紳也特急 52

〜今月のテーマ『飯島愛とエイズを語る』〜

●『あの先生は極端だから』
○『女子高生からのメール』
●『プラトニックセックスは名著』
○『先生はコンドームをつけているの?』
●『コンドーム使用は疑いの目?』
○『エイズ検査を受けよう』
●『エイズは身近な問題?』
○『コンドームの達人講座への反応』
●『継続が大切』
○『スポーツ紙での報道』

◆CAIより今月のコラム
「予防・啓発型ハッピートラック始めます」

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●『あの先生は極端だから』
 ある都道府県で講演した際(と敢えて書くところが味噌ですが)、いつものように「HIVはフェラチオで感染するのですか」という質問を受けました。もちろん、フェラチオと言っても精液を飲む場合とそうではなく、すぐうがいをする場合、さらには喉にクラミジア感染による炎症がある場合と、それぞれ違うことなどを丁寧に説明しながら「でも、クラミジアにも感染していない、精液も飲まないフェラチオではHIVに感染しないと私は思っています」と話しました。その方はその後都道府県庁のエイズ担当部署に電話し、「岩室紳也先生のパンフレットには感染しないと書いてあるが」と質問したら「あの人は極端だから」の一言で片付けてしまわれたそうです。「『ではそちらではどのような見解で、感染すると考えているのですか』と理由を聞いても明確な解答が得られなかったのでどう考えたらいいのでしょうか」とあらためて聞かれました。
 感染症や危機管理はハイリスクか否かという点で整理するしかありません。万が一を考えたら何にだって万が一はあり得ます。何を隠そう、私こそHIV(+)の人との握手でパニックになった医者です。しかし、その経験を通して、うつることとうつらないことをリスクの度合いを含めた私なりに合理的なつもりの基準で分けるようになりました。しかし、まだ、白か黒かをハッキリさせて欲しい人がいるんですね。これは感染症恐怖症が根付いてしまった日本ではなかなか方向転換しにくいことなのかもしれません。
 何となくスッキリしないでいた時に相談にのっていた女子高生から次のメールをもらいました。

○『女子高生からのメール』
 私は今の彼にかならずコンドームをつかってもらいます。彼もわかってくれています。妊娠が恐いからです。初めてコンドームをかならず使おうと思いました。人は未来を考えると守りたいものを必死で守る気がします。私にとってコンドームはある意味「愛のあかし」のひとつのよう感じています。大事にされてるって感じます。

 彼女とは妊娠不安、性感染症不安の相談をやり取りする中でコンドームの大切さを実感してもらえるようになったようです。人がどう感じ、考え、そして行動するかは結局のところ本人次第です。11月27日から29日の間、神戸で日本エイズ学会が開催されました。11月30日の世界エイズデーのイベントではタレントの飯島愛さんとトークをしました。そして今日、12月1日は世界エイズデーです。
 一人一人の選択をどう捉え、コンドームやエイズ検査を含めたメッセージをどう伝え、行動に結び付けてもらえるのかを迷っている中での飯島愛さんとのトークから少しヒントをもらえたように思いました。ということで今月のテーマは「飯島愛とエイズを語る」としました。

『飯島愛とエイズを語る』

●『プラトニックセックスは名著』
 飯島愛さんの本を買うならネットが一番手っ取り早いですね。今では1500円以上購入時は送料無料なので、早速「PLATONIC SEX」と「生病検査薬≒性病検査薬」の2冊購入しイベントの前に読破しました。「PLATONIC SEX」は飯島愛さんの自伝的小説で、今の若者の性、セックス、お金、人間関係、等々に対する感性が感じ取れるものになっています。大人が若者に対して何を、どう伝えるべきかについて多くの示唆を与えてくれ、思春期の若者を対象とした仕事をしている人必読の本と思います。
 確かに彼女はAVに出演した過去もあります。セックスも多数の人と経験していることが書かれていますが、どうしてそのような状況になったのか、セックスに何を求めていたのか、大人がどのような視点で若者を受け止めればいいのかを教えてくれます。ミリオンセラーになった理由は単に人気タレントの過去が書かれているだけではない「何か」が感じ取れます。

