紳也特急 267号

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■■■■■■■■■■■  紳也特急 vol,267  ■■■■■■■■■■
全国で年間200回以上の講演、HIV/AIDSや泌尿器科の診療、HPからの相談を精力的に行う岩室紳也医師の思いを込めたメールニュース! 性やエイズ教育にとどまらない社会が直面する課題を専門家の立場から鋭く解説。
Shinya Express (毎月1日発行)
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~今月のテーマ『言える人が、言えることを、言い続ける大切さ』~

●『生徒の感想』
○『ホームページがダウン』
●『ネット業界も医療業界も同じ?』
○『どん底で思ったこと』
●『臨床と公衆衛生の二刀流』
〇『救ってくれた伴走者』
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●生徒の感想
 コロナの予防は自分では完璧だと思っていても、意外な場所に落とし穴があるのだと思いました。(高校2年女子)

 今日の講演を聞いて、私は今の時代の人は恥ずかしいとか、そういう理由で性のことを友人たちと話をする機会が昔よりも減っているということがわかりました。(高校2年女子)

 今回の講演を聞いてもう少し素直になってみようかなと思いました。性別関係なく、コミュニケーションをとっていけばしっかり人間関係は作られていくし、辛い時、お互い支え合えると思うのでもっと人脈を増やしたいです。(高校2年男子)

 高校2年生17才になって2022年4月には成人年齢が18歳に引き下げられることもあり、自分も「大人」側になるのもそう遠くはないです。今回の講演で「大人」になることの本当の意味が少しわかった気がしました。(高校2年女子)

 人は一人では生きられないというのが心に刺さりました。(高校2年女子)

 学校では友人とお互いに興味を持ち合い関われているが、教習所などの知り合いがいない場所で活動をするときは居場所がないと感じ、スマホに依存してしまう。(大学2年女子)

 1人でいることが苦手だった私は、仲の良い友人が知らない友人と話しているとき、輪に入ろうと必死に話を合わせていた。周りから見れば仲が良い人たちであったが、実際は、私は知らない友人とは価値観が合わず、話を合わせることが非常にストレスになり、体調を崩すほどになってしまった。気づいた時には離れていればよかったと後悔したが、すでに遅かった。自分のつながり・絆・居場所を求めるばかり、自分のこころの優先順位が低くなり、価値観が揺らいでしまった結果である。(大学1年女子)

 こうやっていろんな感想をいただくと、講演をやっていてよかったと思えますし、続ける力だけではなく生きる力ももらいます。ところが講演活動に支障が出るアクシデントがありました。これまでの紳也’sホームページ(http://iwamuro.jp/)が突然ダウン。講演依頼も相談も受け付けられない状況になり、「これからどうしよう」と考えてしまいました。
 そんな中、66歳になった自分だからこそできる、しなければならないことがあることに気づかされました。そこで今月のテーマを、「言える人が、言えることを、言い続ける大切さ」としました。

言える人が、言えることを、言い続ける大切さ

〇ホームページがダウン
 2021年10月5日に新型コロナウイルス感染のデータをアップしようとHPにアクセスしたら「データベース接続確立エラー」の表示が。慌ててNiftyのサーバーを見ると次の掲示が(抜粋)。

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平素は@niftyホームページサービスをご利用いただきまして、誠にありがとうございます。
2021年9月末(実終了対応は2021年10月4日)をもちましてMySQL5.5の提供を終了いたしました。終了に伴いご利用できない等のお問い合わせをいただきましたため、ご確認いただきたい点についてご案内いたします。お手数をおかけしますが、管理ページの「データベースの設定」から新たなデータベースの作成をお願いいたします。
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 慌ててサポートセンターに連絡しても「事前に通知していた」「切り替え作業をしなかったあなたが悪い」と門前払い。長年、独学でHPを作ってきたのですが、正直なところ「MySQL」と言われても何のことかわからず、また事前にインフォメーションがあったとのことでしたが、「WordPressを使ってホームページを作っている人は注意してください」と言った丁寧な説明がなかったので、そのインフォメーションを見落としていたようでした。

