紳也特急 262号

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■■■■■■■■■■■  紳也特急 vol,262  ■■■■■■■■■■
全国で年間200回以上の講演、HIV/AIDSや泌尿器科の診療、HPからの相談を精力的に行う岩室紳也医師の思いを込めたメールニュース! 性やエイズ教育にとどまらない社会が直面する課題を専門家の立場から鋭く解説。
Shinya Express (毎月1日発行) 
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~今月のテーマ『国民が見抜く中、次なる対策は』~

●『一般の方からの質問』
○『専門家って何?』
●『鋭い疑問との対話』
○『質問者の感想』
●『一緒に考える対話の大切さ』
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●一般の方からの質問
 2児の母親です。岩室先生を知ったのは、私の妹がとても優秀な医療者で岩室先生を常日頃尊敬している話を聞いていたからです。
 ある専門医は、子どもは感染の中心ではないと仰っているのにも関わらず、推奨と称して半強制的に学校生活、屋外で遊びときもマスク着用をさせています。マスクによる精神的肉体的ダメージがあることも知らない保護者が沢山おり、報道されることは一切ない現実。
 コロナは怖くない病気だとは決して思っていません。医療者は本当に毎日大変な思いをされているのは分かっています。しかし、医療逼迫が騒がれる中で、サラリーマンは減給、倒産の不安。子ども達はマスク、除菌の徹底で基礎免疫力の低下や顔が見えない生活で、他人と距離を置くことに慣れる大人になってしまう不安、赤ちゃんは生まれた世界はマスクだらけ、口元を見てコミュニケーションを学べない。慢性的な酸素不足。子ども達のマスクによる弊害は隠れた場所で出ている、または数年後に出てくるかもしれない。学生は就活の不安やバイトを減らされ学費が払えない、実家に帰れない。このコロナ騒動は自分や大切な人の命を守るためにやっているのに、自殺者が増えたり、職を失う人が増えたりしたら本末転倒です。どうして多くの国民が今の状況に疑問を持ったり声を上げたりしないのでしょうか。こうなってるのもコロナだからしょうがない、で良いのでしょうか。
 この世の中にはコロナにかかるかもしれない、以外にも事故にあうかもしれない、物を喉に詰まらせるかもしれないなど、かもしれないで溢れています。それなのに、大切なものを失ってまで、コロナをこんなにも恐れ続けることは正しいのでしょうか。テレビでは日々感染者数、自粛、のことしか報道されません。マスクによるダメージや子ども達のこと、PCR検査とはどんなものか、PCR検査陽性者が必ずしも感染者ではないこと、などあげたらキリがありませんが、もっとそのようなことを多角的に報道したり、声を上げたりする方が増えて欲しいとおもうのは、間違っていますか。
 コロナで死ぬのは駄目で経済で死ぬのは良いとか、医療者を守るためにも今は我慢の時だ、とか、そんな感情論な話ではなく、もっと多角的にこのコロナのことを考えないと、子ども達や若者の未来が明るくならないと思わずにはいられません。ぜひ岩室先生のお考えや意見を聞かせて下さい。そして納得したり、さらに考えたりするきっかけにしたいです。
 
 ボリュームを少し削らせていただきましたが、失礼ですが素人の方でもここまで、的確に事態をとらえておられることに勇気をいただきました。そこで、今月のテーマを「国民が見抜く中、次なる対策は」としました。

国民が見抜く中、次なる対策は

〇専門家って何?
 新型コロナウイルスが教えてくれた一番大事なことは私を含め、「専門家」と称する人ってどのような素晴らしい、素人にはない知識、見識、見解、意識、能力、判断力を持った人か、ではなく、単に資格を持った人であったということではないでしょうか。少なくとも、今回ご質問いただいた方は現状を非常に的確にとらえておられますが、多くの専門家もマスコミもこのような視点で発信していません。するどいご質問を参考に、いま、一人ひとりが考えるべき方向性を再確認してみました。

●鋭い疑問との対話
 今回、あらためてリスクコミュニケーションの大切さを実感させていただきました。コミュニケーションの語源は「わかちあう」です。決して「わかりあう」のではなく、それぞれの視点を共有することが重要です。なので専門家とされる岩室は「返事」、「答え」を返すのではなく、あくまでも質問者の方の鋭い質問に自分の思いをお伝えする「対話」をさせていただきました。

1. 新型コロナは治療薬が無いから怖いのか
 「怖い」の基準は難しいです。正しく恐れる、怖れるという言葉もありますが、岩室紳也は怖くないです。人は亡くなる時は亡くなりますし、悲しいことですが、そうなった時はその事実を淡々と受け入れるしかありません。ただ、見方を変えると、新型コロナウイルスの感染経路と予防策ははっきりしているので、そういう意味では怖くないとも言えます。むしろ専門家と称する感染予防の素人さんたちが好き勝手なことを言っていることの方が「怖い」です。

2. 恐れる程の死者数、死亡率なのか
 私の患者さんも重症化しましたし、ECMOのお世話になりつつも幸い回復されました。その経過を見ると他の肺炎等よりは早く劇症化します。若い方でもそのような事例がありますし、全国的に見れば既に20代が7名、30代が22名亡くなっています。「恐れる」とかではなく、その事実を認識しつつ、一人ひとりが淡々と、公衆衛生医は考えられる予防方法を発信し、各自は自分ができる予防方法を確認し続け、医療者は最新の治療方法を実践し続けることが重要です。