○『先生はコンドームをつけているの?』
 舞台裏につくられたテント内の控え室で初対面の挨拶後の飯島愛さんとの最初のやり取りです。「私は相手がコンドームを使うと、こいつ、私のこと性病だと思っているのかと思ってしまうし、使うのはいや。先生はコンドームをいつも使っているの?」「使わないこともありますよ」「じゃ奥さんが浮気をして病気をもらっていたらうつるじゃない」「浮気をしていてもコンドームを使っていればもらわないだろうし、疑うとか信じるといったことじゃないですよ。そこまで受け入れられなかったらコンドームなしのセックスは出来ないでしょ」と答えつつ、今日のトークは大変。「コンドームを使おう」というキャンペーンにならないのではとも思いました。

●『コンドーム使用は疑いの目?』
 それにしても、コンドームを使われたくない理由として「自分が病気を持っているかもしれないと思われることがいや」というのは新たな発見でした。大人になれば妊娠はピルで避けられるようになるし、そちらの方が女性主体でできてより確実となれば、性感染症、HIV予防にコンドームという呼びかけは「あなたのパートナーが性感染症を持っているかもしれない」というだけではなく「コンドームを使うのはあなたに病気をうつされないため」とも取れるのですね。どのようなメッセージを伝えても受け取る相手の感性でどうにでも解釈できるものなのですね。ただ、飯島愛さんは自分なりの予防方法として「検査が大事」という思いがあったので、逆にコンドームについては「検査を受けている私は感染していないので使いたくない」という彼女なりの思いを貫き通そうとしていたというのが後でわかりました。一人一人が検査を受けた結果「自分は感染していない」と自信をもってセックスができればコンドームもいらないのでしょうね。

○『エイズ検査を受けよう』
 「先生はエイズ検査を受けてますか」「はい」「飯島さんは?」「この仕事のために3日前に迅速検査で受けてきたばかり。陰性、感染していなかった。今回で3回目。でもね、厚生労働省の人で検査を受けていない人がいるんだよ。自分が受けないのに人に受けましょうというのは気に入らない。」
 確かに検査を受けましょう、コンドームを使いましょうと大人は言うけど「自分はどうなの。自分が出来ないことを若い人に求めるな」という飯島さんの姿勢はその通り。彼女の主治医は全国でもまだ数箇所でしか行われていないHIV抗体の迅速検査をしてくれるようで、簡単に出来る方法があるんだからそれをどうしてイベントで紹介しないのかと主催者の厚生労働省に不満をぶつけっぱなしでした。マツモトキヨシで迅速検査キットを発売していますよ、と言ったらマネージャーに早速買いに行ってもらいました。しかし、残念ながらそのキットは何らかの不都合があって回収されていたということで結局は入手できずじまい。公開の場で検査をするなんてとんでもないと思われる方もいるでしょうが、彼女の意図は、検査結果を公衆の面前で云々するのではなく、検査がいかに簡単に出来るのかを実際に示したかったとのこと。
 迅速検査を取り入れるとカウンセリング体制をどうするか、といった問題が多々あるものの、受けやすい検査を提供し、より多くの人が検査を受けられるようにすることは大事ですね。「歯医者だってよっぽど痛くならない限りみんな行かないでしょ。今受けたいと思って、すぐ結果が出ればこれからセックスをしに行くにも安心じゃない」という彼女の視点には学ぶべきものが多いと思いました。

●『エイズは身近な問題?』
 「飯島さんにとってエイズ、HIVは身近ですか」と聞いたら、10年ほど前に友人の兄弟が薬害エイズで亡くなられたとのこと。さらにこのイベントを受けるという関係で友人に聞いたら4人がHIVに感染していることを告白してくれたそうです。自分の周りには実際にはもっと感染している人がいるかもしれないと感じられた彼女だからこそ、自分も検査を受け、みんなにも検査を受けて欲しいと思えたのでしょう。しかし、飯島さんのように友達にHIV感染の有無を確認していない人たちは実感しないでしょうし、友達が実際に感染していてもその事実を知らされる人は少ないと思われます。となるとやはり検査も受けないし、コンドームも使いたくないままになるのでしょうか。

