接触(媒介物)感染 ②キス・唾液感染

「キスでうつる」で排除
 昨年の夏、某ワイドショーで新型コロナウイルスに関するコメントを求められた際に、「新型コロナウイルスはキスでうつる」という発言をした瞬間、スタジオ中が凍っていました。私としては当たり前のことをただ淡々と伝えただけですが、「真昼間の番組で何と破廉恥なことを言うのか」という雰囲気だったようです。その後、その局からお声がかからなくなりました。これが日本の性を取り巻く現状です。

エビデンスは?
 「新型コロナウイルスはキスでうつる」という話をすると、必ずと言っていいほど「エビデンスは?」と聞かれます。でも、よく考えてみてください。新型コロナウイルスに感染していることが明らかになっている人とキスをして、新型コロナウイルスに感染するか否かを調べる実験というのは人道的にも許されるものではありません。そのようなエビデンス、論文があり得るはずもありません。もっとも、飛沫で感染するという論文も、様々な状況証拠から飛沫感染が最も考えられると判断しているのです。

呼気(飛沫、エアロゾル)の共有
 キスという行為は双方の呼気をしっかり共有しつつ吸い込みますので、飛沫やエアロゾルが感染経路の場合もあり得ますが、行為としてはキス感染ということになります。この場合、「キス」は感染する「行為」であり、「飛沫」「エアロゾル」が「感染経路」ということになることに注目してください。「キス」で「飛沫」をもらわないようにするにはお互いがしゃべらず、静かに「キス」をすればいいのです。しかし、いくら静かにしていても呼吸はしていますので「エアロゾル」の排出は止められないですし、それを吸い込めば「エアロゾル感染」が成立します。もちろんアクリル板に唇サイズの穴を開け、そこで唇を重ねつつ、空気の流れをしっかり作っておけばエアロゾル感染も予防ができます。
 こう書くと「冗談辞めてよ」という声が聞こえてきますが、感染予防というのはこのように「ウイルスが、どこから、どこへ、どうやって」を考えながらその移動を遮断する方法を考えることなのです。

キス・唾液感染
 飛沫やエアロゾル以外にキスの際に、特にディープキスで共有されるのがお互いの唾液です。唾液で新型コロナウイルスのPCR検査、抗原検査をすることからもわかるように感染している人の唾液の中にはウイルスが含まれています。すなわち、唾液の中には大量のウイルスが含まれており、その交換が行われるキスでは、唾液が感染経路となり得るのは明らかです。

キス・唾液感染の予防
 ディープキスでの唾液感染を予防するには「ノーキス」が一番確実です。しかし、どのような感染経路対策でも、次善の策を考えることが大切です。
 唾液によるPCR検査などで、検査前の30分間、飲食を禁止されているということは飲食で口腔内の唾液が薄められることで検査結果が正確に出ないことを防ぐためです。唾液中のウイルス量が飲食で減ることを検査担当者は事前の試験で確認したことと思います。ということはキスの直前に飲み物で自分の口の中の唾液を胃の方に流し込めば、相手に渡す唾液中のウイルス量を減らせるということです。また、キスの後、自分の口の中に入った相手の唾液を速やかに飲み物で胃の方に流し込めば、相手の唾液中のウイルスで感染するリスクが減らせることになります。ちなみに新型コロナウイルスはACE2受容体というもので体内に取り込まれますが、胃の中にはACE2受容体はないとされています。すなわち口腔内から速やかにウイルスを取り除くことは予防につながると考えられます。
 このように紹介すると、完璧な予防ではないので紹介することは適当ではないという意見をいただきますが、ゼロリスクを選ぶのか、リスクリダクションを選ぶのかはご本人次第です。専門家の役割はあくまでも、考えられるありとあらゆる予防方法を、正確に伝えることだと思っていますが、いかがでしょうか。