前立腺がん検診(PSA検診)の問題点(保健医療関係者向け)

前立腺がん検診(PSA検診)の問題点(保健医療関係者向け)

いろいろ資料をアップしていますが、まずは以下の論文をお読みください。
Thompson,I.M., et al:Operating Characteristics of Prostate-Specific Antigen in Men With an Initial PSA Level of 3.0ng/ml or Lower. JAMA,294:66-70、2005

Fritz H. Schroder,et al: Screening and Prostate-Cancer Mortality in a Randomized European Study. N Engl J Med 360:1320-1328, 2009
要旨
 ●PSAには前立腺がんを高い敏感度と高い特異度でスクリーニングするカットオフ値はなく、連続する全ての値において前立腺がんのリスクがある
 ●PSA4.1ng/mlでの敏感度、すなわち捕捉される前立腺がんは全前立腺がんの20.5%
  (前立腺がんの約80%はPSA4.0ng/ml以下)
 ●PSA検診は前立腺がん死亡率を20%低下させるものの、1人の前立腺がん死を回避するには48人を治療する必要がある

裏を返せば
 ●PSA検診では前立腺がんの20%しか補足しないから根治療法による死亡率の低下は20%にとどまる
 ●根治療法を受ける48人中47人(98%)は何もしなくても前立腺がん死しない
 ●PSA検診で病理診断されている前立腺がんの大半はラテントがんである可能性が高い

2007年8月に厚生労働省の研究班が前立腺がん検診について否定的な見解を出してから疫学者と泌尿器科医の対立の構図が出来上がったように思います。議論がかみ合っていない中、一泌尿器科医として疑問に感じることを自分なりにまとめてみました。
今回、あらためていろんな論文を読む中で、今の時点で市町村が実施する対策型検診(住民検診等の集団検診)としては不適切であるとの思いが強くなりましたので私が抱いている疑問を解消していただけるよう、多くの泌尿器科医も公衆衛生担当者にご意見をいただけるようHPで考えを紹介したいと考えました。ただ、今後、より精度の高い前立腺がん検診の必要性は否定されるものではありませんので、多くの泌尿器科の先生方と協議しながら適切な前立腺がん検診を確立できればと思っています。
医学書院 「公衆衛生」 2018年2月号
 自治体における任意型がん検診の現状と課題
  —PSA検診はスクリーニングになっていないうえに,過剰治療となっている
 (雑誌の購入はこちらから Amazon) (電子版はこちらからPSA検診の問題点をまとめたスライド(pdf)(2018.3時点)

「PSA検診の考え方」(2016.2時点)

以下に前立腺がん検診に関するいくつかの意見を紹介します。
前立腺がん検診ガイドライン2018年版(日本泌尿器科学会編)
前立腺癌診療ガイドライン2016年版(日本泌尿器科学会編)
日本癌治療学会前立腺がんがん診療ガイドライン
PSA検査は患者と協議の上限定的な実施を 米国内科学会がガイダンス(英文本文早期前立腺がん 手術不要?(読売新聞2012.8.16)
厚生労働省研究班 前立腺がん検診ガイドライン(完全版)
病院の実力2009がんと闘う(読売新聞)
 年間死亡者数 約9500人
回収率62%のアンケートの中の主だった施設だけで根治的治療(完治するとして勧める治療)として、
前立腺全摘 9,094件、放射線治療 7,929件が行われています。過剰治療は否めません。

「公衆衛生」特集 がん予防
公衆衛生、73(12)、912-916、2009論文で引用した文献はこちら
PSA検診を実施している市町村等に求められていること(岩室試案)
 ●インフォームドコンセントの徹底
  →PSA検診の課題
  過剰治療と対策( PSA監視療法)
  PSA4.0ng/ml未満における把握もれの存在
 ●日本でのPSAの特異度、敏感度の検証
  →PSA基準の引き下げ(3.0 ng/mL)
 ●検診へのPSA doubling timeの導入
  →PSA1.0 ng/mL以上で翌年2倍もしくは1.0 ng/mL以上上昇は要精検
 ●PSA監視療法(Active Surveillance)による過剰治療回避
  →Gleason Score7以下は全例厳重な経過観察
  →定期的な前立腺生検の実施を含む
  →経過観察基準の徹底
  →結果の集積と分析
では、任意型検診(人間ドック等の自己責任型検診)としてはどう考えるか?

私は現在62歳ですが、今のPSA検査は受けません。(詳しくはこちらへ