○『コンドームの達人講座への反応』
 自分はコンドームを使いたくないと言いつつ、でもその重要性はわかるという飯島さんはキャンペーン用のコンドームをもらってすぐ袋から取り出したそうです。そうしたらコンドームがすぐ破れた、コンドームは信用できないとクレームを言ってきたのでステージ上でコンドームを袋から取り出してもらいました。やはりコンドームに長く伸びた爪が当たるような取り出し方でした。(ちなみにこの時はコンドームは破れませんでした)そこで「コンドームの達人講座」を披露し、コンドームの扱い方から、包皮の余ったペニスへのコンドームの正しい装着法を見てもらいました。さすがの彼女も、包皮を戻すところは知らなかったようで、装着法の難しさ、装着法を伝える重要性は理解していただき、「これからラブホテルに行く人はコンドームを使うように」と道行く人に呼びかけていました。

●『継続が大切』
 飯島愛さんは少なくとも3年くらい真剣に取り組めば少しは世の中を変えられるはずなので、今回のイベント出演を単発的なものにしたくないと言ってくれました。自分が出来ること、自分が実践出来たことを伝える飯島愛さんは貴重な存在です。ぜひ若者にメッセージを伝える力を持っている彼女に今後も協力してもらえればと思っています。来年のAIDS文化フォーラム in 横浜に来てくれるかな?

○『スポーツ紙での報道』
 残念ながらネット上で読める飯島さんの記事はスポーツ紙だけでした。やはりセンセーショナルな書き方になるんですね。

スポニチ
飯島愛 コンドーム装着呼び掛け
 1日の「世界エイズデー」を控えた11月30日、東京・新宿駅東口でエイズ予防のための啓蒙(けいもう)街頭キャンペーン(主催厚生労働省、財団法人エイズ予防財団)が行われ、自伝的小説「プラトニック・セックス」などの著書があるタレントの飯島愛(31)がトークショーなどを行った。
 飯島は「以前は男の人がコンドームを着けだすと、“こいつ、私のこと性病だと思っているのか”って感じだったけど、今は考え方が変わりました。たった1回(のセックス)でも感染する可能性があります。コンドームしないとダメ!」と、感染予防のためのコンドーム装着を呼び掛けた。
 また、エイズ検査はこれまでに3回受けたことを明かし、検査の必要性を強調。検査初体験時を「遊んでいたから勇気が必要だった」と振り返り、「結果が出るまでの10分間は、中学時代の最初の男のこと、(陽性だったら)誰にうつされたんだろうとか、好きな人にどう伝えたらいいんだろうとか、いろいろ考えた」と真剣な表情で話した。
 トークショーには“コンドームの達人”の異名を持つ医師も参加。棒状のものにゴムをかぶせて「正しいコンドーム装着法」を実演する医師を、「そうですねえ」などとうなずきながら見守った。
 さらに飯島は、友人をエイズで亡くしたことに言及するなどし、「好きな人と一緒にいたいじゃないですか!」「自分を守って素敵なセックスをしてください!」と最後の最後まで予防の必要性を聴衆に訴えていた。

日刊スポーツ
飯島愛がエイズ予防訴え
 タレント飯島愛(31)が30日、東京・JR新宿駅前で行われた「世界エイズデー」トークイベントに出席し、エイズ予防を訴えた。友達に4人のHIV感染者がおり、自身も3回エイズ検査をしているという飯島は「愛する人、家族、自分のために勇気を持って検査に行こう」と真剣。反応のない観客に「自分が感染していないという自信は、童貞なの?」と怒りの突っ込みをし、コンドームの重要性を訴える専門家に「私はあまりしないんでイヤ」と脱線。薬局でも買える簡易検査キットを用意していない厚労省職員のお役所仕事にキレて「早くそこのマツキヨで買ってきてよ」と一喝していた。

◆CAIより今月のコラム

「予防・啓発型ハッピートラック始めます」
 CAIでは新プロジェクトとしてトラックを購入しました。このトラックを予防・啓発出展ブースと捉え、コンドームも2人のハッピーな空間を演出する雑貨のひとつとして生活雑貨の中に雑貨的価値のあるコンドームの販売を若者が集まる街(恵比寿・代官山)で移動販売していきます。また、購入していただいたお客様には、お釣りと一緒にコンドームを1つ差し上げます。
 今後、CAIで行う「HIV/AIDSや性に関する若者向けのメール相談」とリンクさせながら、見える形でターゲット層へ情報提供できれば良いなと考えています。
まだまだ、試行錯誤の運営が続きますが、街で見かけましたら声をかけて下さい。

 久しぶりに登場の渡部でした。