●ネット業界も医療業界も同じ?
 仕方がないのでいろんな伝手を頼って相談をしましたが、親身に相談に乗っていただき、ホームページの移管の手順があること等はいろいろ勉強になったものの、「最終的には100万円以上かかるでしょうし、それでも復旧できるという保証はありません」と言われてしまいました。インターネット業界は、「依頼者の囲い込み」には熱心ですが、「自分でやる人は自己責任でやりなさい」ですし、他者のトラブルの予防に対しては全く関心がない世界だと感じました。
 医療業界も実は同じだと反省。医者は自分が対応できる範囲については患者になって欲しいので丁寧に対応しますが、自分が対応できない、あるいは対応したくない病気については「専門外ですから」と患者さんを突き放します。先日もHIVに感染した人が紹介されてきましたが、相変わらず診療してくれる医療機関が増えません。今回、このような患者さんの気持ちになるとともに、「これからどうしよう」「復旧に時間をかければかけるほど人とのつながりが途切れる」「お金をかけてもHPにアップしていたものは回復しない」「バックアップを取っていなかった自己責任」といろんな思いが交錯し、久しぶりにどん底気分を味わっていました。

〇どん底で思ったこと
 66歳と言えば定年を過ぎ、引退をしてもおかしくない年齢です。この際、スパッといろんなものを切ってしまうということも考えましたが、悶々としていた自分を救ってくれたのが共同通信社の記者している高校時代、同じ寮で生活していた友人でした。「公衆衛生」に関する20回の連載の依頼を受け、一気に書き上げる中で気づかされたのが、自分にしか言えないことがあるということでした。
 先日もある保健所長が「新型コロナウイルス対策で首長がわかってもいないのにトップダウンで逆効果の命令を出して困る」と訴えていました。確かに組織にいるとなかなか思ったことを正直に言えないものです。しかし、それなりの経験を積み、もはや組織からの排除を恐れなくてもいい私であれば、忖度することなく発言ができます。言える人が、言えることを、言い続ける大切さを再確認させていただきました。

●臨床と公衆衛生の二刀流
 今回の新型コロナウイルス対策はもちろんのこと、岩室紳也がこれまで取り組んできたHIV/AIDSも、子どもの包茎も、前立腺がん検診も、本当に住民、患者一人ひとりに必要な情報が伝わっていない故の混乱と犠牲が繰り返されています。ところが、その混乱に気が付いていない専門家や医者が数多くいます(苦笑)。
 臨床、すなわち患者の治療に携わっている医者は、先達によって方法論が確立され、かついろんなレベルで承認された治療法の技術的サービス提供者です。だからこそ誤診や間違った治療をしないための勉強は欠かさず重ね続ける必要がありますが、実は勉強する材料はいろんな人たちによって事前に山ほど用意されています。私がHIV/AIDSや泌尿器科の診療をする際にもやはり日々勉強です。
 一方で公衆衛生や予防対策は実は簡単ではなく、数多あるリスクを一つずつ減らしていく取り組みの集合体です。予防と聞くと、かつての私を含め多くの人は簡単なことだと思うようです。しかし、簡単ではないことは今回の新型コロナウイルスの状況を見れば一目瞭然です。予防の奥深さを理解できていない医者が多い中、これからも医師頭の人たちを相手に、市民が理解でき、かつ実践し続けられる情報伝達の大切さを伝え続けたいと思っています。臨床と公衆衛生の二刀流を実践し続けている岩室紳也だからこそそのことを言い続ける役割があることに気づかされました。

〇救ってくれた伴走者
 結局、人とつながっていることが楽しいし生きがいなので、お金云々ではなく、つながる場面を作る手段となっているHPが必要不可欠という結論に至りました。で、HPはどうなったのか。インターネットの専門家で、AIDS文化フォーラム in 横浜の運営委員でフォーラムのHP持ち上げてくださった宮崎豊久さんに状況を相談したところ、レンタルサーバーを使えば、セキュリティの高いサイトを簡単に作れることを教えてもらいました。前からセキュリティの高いサイト(https)に移行したいと思っていたのですが、大会社であるはずのNiftyの対応は遅く、やきもきしていました。もっと早く宮崎さんに相談して教えてもらえばよかった、というのは後知恵。
 さらに全部ではないですが、今では直接アクセスできない旧HPが何とネット上で見られるサイトの存在を教えてもらいました。そこからコピペを繰り返すことでかなりの情報を復旧させることに成功しました。
ということで、このメルマガに間に合うように何とか1か月以内に、独自ドメインを移管し、https化も果たしたiwamuro.jpでこのメルマガを配信することができました。すごいことですよね。
 ますます自己責任社会になってきたなと思う一方で、つながりのありがたさを実感させられた1か月でした。宮崎さんをはじめ、直接、間接的に支えてくださった方々、ありがとうございました。