包茎に関する正解・常識が変わる人、変わらない人

包茎に関する正解・常識が変わる人、変わらない人
 泌尿器科医になった初期の頃にさせてもらった手術の一つが小児の包茎手術でした。余った皮膚を切り取るだけの手術のため、不用意に大きな血管を傷つける心配もない場所ですので、皮膚を切りすぎることをしなければ若い医者にとても比較的覚えやすい手術でした。手先がそれなりに器用だったのか、自分なりに手術書を読んで勉強するだけではなく、自分なりの工夫をし、手術後のペニスの状態はそれなりに納得できるものになっていたと思います。
 ここで大事なことは、「手術をするか否か」に若い医者が関与していなかったことでした。上司の判断は「正解」であり「(泌尿器科医としての)常識」と勝手に受け止め、疑うことなく手術をしていました。ところが、「それって正しいの? 常識にしていいの? 正解なの?」と考えさせてくれることが続きました。

包茎手術は不要との学会での指摘
 日本泌尿器科学会総会で包茎の手術のビデオセッションで海外の発表に対して、小児泌尿器科の分野で有名だった先生が、「そもそもその症例はちゃんと包皮をずらすと亀頭部が出るので手術は不要ではないか」と発言されました。私も「そうだよ」と思ったのですが、海外ではそもそも割礼はむけるかむけないかを基準にするわけではないので議論になりませんでした。

コンドームの装着と仮性包茎
 ちょうど同じ頃、1994年8月に横浜で開催される第10回国際エイズ会議に向けて、HIV/AIDSの予防啓発活動をしていました。「エイズ予防にノーセックスかコンドーム」と叫び、バナナにコンドームを装着していましたが、ある日助産師さんが「どうしてコンドームって外れるんですか? こうやってちゃんとつけているようですが」と家族計画始動用の試験管にコンドームを装着しながら質問してきました。
 一泌尿器科医としてだけではなく、一仮性包茎男子として自信を持って「試験管は生身の、しかも仮性包茎が7割と言われている日本人男子のペニスではない」と反論するとともに、仮性包茎のペニスを作成し、仮性包茎のペニスにコンドームを装着する方法を実演するようになりました。
 ちなみにこのコンドームの正しい付け方に強く賛同してくれたのが、日本に長く住んでいた、ゲイで、多くの日本人男性のペニスを知っていたパトリックでした。彼が仮性包茎の模型を「チャンピオン君」と命名してくれました。

かぶれば包茎、むければOK
 自分自身の、そして多くの日本人の仮性包茎のペニスを見てきた、診てきた結果、ふと思ったのがそもそも包皮がむけないから「真性包茎」と言われているペニスと、普段は包皮が亀頭部を覆っているものの、包皮をずらすと亀頭部を容易に露出できる「仮性包茎」の違いは何か、でした。答えは簡単でした。
 真性包茎と言われているのは包皮口、包皮の出口が狭いため亀頭部を露出できない状態なので、包皮口を広げれば仮性包茎になる。さらに包皮と亀頭部が癒着しているなら癒着を剥がせばいい。それなら生まれた時からムキムキ体操をすればいいという結論に達しました。 すなわち

かぶれば包茎、むければOK

ということにたどり着きました。もっとも、このことを泌尿器科の学会誌に投稿し、いろんな場面でPRしてきたつもりですが、「小児の包茎はむく必要はない」と言いつつ「むけない時は手術」という正解依存症の医師たちは未だに多数いらっしゃいます。

おちんちんの「自然」が変わった
「かぶれば包茎、むければOK」や「ムキムキ体操のススメ」を訴えていると、必ず、というか多くの方から「放っておけば自然にむける」という反論をいただきます。この人たちこそ正解依存症だなと思っています。そもそもこの人たちがいう「自然」というのは何でしょうか。その人がたまたまむけるようになったから、「自分は自然にむけた」と勘違いしています。さらに、最近の若者たちの「自然」は昔の「自然」と全く異なったものになっています。私が思春期を迎えた頃は、雑誌やスポーツ新聞には包茎の手術を勧める広告があふれ、「彼女は包茎が嫌いだ。包茎の三悪、悪臭、先細、早漏追放」と早く包茎を回避するために手術を受けろと脅され続けていました。しかし、中学から寮生活をしていた関係もあり、ほとんどの仲間が包茎だということも知っていたためそのような広告に騙されることはありませんでした。
 ところがいま、中学生や高校生に「包茎」の話をすると、「何それ?」という顔をされます。すなわち、今の自然では男子校でさえも性的な話を仲間同士でしないので、「包茎」という言葉も知りません。もちろんインターネットには手術を勧める広告は氾濫していますが、「包茎」で検索しない限りたどり着きません。一方で何らかの拍子にその広告にたどり着いても、誰にも相談することなく、自分の判断で、あるいはよくわかっていない親も子どもが悩まないためにと勝手に決めつけて手術を受け、その後遺症に苦しんでいる人が少なくありません。でどうするか。
 岩室紳也は自分が関わる機会を得たお子さんには小さい時に完全な仮性包茎状態にし、さらに保護者に、お子さんが自分でペニスを洗えるようになったら洗うだけではなく、おしっこをする時に向いて排尿をするように指導します。そうするとトイレを汚しません。
むくだけではなく、むいて一歩前へ!

つづく

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