紳也特急 28

〜今月のテーマ『性感染症は防げない?』〜

●『日本エイズ学会』
○『性感染症は防げない?』
●『コンドームを着ければいい!』
○『初めてのセックスするまで何年生きてきたの?』
●『大人こそ防ぎきれない』
○『性感染症は防げない』
●『性教育の目標を見直そう』
○『後悔しないための性教育』

◆CAIより今月のコラム
「冬といったらやっぱり星空☆=」
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●『日本エイズ学会』
 12月1日は世界エイズデーです。全国各地でエイズ関連のイベントが開催されますし、私もCAIやエイズ予防財団のイベントに参加させていただきます。それにしても、エイズに対する世間一般の関心は年々低下していますね。公衆衛生関係ではエイズ対策が目玉の一つにならければならないのに、12月1日にエイズ以外のことでどれだけ多くの行事が組まれていることか(笑い)。確かに12月1日だけを特別視するより、毎日がエイズデーというようになればいいのかもしれませんが、どうしてこんなにエイズに関する関心が低下したのでしょうか。今日のイベント会場で「自分はHIVに感染しないと思っている人手を上げてください」という私の質問に、かなりの人が、そして中には専門職と言われる人が手を上げるのでしょう。その人たちは、自分がしている(?)セックス、薬物の回し打ちではうつらないと思っているのでしょうが、イベントからの帰り道で交通事故にあって輸血を受けて感染する可能性があります。でも、輸血で感染するかもしれないという意識、実感が皆さんにはないようです。先月、高松で行われた公衆衛生学会でも自分が受ける輸血のリスクを減らすよりも、HIV検査目的で献血する人がパートナーにうつすのを予防する方を優先させるべきだということをまじめに発言している方がいました。人生観の相違でしょうか。
 このように何となくめげている私を見透かしたような励ましの言葉をHIV(+)の方からいただきました。『性行動の多様化が進む中で、この領域に科学的なアプローチをしている研究は医療、心理、社会、教育など、いずれの分野でも極めて希です。ましてや予防医学などには社会防衛的な発想で全体を禁欲的な方向に導こうとする意図が露骨なものも多く見られます。そんな中、予防の視点から、精力的に講演などで実践的なセックスについて若い人たちに語る岩室先生の活動は極めて貴重です。』と。そうなんだ!!!!!!!!!!!!!!!!! 禁欲ができないから難しいんだ、と妙に納得してしまいました。「コンドームを着けるかノーセックスならHIV感染は防げる」と理屈ではわかっていても、それは所詮理屈です。人間理屈どおりに生きていけないから「人間」なのでしょうね。そうか、禁欲と無縁の人がエイズ対策を考えているから効果がないんだ、とへんに(実はこれが真実???)納得してしまいました。
 そこで今月のテーマは「性感染症は防げない?」としました。

○『性感染症は防げない?』
コンドーム使用率が約60%だから早急な予防介入が必要
 今年のエイズ学会の演題でこのような指摘がありました。そうだ、その通りだと私も思います。しかし、このデータは1994年の国際エイズ会議で私が発表したことと同じです。私の発表は現役の高校生を対象にしていました。この7年間何も変わっていないというのが現実でしょうが、「そんなデータよりもどうすればいいのかを研究してよ」といいたいです。これは私の課題かも。
 コンドーム使用率を上げるための努力をここ何年もしてきたつもりです。確かに少しずつ状況が改善し、私のコンドームの達人講座を求めて講演依頼も増えています。相変わらず講演会は多く、先日も午前(中学校)、午後(全日制高校)夜(定時制高校)と日に3回話していました。確かに生徒に話した後で「コンドームをするようになった」という声も多く聞きますが、全国的に見ればまだまだコンドーム教育は進んでいないのも事実です。

●『コンドームを着ければいい!』
 では、コンドームを着ければいいのでしょうか。コンドームを着けても防げない性感染症もありますが、セックスをすると自分で決めた以上(ここが意識できるかが大切)、コンドームのことを思い出し、結果的に着ければ問題はないと思っています。例えその人たちが選んだセックスがいわゆる「愛」に裏打ちされたものではなくとも、行きずりのものであっても。コンドームを着ければ望まない妊娠も防げます。妊娠と性感染症予防以外のセックスの課題(そんなのがあるのかはわかりませんが)まで介入できるほどの立場でも人間でもないと思っています。

