紳也特急 35号

〜今月のテーマ『エイズのいまを考える』〜

●『コンドーム装着法入りビデオ』
○『エイズのいまを考える』
●『AIDS文化フォーラム in 横浜』
○『プログラムの多様性がエイズそのもの』
●『エイズ対策に求められているもの』
○『多様性を受け入れないのは大人?』
●『若者が求めているメッセージ』
○『HP読者からの手紙(嬉しい包茎の話)』

◆CAIより今月のコラム
 「若者をとりまく、性とHIV/AIDSの情報環境」

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●『コンドーム装着法入りビデオ』
 HIV/AIDS、若者の性感染症が相変わらずの勢いで増え続けています。予防はノーセックスかコンドームしかありません。しかし、わかっているけどこれが教えにくいんですね。一生懸命予防を教えてくれている大人も多いのですがまだまだ少数派です。ではどうすればいいのでしょうか。今まで性感染症やエイズの状況に危機感を持っていたけどこれ以上手をこまねいている訳にはいかない・・・・と思いつつ、でも自分がコンドームを教えることはできない。そんな学校現場の苦悩を受け止めて(?)コンドーム装着法を学校現場に広めようと立ち上がってくれたのが教科書を作っている出版社2社でした。大修館書店と一橋出版が授業の中で使える20分物のビデオ・DVDを作るに当たってコンドームの達人、岩室紳也に監修・出演を依頼してきました。大修館書店のビデオ(エイズ・性感染症予防)は既に発売されました(一橋出版のDVDは秋の発売)。全国の学校で先生が話さなくてもこの岩室がコンドーム装着法を実演しているビデオ・DVDの映像が流されるというのは若者達にとって吉報となること間違いなし(と思いませんか)。
 コンドームを教える教材も揃ったところでエイズ教育が進むことを祈って、今回は「エイズのいまを考える」としてみました。

○『エイズのいまを考える』
 アフリカの某国では成人の40%が、中国で150万人が、日本では推定5,000人に1人がHIVに感染。と言われても・・・・・・・・自分は、恋人は、家族は大丈夫と思っています。学校現場ではエイズ教育が行われるようになって何年も経過しました。初期の頃のエイズ教育を受けた世代が次から次へとHIVに感染しています。どうしてなのでしょうか。

●『AIDS文化フォーラム in 横浜』
 今年も8月に「AIDS文化フォーラム in 横浜」
( http://www.yokohamaymca.org/AIDS/ )が開催されます。

日 程:2002年8月2日(金)〜4日(日)
場 所:かながわ県民活動サポートセンター
    〒221-0835
     横浜市神奈川区鶴屋町2-24-2
      かながわ県民センター内
入 場:無料
主 催:「2002AIDS文化フォーラムin横浜」組織委員会
共 催:神奈川県
後 援:横浜市、川崎市、横須賀市、相模原市、横浜商工会議所(予定)

お問合せ先:「AIDS文化フォーラムin横浜」事務局
〒231-8458 横浜市中区常盤町1−7
横浜YMCA  高橋亮 大江浩
TEL:045-662-3721
FAX:045-651-0169
E-mail:abunkaf@yokohama-ymca.or.jp

 このフォーラムは1994年横浜で開催された第10回国際エイズ会議が入場料7万円と高く、一般市民にとっては到底参加できるものではないという危機感、さらにはHIV/AIDSについてもっと市民レベルで理解を広めなくてはいけないという主旨で始まりました。1994年当時といえばエイズについて詳しい人はほんの一握りの医療関係者とボランティアだけでした。その人たちから情報をもらおうとしても、カミングアウトしていたHIVに感染している人たちに会ったり、話を聞いたりするような場もない状況でした。私も1990年頃から性教育の延長線上でエイズ予防、コンドーム装着を学校現場で話してきましたが、1994年まで実際にHIV(+)の人に会ったこともありませんでした。当時の私は「コンドームの達人」と称してエイズ予防に一生懸命取り組んでいましたが、その年初めてHIV(+)のパトと握手しただけでパニックになったとんでもない医者でした(詳細は紳也特急1号に)。そんな私がAIDS文化フォーラム in 横浜に関わるようになって随分意識が変わりました。

