま、いいか」と「夜の街」で遊んだり、罪滅ぼしとか言っていつもはしないチューをしたり、と感染拡大につながります。だからこそ、事実を、科学的に、正確に伝えることが必要です。

〇キスをしてもうつらないために
 では、どうしてもキスをしなければならない時に、でも感染予防はしたいと思った時にできることはないのでしょうか。キスでの感染を100%予防するにはキスをしないしかありません。でも、キスで感染するリスクを少しでも減らすためにできることはあります。考え方は至ってシンプルです。自分が感染していない場合で列挙しますが、逆は自分が感染している可能性がある時にできることになります。

1.口の中に入るウイルス量を減らす
   ディープキスを避ける
   キスの前に相手に水分を飲み込んでもらい、口の中のウイルス量を減らす
2.口の中に入ったウイルスを早く出す
   キスの後にうがいをする
3.口の中に入ったウイルスを早く胃の中に流し込む
   キスの後に水分を飲み込む

 どれも確実ではないですが、しない場合よりは感染するリスクを減らせるのではないでしょうか。さらに言うと、このような情報を伝えることで新型コロナウイルスが実は身近な問題なんだと感じてもらうことが重要だと思っています。皆様も気をつけましょう。

 

2020年7月1日