紳也特急 64号

〜今月のテーマ『指導者? それとも支援者?』〜

●『世界エイズデー』
○『ブッダがあだ名』
●『朝礼での礼拝』
○『宗教は人の幸せのため』
●『ピルも中絶』
○『医療関係者は指導者ではなく支援者に』
●『飛行機の中のプライマリケア』
○『一人ひとりが人のために』
●『朝礼での礼拝』

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●『世界エイズデー』
 今年もまた12月1日を迎えました。今年は厚生労働省主催の世界エイズデーのイベントでは飯島愛さん、俳優の昭英さん、長谷川博史さんとのトークでした。その一部はCAIの協力で近日中にエイズ予防財団のHPからアクセスできるようにする予定です。乞うご期待。
 ところで「12月1日がどうして世界エイズデーになったのですか?」と聞かれわからなかったのでエイズ予防財団に教えてもらったら「理由はないようです。WHOが○○デーとしている中でたまたまゴロがよく、空いていたのでその日にしたらしいですよ」という答えでした。とにかく、世界エイズデーというのが定められて何年も経ち、毎年多くのお金をつぎ込んでいるのに「今年も過去最高を更新」という状況をどう考えればいいのでしょうか。
 国のエイズ対策の担当者の方も一生懸命考えてくださっていますし、一人ひとりがいろんなアイディアを出し合っていますが、何となくエネルギーが集約されず、「そしてエイズは蔓延した」という状況を迎えそうです。MSM(男性同士でセックスをする人たち)の人口を男性200人に1人としても、既にMSMの1%、100人に1人が感染してしまったという状況です。これはMSMの方々が検査を受けている現われでもあるのですが、世界の人口の1%が感染していると言われる中で、日本でも同様の状況が起きてしまっています。
 何とかしなくてはと思い講師をつとめさせていただいた性感染症予防の研修会で興味深いやり取りがありました。質問に立った若い女性は「私たちは助産師を目指してキリスト教関連の学校で学んでいます。そしていろいろディスカッションする中で中絶に反対する気持ちになりました。ところが今日の研修会での話は中絶を認めているような発言が続き、つらくて何人かは途中で帰ってしまいました。」と涙ながらに訴えていました。何だかへん!!!
 そう感じ今月のテーマは「指導者? それとも支援者?」としました。

「指導者? それとも支援者?」

○『ブッダがあだ名』
 何十年ぶりかに自分がケニアの小学校時代に「Budda・ブッダ・仏陀」というあだ名だったことを思い出しました。当時はアジアの人間は仏教徒と言われて当然という思いがあって特段『宗教』ということを意識していませんでした。ケニアから日本に帰る際に立ち寄ったタイで横たわっている仏像を見て「Buddaはこういうものなんだ」と何となく思っていました。そもそも父が亡くなるまで岩室家は仏教だが宗派が何かも知りませんでしたし、仏教がどのような意味を持つのかも知りませんでした。ただ、ケニアの小学校は現地のケニア人が大半でしたがで30数カ国からの生徒がいる中で、不思議とお互いを区別する指標が「国籍」と「宗教」でした。

●『朝礼での礼拝』
 宗教についてほとんど思い入れがない私は朝礼でキリスト教的な礼拝があっても「この学校ではこうするものだ」という程度の理解でいましたが、よくよく考えてみると、そこにはヒンズー教のインド人、ムスリム(イスラム教)のケニア人やパキスタン人、ユダヤ教のイスラエル人、キリスト教のイギリス人やアメリカ人、仏教の日本人、等々、いろんな宗教、宗派の人がいたと思います。しかし、キリスト教式の朝礼があってもみんなそんなものだと思っていました。また、個々の家族と親しくなるとその家の宗教的な背景が見えてきますが、子供にとっては「生活の一部が少し違うだけの友達」でした。

○『宗教は人の幸せのため』
 話を戻して、「妊娠中絶に反対している私たち助産師を目指している学生は・・・・・」という話を聞いた時に思わず平成16年6月に書いたカトリックの神父さんたちの会で学んだことを思い出しました。カトリックはコンドームも同性愛も教義としては認めていません。しかし、実際には洗礼を受けた信者の中にもゲイの人も、HIVに感染した人もいます。それどころか神父さん自身がゲイであったということもあり、ご本人だけではなく、多くの方が苦しんだこともあるようです。しかし、さすが長く続いている宗教だけあった、現実問題として危機的な状況に陥っている開発途上国での信者獲得をどうするか、そして何よりこの宗教を布教することによる幸せの広がりをどう評価するかが大きな問題となっています。
 宗教は人を幸せにするツールのようなものですが、現実問題として宗教が原因で戦争が起こることが少なくありません。そのため私のように宗教をよくわかっていない者が宗教を論じるのはいかがなものかと思います。ただ、他分野はいざ知らず、医療者が自分の信仰を盾に提供する医療の範囲を狭めてしまったらどうなるのでしょうか? 「割礼は当然」と親に押し付ける泌尿器科医がいたとすればこれは大問題になってしまいますよね。