○『プログラムの多様性がエイズそのもの』
 AIDS文化フォーラム in 横浜の特徴はHIV/AIDSに様々な角度から関わる団体・個人がボランティアとしてセッションを担当していることです。運営委員会主催のプログラムもありますが、それもプログラムの中の一つでしかありません。プログラムの中味は感染している当事者主催のものから、NPO、ボランティア教育、医療、セクシュアリティ、国際問題、等、様々な視点のものが開催されます。一つの団体、一個人がイベントを開催するとどうしてもその団体、個人のカラーが出てしまいます。岩室紳也がエイズの話しをすればどうしても「コンドーム」が前面に出ているという印象を持つ方がいます。しかし、様々な団体・個人がプログラムを構成していることでHIV/AIDSに関する多様な立場多様な視点が見え、エイズに関わる多様性を理解できるのがこのフォーラムの特徴です。

●『エイズ対策に求められているもの』
 ところが、その多様性にこそエイズ対策の難しさがあります。1999年に後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針のなかで、青少年、外国人、同性愛者、性風俗産業の従事者及び利用者について個別施策層という考え方が当時の厚生省から示されました。4年経ったいま、個別施策層として積極的な対応がなされたのは実は同性愛者だけではないでしょうか。それでさえも十分な効果をあげることができず男性同性愛の方の感染拡大の勢いは止まりません。青少年対策として学校現場で一生懸命取り組んでいる先生方も多いのでしょうが、先日中学校でマイクを向けた生徒が「エイズは空気感染」と言ったのでビックリ仰天しました。その子に必要な情報は「これからあなたがするセックスでHIVに感染する可能性がある。予防はノーセックスかコンドーム」ということなのにどうして「空気感染」といったウソが刷り込まれてしまうのでしょうか。彼女の横にいた生徒は「違うよ、血、血」と言っていました。これもまたエイズの多様性に振り回された大人によって刷り込まれた情報なのでしょう。

○『多様性を受け入れないのは大人?』
 エイズは今まで考えたこともなかった、考えたくもなかった多様な問題をわれわれに問いかけています。薬害エイズ(行政の責任)、男性同性愛というセクシュアリティ、若者の性行動の低年齢化、性風俗、性感染症、性教育、人権偏見、差別、共生。その結果、われわれ人は「エイズ対策」の目的、目標を見失ってはいないでしょうか。われわれはエイズの多様性を理解しようとしていろんなことを学び、いろんな方法でエイズを語ってきました。AIDS文化フォーラム in 横浜も多様性の理解という点で重要な役割を担っています。しかしフォーラムが9回目をむかえたいまでも、日本でHIV感染拡大に歯止めがかかっていない状況をどう考えたらいいのでしょうか。多様性を学び、多様性を受け止めることが求められているのは実は偏見、誤解に満ちた大人たちだけではないでしょうか。いまの若者たちはエイズに対しても白紙の状態です。ここが重要です。偏見、誤解があるとすれば大人たちに刷り込まれたものです。子供たちにエイズを通して人権を教える必要はないと思っています。セクシュアリティについても「ゲイでもいいじゃない」と思っています。そんな彼らにあなたはHIV感染予防について、いま、何を、どう伝えますか。

●『若者が求めているメッセージ』
 若い人がHIVに感染しないためには「ノーセックス」か「コンドーム」しかありません。よくある「エイズ予防にコンドーム」というメッセージでは「エイズは自分と無関係」と思い込んでいる人には効果がありません。もっともっとシンプルに語りませんか。シンプルなメッセージを若い世代に送り続けませんか。
 「するなら着けようコンドーム」。
 「するなら着けようコンドーム」。
 「するなら着けようコンドーム」。
 「するなら着けようコンドーム」。
 「するなら着けようコンドーム」。
 もしこのキャッチフレーズが連日テレビから、ラジオから流れ続けたらコンドームをしたセックスが当たり前のことになります。厚生労働省大臣。そのような状態を作り上げない限りHIV感染の拡大に歯止めはかかりませんよ。政府広報が取り上げてくれると本当にありがたいのですが・・・・。

