予防に大事なのは正解ではなく、知見の積み重ね

 正解依存症の問題を考えるにあたって、いつも障壁になるのが「正解」です。新型コロナウイルス感染症を予防するには「何がベストですか、正解ですか」とよく聞かれました。しかし、これだけすれば大丈夫といった一つだけの正解があるわけもありません。予防とは様々な可能性を念頭において、できる人が、できることを、できる時に、できるようにしたことの結果です。

 いま世間を、マスコミを騒がせているのが人食いバクテリアと呼ばれている劇症型溶連菌感染症です。今の時点で、予防の観点から分かっていることを検証し、一人ひとりができる予防対策は何かを考えてみました。

 劇症型溶連菌感染症が急増し、昨年の患者数をすでに6月時点で超えています。しかし国立感染症研究所のHPにも明確な予防対策は見当たりません。

 劇症型溶連菌感染症の原因となる菌は主にA群溶血性連鎖球菌Streptococcus pyogenes で、報道から、あかぎれや水虫など手足に小さな傷がある人傷口から菌が入ることで起こることが多い、といわれています。A群溶血性連鎖球菌の中で感染力が強い変異株「M1UK株」への置き換わりも感染拡大の要因と見られていますが、まだ感染拡大の理由は明確ではありません。ちなみにA群溶血性連鎖球菌咽頭炎とは学童期の小児に最も多く、次のような流行を繰り返しています(図)。
 最新のグラフを確認するには図をクリック。このグラフから、溶連菌は学校の春休み、ゴールデンウィーク、夏休み、冬休みに減っているのがわかります。

 学童期に多いA群溶連菌感染症が劇症型になった人の傷口等から侵入したのかを考える材料としてA群溶血性連鎖球菌による集団食中毒事件が参考になります。正直な所、予防医を自負している私ですが、またプライマリケア医としてA群溶連菌咽頭炎は診察してきましたが、A群溶連菌で食中毒が起こるという認識がありませんでした。しかし、次のように複数の事例が報告されています。咽頭炎を起こす食中毒、A群溶血性レンサ球菌より

 ネットで調べると大規模な食中毒事案が確認できます。1969年埼玉1997年福岡2005年相模原市2012年愛媛2013年岐阜。どの事例を見ても、調理していた人が保有していた菌を料理に散布し、それを食べた結果食中毒が発生していたようです。
 A群溶連菌が飛沫感染することは良く知られていますので、感染している人が会話等をする中で飛沫を周囲に散布し、それが何らかの経路で傷口等から入ったと考えられます。

 で、傷口から菌が侵入することで起こるとされている劇症型溶連菌感染症を予防するにはどうするか? 無症状でもA群溶連菌に感染している人の飛沫がいろんなところに付着していることを前提に、その菌を皮膚の侵入口(傷、あかぎれ、水虫等)に付着させないことです。毎日風呂に入って体の清潔を保つことも有効と考えられます。ケガの後に発症したケースもあり、ケガの処置法を再確認してください。

 もし転んで、膝を擦りむき傷口から出血していたら、皆さんはどのように処置しますか?


 1.傷口についた異物(砂、土、等)を水で洗い流す。異物が皮膚にすり込まれているようなら歯ブラシ等で除去する。

 2.水がない場合は出ている血液で洗い流す。(献血でわかるように、貧血がない人であれば400㏄の血液を抜かれても全く問題はありません)

 3.傷口から異物を取り除いたら消毒をし、傷口を清潔なガーゼ、絆創膏で覆う。この時、操作が不潔だと周囲に付着している溶連菌を傷口に着けてしまう可能性があります。

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