生成AIは自分の中の矛盾に気づけないとやんわり書きましたが、実は多くの専門家と関わる中で、なぜその方々と対話にならないのか、議論にならないのかがずっと不思議でした。しかし、生成AIを利用する中で、私が接してきた多くの専門家たちと対話にならなかった、議論にならなかった理由が見えてきました。
岩室紳也は診療面ではプライマリケア医に始まり、泌尿器科専門医、小児泌尿器科専門医、エイズ学会認定医、性感染症学会認定医といった資格を取ったり、その分野で様々な患者さんの診療をさせてもらったりしてきました。一方でその分野だけの診療や研究をされてきた先生方と比べると、その分野での私の医学知識や研究成果はとてもかないません。ただ一点、診療と研究をされている臨床医の方との大きな違いは公衆衛生分野に長年足も首も突っ込んできたことです。
公衆衛生と聞くとピンとこないという人も多いでしょうが、私が関わってきた公衆衛生は一言で言うと「予防、健康づくり、そして現実の受容に向けた環境整備」です。人はとにかく正解を求めたがりますし、その成果がわかってもそれを実践できず、結局は健康を害してしまう場合があります。一方で正解と思って受け入れたものの、気が付けば弊害ばかりでかえって楽しいはずの人生が台無しになっている人はいないでしょうか。
泌尿器科医として以前からずっと気になってきたのがPSAが前立腺がんの早期発見になっているというのは全くの誤解だということです。詳しくはリンク先をお読みいただきたいのですが、一方で「あなたは前立腺がんです」と言われたら誰でもパニックになりますよね。私は60代で、同窓会をすれば同窓生の20%、5人に1人は前立腺がん細胞を持っています。でも、その人たちのほとんどは前立腺がんで死にません。過剰治療を受け入れて安心するのか、今の生活を大事にするのか。こんなことを「専門家」は「素人」に選択させる時代になりました。
生成AIとのやり取りです。
(2024年6月22日8時00分)
Q:PSA検診は受けるべきでしょうか
A:PSA検診は受けるべきでしょうか
PSA(前立腺特異抗原)検診は、前立腺がんの早期発見に役立つ可能性があるため、多くの医師が50歳以上の男性に対して定期的に受けることを勧めています。ただし、PSA検診にはメリットとデメリットがあり、それぞれを理解した上で検討することが重要です。
メリット
1.早期発見: 前立腺がんが早期に発見されることで、治療の選択肢が増え、治療成功率が高まる可能性があります。
2.症状のないがんの発見: 初期の前立腺がんは症状がないことが多いため、検診によって無症状のがんを発見できる場合があります。
デメリット
1.誤陽性の可能性: PSA値が高いからといって必ずしもがんがあるわけではなく、他の要因(前立腺炎や肥大など)でPSA値が上昇することがあります。これにより、不必要な追加検査や不安が生じることがあります。
2.過剰診断と過剰治療: 一部の前立腺がんは進行が非常に遅く、一生の間に問題を引き起こさない場合があります。これらのがんが検診で見つかり、治療されることで、治療の副作用や合併症のリスクが増える可能性があります。
結論
PSA検診を受けるかどうかは、個々のリスクファクターや健康状態、家族歴、個人的な価値観などを考慮して決定するべきです。医師と相談し、メリットとデメリットを理解した上で、自分にとって最適な選択をすることが重要です。
ここまでデメリットを説明してくれる専門もいるでしょうが、さらにこのデメリットについて生成AIに突っ込めば突っ込むほど、泌尿器科医の端くれの私でさえもますます突っ込みたくなる内容ばかりです。で、思ったこと。生成AIはまだ学習し、明確な答えが出せない分、こういう見方も、ああいう見方もと提示してきます。すなわち現時点における正解の数々を示し「最後はあなたが決めなさい」となります。多くの専門家も同じように「何がベストかわからないのですよ」という視点で議論、対話をしてくれればまだいいのですが、専門家こそ正解依存症になるリスクが高いと改めて思いました。なぜなら「先生にお任せ」という文化がいまだに根強く残っている日本だからです。さて皆さんはどうされますか?このような状況でPSA検診を受けますか?岩室紳也は受けません。