○『初めてのセックスするまで何年生きてきたの?』
 コンドームの話を中学生にしたのを聴いた大人の方が、「中学生、高校生がコンドームを着ければセックスをしてもいいと思っているのですか」と聞いてきました。よくある質問ですが、論理の飛躍がないでしょうか。「セックスをしていいか悪いか」と言われてもセックスをするのは当人達の判断であり、その判断基準が出来上がるまでの十数年間の育ちに一介の保健所の医者、あるいは学校の教師が介入できるほど薄っぺらい人生を彼らが生きてきたとは思えません。確かにまだ判断能力が一人前ではなかったり、家庭的にも恵まれていなかったり、人生に対して悲観的になっていたり、勢いや惰性だけでセックスをしていたりするのかもしれません。それでも何かを感じ取ってもらえるよう努力すれば、「なんとなくセックスをしていた自分」を見つめなおし、コンドームを他人任せにしないで自分も考えるようになる子供もいます。

●『大人こそ防ぎきれない』
 若い人の話はひとまず置いておいて、成人した、責任能力があるとされる20歳以上の人はどうでしょうか。目の前に次のような状況があったとしたら、あなたはどうしますか。もちろんコンドームが手元になく、相手がHIVや性感染症に感染しているか否かはわかりません。
1.大好きなパートナーと初めてセックスができる
2.知り合いと飲んだ後何となくセックスをする雰囲気になった
3.結婚してもいいと思っているパートナーといいムード
4.恋愛結婚して、今までコンドームで避妊していたがそろそろ子供が欲しい
 こんな状況でエイズ検査や性感染症のチェックをしないでコンドームなしのセックスをしてしまう「あなた」はいないのでしょうか。「相手を大切に思えば思うほど、相手を疑うことができなくなるし、かと言って相手に確かめる勇気もないから、結局、覚悟を決めるしかないんですよね。どうなっても自分の責任だって。」と感染した友人は教えてくれました。

○『性感染症は防げない』
 最近、HIVに感染している人に会うたびに「岩室紳也が感染していないのはただラッキーなだけだ」と思います。今のようにHIVが蔓延している時代に自分が10〜20代の男として生きていたらHIVに感染するリスクは非常に高かったと思います。当時はコンドームもちゃんと使えない、使おうと思っても持っていなかった検査を受けようという意識もない。自分自身がそうなのに、人に予防ができるという考え方や検査を受けましょうというプレッシャーを押し付けることはかえって罪悪だと思うようになりました。
 「性感染症は防げる病気です」と呼びかけ過ぎるほど、それが出来ない人、出来ずに感染してしまった人を否定していないでしょうか。むしろ、「性感染症は防ぎにくい病気です」、あるいは「性感染症は防げない」くらいのメッセージと共に、コンドームの有用性と限界、子供をつくる前に検査を受ける、といった情報提供をする。検査を受けやすいようにする、献血でのエイズ検査結果は告知しない、といった環境整備をするだけでよいのではないでしょうか。

●『性教育の目標を見直そう』
 「望まない妊娠や性感染症予防」が性教育の目標になっている場合があります。望まない妊娠をしないこと、性感染症に罹患しないことはその人にとって幸せなことでしょう。しかし、それが性教育の目標になると、望まない妊娠をしてしまった人、性感染症に罹患してしまった人が目標から脱落した人、だめな人になってしまいませんか。いろんな人がいるからこそ「社会」なのです。学校は社会生活を送るために必要な知恵と知識を伝えるところです。多様な人を受け入れる社会づくり、一人ひとりが後悔しない、現状を受容できるようになることが目標にならないとおかしいですよね。

○『後悔しないための性教育』
 HIV(+)のパト(週刊SPA!に連載を持っている私の友人です。SPA!の12月中旬号に私の診療風景がでます。ヨロシク)がよく、「反省はするけど後悔はしない」といいます。自分で決めたことだから後悔はしない。でも、こうすればよかったという反省点があれば次回に活かす。人は誰でも時間を巻き戻したいと思うことがあるはずです。しかし、巻き戻せない時間に対して他人からとやかく言われたくないですよね。あきらめられる、後悔しないでいられるのは自己決定、自己責任の末の結果に対してです。自分で決めたことだから人に文句をいってもしょうがない、とあきらめられる、そして周りもそのことをとやかく言わないようにしてあげたい。

私はこう思っています。あなたは?

◆CAI編集者より今月のコラム

「冬といったらやっぱり星空☆=」
冬空は寒くて上空の水蒸気が少ない分、夏よりはっきり星が見えるのです。特に11月19日のしし座流星群は天文マニアだけでなく一般の人々も巻き込んで真夜中の一大イベントになりました。ふん!と思って・・・または忙しくてそれを逃してしまった人にも、まだチャンスはあります。
肉眼で観測できる3大流星群のひとつ、ふたご座流星群が極大になる(いっぱい落ちる)日が12月14日に迫っています。
国立天文台の発表によると今年は好条件で「一晩中見え、1時間10個〜30個は見られると思われる。」ということです。
方角は東北東。
見たことない!という方、ちょっと気合を入れて、厚着して、流星群をとえてみては☆

                               (Y.K♀)