紳也特急 203号

~今月のテーマ『包茎は破れにくい』~

○『デートDVと英国のEU離脱』
●『いい○○、悪い○○』
○『なぜ、男優さんたちに学ぶか』
●『仮性包茎率85%』
○『包茎のメリット』
●『仮性包茎はコンドームが破れにくい、外れにくい』

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○『デートDVと英国のEU離脱』
 何バカな比較をしているんだと叱られそうですが、国民投票の結果、EUを離脱することになった英国の報道を見ていると、まるでデートDVが起こるメカニズムと同じかなと思ってしまいました。

 最初は相思相愛。
 でもいろんな取り決めが生まれると息苦しさを感じる。
 お互い、ちゃんと話し合いをすればいいけど、それができない。
 気が付けばいろんなつらいことが、耐えがたいことが起こっている。
 誰かに相談するといっても相談する相手がいない。
 結局選択肢は、耐えるか、別れるか。
 勢いで別れを切り出したものの、でもやっぱり未練が残る。

 今回の英国のEU離脱劇でみなさんもいろんなことを学んだことでしょうが、私が一番興味深かったのが、人間社会だったら「ごめんなさい」と言えば、多くのことは水に流してもらえるはずです。でも、「国民投票」という民主主義のような、でも所詮人間が投票をするこのシステムに、反省、謝罪、撤回が許されないというのは大いに問題だと思いませんか。ちなみに自分たちの代表を選ぶ選挙だと、ちょっと変だと思えば辞任、退陣に追い込めばある意味みんなが納得する終止符が打たれますよね。人は自分の、他者の経験や失敗に学ぶ存在です。ぜひ日本人は英国人の経験と失敗?に学びたいものです。
 実は、AIDS文化フォーラム in 佐賀で素晴らしい、他者の経験に学んだ発見がありました。本当に経験に学ぶということは大事です。で、何を学んだか。「仮性包茎はコンドームが破れにくい」でした。そこで、今月のテーマをずばり、「包茎は破れにくい」としました。

『包茎は破れにくい』

●『いい○○、悪い○○』
 AIDS文化フォーラム in 佐賀で現役のAV男優さんたちを呼んだブログラムがいくつか開催されました。そもそも「そんな人たちを呼んでいいのか?」、とか、「AVに無理やり出演させられた被害者がマスコミで取り上げられているときに不謹慎だ」というお叱りを多々受けることを想定し、最初に言い訳、というか、岩室紳也のスタンスを改めて自分なりに考えてみました。
 HIV/AIDSが世間の注目を集めた時から「いいエイズ」と「悪いエイズ」が話題になりました。昔は薬害でHIVに感染した「気の毒なエイズ=いいエイズ」に対して、コンドームを使わないセックスで感染した、しかも男同士のセックスで感染するなんて、とその人たちのことを「悪いエイズ」とレッテルを貼っていました。今でこそ多くの人のご努力の結果、LGBTという言葉を多くの人が知る時代になり、「いいエイズ」「悪いエイズ」といった区分で語られることは随分少なくなりました。
 もちろん今でもLGBTが受け入れられない人たちがいることも事実ですが、どの時代にも、どこにでも他の人がOKと言っていることに対して、理性ではわかるけど感情的に受け入れられない人はいます。もちろんAVにもいろんな問題点がありますが、厳然と存在している以上、そこに学ぶことも必要ではないでしょうか。EUからの離脱も、理性的な判断の結果ではなく、いろんな感情が衝突した結果でした。人の感情を、気持ちをないがしろにしてはいけませんが、拒否感情が先行する場合でも、冷静に、客観的にその事象と向き合うことで、多くの学びをいただけるものです。

○『なぜ、男優さんたちに学ぶか』
 今回、AIDS文化フォーラム in 佐賀で男優さんたちとのトークセッションを担当した時に、そもそもこのAIDS文化フォーラム in 佐賀のきっかけとなった佐賀での出会いを思い出していました。10数年前、佐賀の教育関係者向けの話を依頼された時、世間ではインターネットの出会い系サイトの被害が話題になっていました。そのことに触れる際に、会場にむけて「出会い系サイトにアクセスしたことがある人」と挙手を求めたところ、1人の男性しか手を挙げませんでした。そもそも、○○が悪いという前に、その実態をある程度知っておかないと正確な指導ができません。しかし、その研修会にいた多くの人たちは「出会い系サイトに注意」、「出会い系サイトにアクセスするな」とはいうものの、なぜ、若者たちが出会い系サイトにアクセスするのか、若者の視点から見た出会い系サイトの魅力について考えてはいませんでした。
 多くの男性がAVを見たり、楽しんだり、時には翻弄されているにも関わらず、みんな見ていないふりをしています。みんなが「AV見ています。○○のファンです」とカミングアウトしていただかなくてもいいですが、AVに、AV男優さんたちだから経験できる、話せる、感じられる、考えられることにまじめに向き合い、彼らからしか学べないことを探求する人たちにブレーキをかけないで欲しいのです。敢えて付け加えますが、AVだけに学んで、セックスレスになっている人たちを減らすためにも、AVの本当の姿を知ることが重要だと思っています。ちなみに、今回は「包茎は破れにくい」の他にいくつか学びがありましたが、まだまだ学び続けたいと思っています。