3. 大阪を例に挙げると飲食店はクラスター割合2%、高齢者障害者施設施設や病院が70%となっているが、どうしてマン防などと2%の飲食店を重点的に対策しようとするの
 感染症対策を含め、健康づくりでハイリスクアプローチ、早期発見早期治療、ダメな人対策で上手く行ったものはありません。一方でクラスター潰しという言葉を聞くと多くの一般の方だけではなく、公衆衛生をきちんと勉強していない人はその方向性を支持します。そもそも飲食店とか、高齢者障がい者施設といった感染機会をターゲットにすること自体が問題です。そこで、どのような感染経路で感染拡大が起こったかを検証し、一人ひとりが対策を講じることが重要ですが、相変わらず感染経路が含まれていない「3密」という言葉が使われています。
 ちなみに高齢者のワクチン接種が進んでいますが、本当に施設でのクラスターを予防したいのであれば、まずはそのような施設の職員にワクチンを打つべきではないでしょうか。

4. 指定感染症から外せば、民間病院で診たり、インフルなどと同様に自宅療養が出来、医療が逼迫しないのではないか
 残念ながらもっと深刻な診療拒否が起こる可能性があります。実際、私のHIVの患者さんが診療拒否に今でもあっています。「私たちは診る能力がありません」といえば堂々と診療拒否ができるのが日本の医療制度の実情です。でも、2類相当だと行政が責任を持たなければならないので多くの医療機関に診療体制、ベッドの確保を要請できますので痛し痒しです。私も当初は5類でと思っていましたが、しばらくは行政がきちんと責任を持つ体制がいいようです。

5. 変異株の感染力について
 変異株の話をすること自体、予防の観点から考えると意味がありません。感染経路は変わらないので、感染力が高まろうか低くなろうが、やらなければならない予防策は同じです。

6. ワクチンが普及したらマスクは外せるのか、普通の生活を取り戻せるのか
 ワクチンは重症化予防効果しか確認されていません。マスクを外すこととは無関係です。子ども達だけではなく、そもそも、大人もどこまでマスクが必要かを考える必要があります。私は大人もちゃんと咳エチケットを徹底すればマスクはいらないと思っています。実際、街中を歩く時、私はノーマスクです。一方でお子さんが体育の授業中にマスクをしていたからと考えられる死亡事故がありました。このお子さんの死を無駄にすることなく、しっかりと議論をしたいものです。
 意外と見落とすマスクの真実
 https://vimeo.com/541441821

7. PCR検査の正確性について
 私はHIV感染症のPCR検査をやっていますが、コロナは採取方法の問題もあり、まだまだ精度が低いと考える必要があります。もちろん一定の意味はありますが、抗体検査を含めて考えて使う必要がありますが、必要な事例でもそこまでトータルで組み合わせた報告はほとんどありません。

8. 感染者(無症状者含む?)が他人に感染させる確率は2割以下と厚労省のホームページにあるが
 このデータは意味がないと思います。感染している人のウイルスが他人の体の中に入れば感染しますので、確率の問題を取り上げても意味はありません。「恐れる」とか「恐れない」ではなく、できることを一つずつ積み上げ、万が一感染したらその事実を受け入れるしかありません。

9. 他の死因は一年毎にリセットされるのになぜコロナはいつまでも累計なのか
 いろんな古い記述に振り回されず、ご自身で何が科学的な事実化を考えてください。コロナ問題も、オリンピック問題も完全に政治ネタになっています。その中で私はできることを積み重ねるだけです。

10. 自殺者、しかも若い世代が増加
 若者の自殺の増加はは現場で感じています。2021年3月にお邪魔した二つの中学校で生徒さんが自殺していました。でも、多くの人は他人ごとです。私は公衆衛生の立場から「感染症」も「自殺」も同し予防の視点で同時に取り組んでいます。公衆衛生では当たり前の視点ですが、感染症専門医は感染症と自殺の関係について深く対策を含めて突き詰めて考えたこともないでしょうし、予防のために何をすればいいかに思いを馳せられないと思います。少なくとも公衆衛生をきちんと勉強するまでの岩室もそうでした。もちろん感染症専門医に自殺対策を求めるつもりもありませんが、だからこそ謙虚に予防が専門の公衆衛生医にバトンを渡し、わかったような発言を控えていただければと思っています。

〇質問者の感想
 淡々と向き合うことの大切さ、理解しました。あまりこのような意見のお医者様に出会ったことがなく、こういう答えを求めていたと目から鱗でした。変異株で学校でクラスターとの報道が過剰にされ出しているので、また休校になるのかと思うと、子供を守るために行なっている対策も、子供達を苦しめる結果にならないと良いのですが。
 コロナ禍なので仕方がないと多くのことを我慢したり制限したりしていますが、これ以上、今しかない子ども達の自由を奪わないで欲しいと願うばかりです。
 先生のご回答、参考にさせていただき、コロナとの向き合い方、これからも周りに流されずに自分で考えて生きていきたいと思います。

●一緒に考える対話の大切さ
 このパンデミックが始まった頃から岩室が書かせていただいていることやHP等で発信していることとマスコミが発信していることを比較してくださいと言い続けています。私の発信は岩室理論でもなければ、特定の人を否定するものでもありません。淡々とウイルスと向き合ってきた結果をお伝えしているだけです。そして、そのことを受け止めてくださる方との対話を続けることで、結果的に本当の意味でウイルスと共生する社会になると期待しています。