●『ピルも中絶』
 先に紹介した「命の誕生を支える助産師」を夢見てきた学生さんにとって、「中絶は悪」と教え込んだ学校の先生の話はすごく納得できるものだったようです。しかし、ある産婦人科の先生は「ピルも実は受精卵の着床阻止という作用があるので見ようによっては中絶薬」という議論もあることを紹介し、中絶手術に反対しつつもピルについては反対していない学生さんやその指導者の方の科学的な詰めの甘さをやんわりと指摘されていました。さらに「産婦人科の外来を実際に見てもらうとこのような悠長なことは言っていられない」という危機感いっぱいの話をしていただきました。

○『医療関係者は指導者ではなく支援者に』
 個人的に中絶に反対するか否かの価値観は全く問題はないのですが、中絶件数がこれほど多い日本で、中絶が一定の条件下で認められている日本で、しかもピルが認可されている日本で、助産師を目指す学生さんが中絶の話が耐えられず研修会を退席するというのはどう考えたらいいのでしょうか。そもそもわれわれ医療関係者は患者さんたちに自分の価値観を押し付けていいのでしょうか。中絶を希望されてきた患者さんに「どうして生まないのですか。命の大切さを考えたことがあるのですか」とでも言うのでしょうか。だいたい医療関係者は患者さんの選択を「指導」するほどえらい存在なのでしょうか(笑)。

●『飛行機の中のプライマリケア』
 ここまでを飛行機の中で書いていた時に、「失礼いたします。当機の中でけがをされた方がいらっしゃいます。眼科、もしくは外科の先生がいらっしゃいましたら乗務員に声をかけていただけますでしょうか。」というアナウンスがありました。ワインをもう一本飲もうと思っていた時でしたが、すぐに手を挙げて対応したら、メガネを壊して目の上を1センチほど切り、目の中にガラス片が入った様子の患者さんでした。偶然自分のカバンの中に入っていた季節はずれの花粉アレルギー用の目薬で目を洗浄し、診療所時代に学んだ小外科の処置をしてとりあえずプライマリケア医として最低限の処置を済ませました。確かに何百人もいる飛行機の中でこのような処置が出来る人はそうはいないかもしれません。そのため「先生ありがとうございます。お名刺をいただけますか。」とスチュアーデスさんも丁寧に扱ってくれます。しかし、所詮、洗浄、消毒、傷寄せをしただけで、医者がいなくてもそれなりに消毒して圧迫していればそれで済んでいたと思います。お産だって確かに助産師さんや産婦人科の先生の力は大きいですが、ほとんどの場合、人は専門家の手助けなく出産はできます。
 その時に思い出したのが診療所時代に患者さんに教わった「医者のあるべき姿」でした。「先生は居てくれるだけでいい」という言葉でした。末期の患者さんに対して医者が出来ることはほとんどありません。しかし、地域に、傍に医者が住んでいて、万が一亡くなった時に「頑張りましたね。ご本人も、ご家族も。」というだけで医者の存在意義があるようです。Dr.コトーを見ているとすばらしい技術が必要だと思われるかもしれませんが、実は傍に寄り添う、手当て(手を当てるだけでもいい)をするのが医療関係者の役割だったとあらためて思い出させてもらいました。

○『一人ひとりが人のために』
 個人がどのような価値観を持とうが自由です。しかし、医療関係者は苦しんでいる人に「指導」するのではなく、その人に寄り添い、その人を「支援」することこそが本当に求められている役割ではないでしょうか。久しぶりに何もないところで救急医療に携わって何となくそう思いました。
 皆さんはどう思われますか。

◆CAIより今月のコラム

「ネットで検索するH?」

 この間ふと気がついた事があります。今では一般的な『出会い系サイト』以前そこに、私は関与していた事があって、(まぁいわゆるアレです)そのサイトの内情としては『H』『セックス』を求めてやってくる男性が多いのですがその中の会話には「Hしよ〜!」「Hした〜い!」なんて会話が多いのが事実です。そこで私はふと『H』って何だ?と気がついてしまったのです。
 一般的には「セックスしよ!」ではなく「H(エッチ)しよ!」なんて言い方しますよね?私はその『H=エッチ』って何?と思ったのです。この『H=エッチ』の語源について気になってしまったので自分なりに考えてみた結果「へテロ」、又は「エロティック」(エロティック→エロチック→エッチ)から来てるものかな?なんて思っていたのですが、彼氏にも相談してみた所「ホモ」「変態」という言葉からきているのじゃないのか。。と言う意見を挙げてくれました。なるほどー。。。なんて思って早速、便利なインターネットを使って検索し、一番多かった説が、変態をローマ字にして「hentai」の頭文字のHから来ていると言う説が多かったのです。それと助平(すけべえ)を英語に訳してHelpFlatだからその頭文字のH。。。という説や、イタリア語で「刺激する」という意味の「エッチターレ」あるいは「興奮」という意味の「エッチタトー」に由来しているのではないかという説も載っていました。どれが本当なのかは結局分からなかったのですが一番多い説は『変態=hentai』という結果でした。

 皆さん知っていましたか?結局私個人としての意見は「日本語って面白いものですねー!」という所に収まってしまいましたが無駄知識を増やすのにはいい勉強にはなりました。それと話は少しずれますが、検索している中に死語の話も載っていて今や使わなくなった A=接吻、B=愛撫、C=性交なんて載っていてかなり懐かしさを覚えました。これもいったいどこからきているのでしょうね?次なる無駄知識を求めてネット検索!?    

                               yuka