北山修先生が「最後の授業―心をみる人たちへ」で「映像は想像力を奪う」と述べています。この言葉に出会ったのは2010年にNHKで放送された「北山修 最後の授業」でした。「目から入る情報はわかったような気になる。耳から入る情報は想像力を育み記憶に残る」という言葉を聞き、すごく納得しました。
新型コロナウイルスだけではなく、インフルエンザ、様々な性感染症について多くの人はインターネットやテレビ等を通して情報を得ていると思いますが、私は基本的に自分でデータを収集してグラフ化をしたものをネットにアップしたり、講演等で使っています。なぜそうするようになったかというと、一方的に見せられた情報だとそれこそ「わかったような気になる」だけだということを繰り返し経験してきました。
新型インフルエンザがいい反省例でした。2009年に日本中がパニックになったのに、翌年以降は流行しませんでした。与えられた、マスコミ経由の情報にしか接していなかった当時の岩室紳也は「なぜ1年で流行が収まったのか」を考えることもしませんでした。しかし、どこかで感染症、それも新型インフルエンザのことを含めて講演を依頼された時に調べていく内に、インフルエンザの抗体保有状況が毎年チェックされており、その分析結果を読み解くと、2009年に流行した新型インフルエンザは、結果的に感染が広がり、多くの人が他のタイプと同じように抗体を持つようになり、いわゆる「普通のインフルエンザ」になったことがわかりました。でも、そのような話はマスコミには登場しません。
この一文を読んでくださった方で、新型インフルエンザが普通のインフルエンザになった理由をご存じなかった方はここまでの私の記述で納得されたでしょうか。おそらく「No」ですよね。では次の図を見て納得いただけたでしょうか。
2009年だけインフルエンザが夏場から流行しました。
なぜでしょうか。そしてそのことを伝えてくれた人に、情報に出会ったことはありますか?
新型インフルエンザとなった2009pdmの抗体保有率は最初の流行後の2010年2月時点でも低い状況でした。
抗体価が低いのは何故で、その意味をどうたらえるべきなのでしょうか。
2009年の流行前に採取されていた血液では抗体価が低かたのですが、それが年々高くなり、結果的に「普通のインフルエンザ」になりました。
私自身、このデータと向き合いながら、このデータについて紹介しながら、実は自分自身の中での対話を通して理解を少しずつ深めている状況です。こう話すと頼りがいがない専門家に見えるでしょうが、それが岩室紳也の限界なのでお許しを(笑)。