接触(媒介物)感染 ①タバコ・喫煙感染

接触(媒介物)感染とは
 「感染予防の基本」で紹介したように、感染症を理解する基本は「ウイルスは、どこから、どこへ、どうやって」です。多くの人は、「で、どのような行為でうつるの?」と聞ききたくなると思いますが、感染する行為を一つずつあげていくときりがなくなるばかりか、自分でも気づかない感染経路を見落とす可能性があります。
 感染している人の口や鼻から飛び出した飛沫やエアロゾルに含まれているウイルスは、最終的に机や床などに落下します。ただ、落下していろんなものに付着してもウイルスはすぐに感染力を失いません。接触(媒介物)感染というのは、机などを触った手に付着したウイルスをそのままなめたり、素手でポテトフライを食べたり、そのウイルスが付いた食べ物を口の中に運ぶことで感染が成立します。
 「接触(媒介物)感染はない」と言い切る医者もいますが、その先生方には、「では手洗いは不要ですか?」と尋ねてみてください。「もちろん手洗いは必要」とおっしゃるでしょうから、「手洗いで、どこのウイルスを、どこに運ばないために必要ですか?」と聞いてみてください。
 ちなみに「接触感染」という言葉を鵜呑みにして「顔を触ってはいけません」という人がいますが、コロナウイルスは目から侵入しますが、皮膚からは侵入しません。外国ではfomite infectionということから、敢えて接触(媒介物)感染と呼ぶようにしています。

回し飲み禁止
 運動部の部活で同じ容器に入った水分を皆で共有してクラスターが発生した事例を覚えておられるでしょうか。この事例を聞き、感染経路対策がいかに立ち遅れているかを思い知らされました。カラオケでクラスターが発生する要因はいろいろありますが、次のような場面も考えられます。カラオケで盛り上がっているうちに他のお客さんの飲み物を口にしてしまうといったことはないでしょうか。若い時は好きな人が口にしたコップを間違えたふりをして「間接キス」と胸が騒いだ覚え、ありますよね。この「間接キス」でうつることをホストクラブでお伝えしたら「気を付けます」とのことでした(笑)。

タバコ・喫煙感染
 一方でタバコを吸う時の感染リスクについて指摘する人はまだ少ないのが実情です。喫煙する際の手順を思い浮かべてください。まずタバコのフィルターを素手でつかんで箱から取り出します。その時、指先にウイルスが付いていたら、フィルター部分に付着しさせてしまいます。タバコのフィルターを口に加えると、ウイルスを口の中に入れることになります。だから、タバコを取り出す直前に指先に付着したウイルスを除去する手指衛生が必要です。
 ところが「タバコで感染します」と伝えても何をすべきかが分かりません。タバコを吸う前に手をしっかり洗いましょうと言って実行できる人は少ないでしょう。そもそも喫煙ルームの中に手洗い場はありません。喫煙ルームに入る前に手を洗っても喫煙ルームに入る際に自動ドアのスイッチを利き手の人差し指で押すことで、スイッチに付着したウイルスを指先に付けてしまいます。ニコチンが切れて待ち切れない人がそのままフィルターを触ってしまうことでしょう。
 このように繰り返し伝え続けていますが、その結果思わぬ学びをさせていただきました。

タバコの回し飲み感染
 カウンターだけの、7人も入れば満員のバー。トイレもあるので、排気やトイレ後の手指衛生等をどのような場面で、どのようなタイミングで、どう工夫するかを丁寧に指導させていただきました。後日、そのお店にお邪魔した時、私自身が勉強になりました。
 「岩室さんの話はすごく役に立ちました。私たちの店でその後取り入れたルールが『タバコの回し飲みの禁止』でした」とのこと。私自身、タバコの回し飲みについて指導しなければならないなんて考えたこともありませんでした。話を伺うと、その店はレズビアンの方が経営され、お客さんにもレズビアンの方が多く、間接キスの要素もあるタバコの回し飲みをするお客さんがいらしたとのことでした。この場合、最初にウイルスが付いた手でフィルターを触ることも感染のリスクですが、回し飲みの際に、感染している人の唾液がフィルターに付着し、それを以降の人が吸い込むと感染するリスクがあります。
 感染予防についてあらゆる場面を想定して、一つ一つの場面の注意を伝えることも大事です。しかし、時間的な制限だけではなく、伝えている側が想像だにできない場面があります。だからこそ、「ウイルスは、どこから、どこへ、どうやって」を伝え、それを聞いた人がさらに想像力を働かせ、その人なりの予防を身に着けることが大事だということを実感した事例でした。