●『仮性包茎率85%』
 AV男優さん4人+カリスマソープ嬢+高校教師+僧侶+医者という8人(男7人、女1人)が登壇しトークが始まりました。男7人に、「包茎の人?」と投げかけたら、何と6人(85.7%)が挙手しました。何より新鮮だったのが、仕事の時はパンツを履いていない4人の男優さんたちは、当然のことですが、お互いを仕事場で見ているので、今さらウソはつけないわけです。しかし、この質問を会場に向けたところ、逆に手を挙げない人の方がはるかに多かったのには笑ってしまいました。「包茎」ということがいかに「恥ずかしい」、「人に知られてはいけないこと」になっているかの現れでした。
 最近、朝日新聞や読売新聞にも国民生活センターが注意喚起した包茎手術のトラブルが取り上げられましたが、記事を書いている記者も「包茎」を正しく理解していないようです。2016年6月29日の読売新聞で「男性器の先端が皮膚で覆われたままなのを治す『包茎手術』について、高額な即日施術を迫られるなど相談が相次いでおり、国民生活センターが注意を呼びかけている。」とありました。包茎は正常な状態なのに「治す」と書かれたら「じゃあ、どのような『治療』がいいのか」と聞きたくなりますよね。今回、AV男優さんが教えてくれた一般人の性の誤解の一つが「大多数の日本人男性は包茎だ」ということでした。

○『包茎のメリット』
 大多数と言われても、大多数の男子がイケメンではないように、もしイケメンになれるなら整形手術をしたいと思う人がいても不思議ではありません。実はそこに付け込んでいるのが包茎手術業者さんたちです。芸能人の中で美容形成術を受けているという噂の人は多数います。私は個人的には賛成しかねますが、自分で選択する人のことを批判するつもりはありません。同様に、自分から進んで包茎の手術を受ける方も否定しません。しかし、もし、包茎であることにメリットがあるとしたら、そのことをきちんと伝えたいと思ってきました。
 「銭湯に行けば、温泉に行けばみんな包茎だということがわかる」と話していましたが、実は銭湯や温泉では包茎の人はなぜかおちんちんを隠しています。まるで「包茎」は恥ずかしいと言わんばかりです。
 「かぶれば包茎、むければOK」と話をしても、内心「それならあんたのを見せてみろ」と思っている受講者が数多くいます。もちろん一緒に銭湯や温泉に入るならいつでも見せますが、男優さんじゃあるまいし、まさか講演中にパンツを脱ぐわけにはいきません。
 結局のところ、包茎手術の宣伝文句「彼女は包茎がきらいだ。包茎の三悪、悪臭、先細、早漏追放。包茎切って男になろう」に勝るメッセージはなかなか誕生しませんでした。

●『仮性包茎はコンドームが破れにくい、外れにくい』
 仮性包茎3人、むけちん1人の男優さんたちを前に、思わず、というか自然と昔からの疑問をぶつけていました。
 「コンドームが破れたり、外れたりすることはありませんか?」
 4人ともAV業界では人気者で、何千人もの女優さんと交わりの場面を撮ってきたとのことでした。映像ではわからないように加工されていますが、基本的にコンドームを使うという彼らだからこそ、コンドームが破れる、外れるという経験と包茎との因果関係が見いだせるのではないかという期待を込めた質問でした。帰ってきた答えにビックリ!!!

 仮性包茎の3人=ほとんどないですね
 むけチンの1人=よくありますよ

 たった4症例で判断することは難しいという人もいるでしょうが、この先はコンドームメーカーさんに、男優100人に聞きましたアンケートをしていただけるといいのかなと思っています。
 今回の結果はある意味想定されていたものでした。すなわち、仮性包茎のペニスは皮が余っているため、コンドームをきちんと伸ばした皮に密着するように装着することで、皮のずれとコンドームのずれが一体となって動くため、コンドームにかかる力が軽減されます。そのため、コンドームが破れたり、外れたりといったトラブルが減ります。
 この仮説は自分の経験からも「常識」と思っていたのですが、たった一人の仮性包茎人の経験だけだと何の説得力もなかったのですが、今回の男優さんたちのカミングアウトは仮性包茎人の自信につながったのではないでしょうか?!

 やっぱり「かぶれば包茎、むければOK」でした。