※「するなら着けようコンドーム」は着メロに!(CAI的発想?談)

○『HP読者からの手紙(嬉しい包茎の話)』
 はじめまして、岩室先生。本日はお礼を申し上げたくメールしました。
 先生のHPを覗いたのはつい昨日6月29日の事なのですが、なんと小4の息子のおちんちんが見事に顔を出したのです(笑)。本当にありがとうございます。この息子が生まれてから色々と気に病むことのひとつに包茎がありました。自分なりに調べた結果真性包茎の形でした。全然むけずおしっこをする時は少し先が風船のようにふくらんでいました。ただおしっこが出づらいということはなく、炎症を起こすこともないので泌尿器科のお世話になることもなくやってきました。小1になった時一度神経性頻尿になりました。そのとき初めて泌尿器科に見てもらいました。その時、はじめに見た先生は頻尿はすぐ治るだろうから次は包茎の処置をしましょうとおっしゃいました。そして次回病院に行ったら今度は前と違う先生で、このぐらいでは処置する必要ないですとそっけなく言われてしまいました。怯えて泣く息子をなだめて連れて行った私は呆然として帰宅しました。一体何を信じればいいのか・・・。同じ病院の中でも医師によって考えもまちまちとは。そして気がかりながらも月日は流れて息子は小4になりました。
 三日前やはり少しむく練習した方がいいのでは思い立ち息子と試行錯誤。素人判断ではよくないと、ネットで探して岩室先生のHPを見つけたのは昨日でした。そしてやっぱり練習した方がいいんだと確信した私は息子と夫とついでに妹にも説明してムキムキレッスンを本格的に自信を持って始めました。そしてついさっき、お風呂場から息子の喜びの叫び声、「少し頭が見えたよー」の言葉が。びっくりしました。私も夫も何より息子本人が感激していました。中学になる前には病院で処置をしなければと半ば覚悟していたのでもう手放しで喜んでいます。本当にありがとうございました。

追伸
・7月3日水曜日NHKの首都圏ニュース(18時10分〜)でエイズ・性感染症予防に取り組むコンドームの達人が放送されるかもしれません。首都圏の方だけの限定情報ですが、よかったら見てください。
・紳也’s HP( http://homepage2.nifty.com/iwamuro/)のカウントが開設以来6ヶ月で10,000を超えました。ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。

◆CAIより今月のコラム
 「若者をとりまく、性とHIV/AIDSの情報環境」
                        CAI&岩室紳也

 「あなたは性の情報、もっと具体的に言えばSEXの仕方を何処で仕入れましたか?」
 1972年生まれの私は間違い無く、こう答えます。「アダルトビデオです。」と。小学校高学年で我が家にビデオデッキが来て以来、当時の私達をとりまく性情報が今までに無いメディアの出現で親の目を盗めば、いつでも他人のSEX(動画)を見れるようになりました。そして思春期を迎えた青年達のSEX観は「アダルトビデオ」そのものになりました(とくに男)。
 では、1960年代生まれの人達のSEX観はどのような情報環境で形成していったのでしょうか?また、高度情報化時代に思春期を迎える青年達は?

 現在、発表に向けての最終的な詰めの作業に入っています。俗に言う「エロ本」を始め「アダルトビデオ」「インターネットのアダルトページ」を主にCAIメンバーの大学生を中心に調査し「若者をとりまく、性とHIV/AIDSの情報環境」の問題点や疑問点等を岩室医師をはじめ会場の方々と考えて行きたく思っております。

AIDS文化フォーラム in 横浜へ御来場の際には是非御参加お待ちしております。

発表日時 2002年8月4日 13:00〜15:00
発表会場 403

                     渡部享宏(わたなべたかひろ)

子「ねぇ、”せっくす”ってどうやってするの?」
親「そうね。インターネットで調べなさい。」

そんな時代が来てしまうのかも知れません。