紳也特急 102号

〜今月のテーマ『お金の貯め方』〜

●『コンドームをサイフに』
○『使わないこと』
●『初めての経験』
○『コドモのコドモ』
●『インターネットに学ぶ性教育の反省』

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●『コンドームをサイフに』
 ある講演会後の高校生からの意見です。
 「コンドームをサイフにいれるとお金が貯まらないについて”迷信”とおっしゃったので反論をさせていただきます。小銭入れにコンドームをいれる事で、人前でサイフをあけるのが恥ずかしいという思考が働き、お金が貯まるのです。若い人は、先生が思っている以上にコンドームに対する考え方の認識が違うと感じました。残念です。シャイな若者もいるんです、まだ。」
 なるほど。なるほど。
 私はいつも財布の中にコンドームを入れて持ち歩いていますが、コンドームは見えても「チラッ」という感じなので、コンドームが入っていることを人に見られる不安や恥ずかしさがなかったので、見られる恥ずかしさという視点で考えた事がありませんでした。あらためて指摘されると、「なるほど」ですね。コンドームの達人がそんなに安易に方向転換をするのと言われるかもしれませんが、これからは「コンドームをサイフに入れるとお金が貯まる」に方針を転換したいと思います。
 ということで今月のテーマは「お金の貯め方」としました。

『お金の貯め方』

○『使わないこと』
 よっぽどのお金持ちでなければ、誰しもお金を貯めたい、少しでも貯金が多い方が、収入が多い方がいいと思うでしょう。もちろん私も多聞にもれず同じことを考えていました。しかし、お金を貯めるにはとりあえずあるものを貯金するしかない。お金を増やすには株とかに投資するしかない。そう思っていた私に株取引を幅広くやっている上司の先生が「使わないこと」と「借りないこと」がお金を貯めることへの近道と教えてくれました。確かに使わなければお金は減りません。当たり前のことですが家のローンの利率は貯金の利率より高いため、借金(ローンというまやかしの言葉はやめて)がある人がお金が貯まるはずがありません。目から鱗のアドバイスをその後徹底するようにしています。私の場合は財布にコンドームを入れていますが、いまあるお金はやはり財布をあけない分、貯まったのでしょうか。(どこからか「そんなに使わなければもっと貯まる」という声が聞こえてきそうですが・・・)

●『初めての経験』
 先日、岡山市で思春期の性の問題に積極的に取り組み、携帯を駆使したメール相談で大勢の若者と向き合っておられる上村茂仁先生が「どうしてこんな活動をしているのとマスコミに聞かれてうまく答えられない」とおっしゃっていました。確かにお金が貯まる活動ではないのにどうしてそんなに頑張れるのでしょうか。自分で言うのも変ですが、私もお金にならないことにいろいろと首を突っ込んでいます。HPから私にメールをくださる方に返事をし、相談等に対応するようにしています。「何故、無料で相談なんかにのっているのですか?」と聞かれても困るのですが、「そこに相談者がいるから」と答えていた私は少々勘違いをしていました。
 「財布にコンドームを入れる意味」を教えてくれた高校生のように、いろんな人につながっていると自分自身が多くの学びをいただきます。先日もまた「性風俗遊びが止められないんです」という人。「切りたい」というメールを繰り返し送ってくる女の子。その子たちを、その人たちを変えられない自分。そんなことに日々向き合わせてくれるメール相談はいい勉強の場です。そんなことを考えていた時にHPでの相談にお応えしたところ次のようなメールをもらいました。
 「お返事ありがとうございます。安心しました。(中略)先生には、診察料払わなきゃですよね(笑)」
 メール相談をしていて、感謝されることは多いのですが、「診察料払わないと」と言ってもらったのは初めての経験でした(笑)。無料の相談コーナーを立ち上げていれば、無料であること、その中で適切な、親切な対応をすることが当たり前だと多くの人は受け止めているのではないでしょうが、「ありがとうございました」とか「助かりました」という声をいただく時に、「こちらも勉強になりました」と返すのがこちらとしての礼儀なのかもと反省です。

○『コドモのコドモ』
 前述の上村先生に「コドモのコドモ」という漫画が映画化されることになり、今ひと悶着が起こっていると聞きました。不勉強な私はこの漫画の存在も知らず、さっそくネットで注文し、翌日には読んでいました。ネットは本当にこちらの要求に直ちに応えてくれます。漫画の内容についてはコメントしませんが、個人的には子どもたちの気持ちが上手に描かれていて、実際に小学生の妊娠を含めた性被害が多発している世の中で、小学生の性を考えるきっかけになればと思いました。ロケ地での混乱、性教育関係者の反対。「14歳の母」で懲りた、等々、いろいろあるでしょうが、性教育に関心がある方は一読の価値ありだと思います。
 「コドモのコドモ」の是非や賛否はさておき、実際問題として小学生同士、中学生同士の妊娠をどうすれば予防できるのでしょうか。低年齢者の性のトラブルが後を絶たない中、「あるべき姿を追い求めるのではなく、現実の姿を直視しないとそれこそ『人間否定』になりませんか」とある方が教えてくれました。学校で一回性の授業をしてもそれだけではすべてのトラブルを解決できません。そもそもその家庭に問題はないだろうか。性について興味を覚えさせないような社会にしなければならない。小学校3年生から性教育をしていることが問題。とご批判、ご意見はいろいろ出るでしょうが、一つの正解、これさえしておけば大丈夫というものはありません。こればかりはインターネットをくまなく探しても見つからないでしょう。しかし、多くの人が正解を、答えを求めています。その気持ちに応えているのがインターネットだそうです。

●『インターネットに学ぶ性教育の反省』
 インターネットの専門家からインターネットが次の要素を持っていると教わりました。
・自分の中に課題がある時に利用する
・ピンポイントで正解にたどりつける
・自分に都合のいい答えがみつかる
・正解とは何かについて悩むプロセスがなくなる
 確かに包茎についても「手術しよう」というHPもあれば「包茎は切るな」という紳也’s HPもあります。どっちもそれを探している人にとっては「正解」なのでしょうね。しかし、是々非々がないのが性。正解がないのが性教育。ただ、自分の価値観や思いがあって当たり前なのが性。だから性を性(サガ)と読むのでしょうか。
 私の性教育は他の価値観は認めているものの、「岩室紳也はこれが大事」と思っている内容にこだわっています。特にコンドームにこだわり、コンドームを財布に入れたことで多くの人との出会いをいただき、その出会いの一つ一つが貴重な財産になっています。やっぱり「コンドームを財布に入れるとお金(財産)が貯まる」というのは本当ですね。