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■■■■■■■■■■■ 紳也特急 vol,316 ■■■■■■■■■■
全国で年間200回以上の講演、HIV/AIDSや泌尿器科の診療、HPからの相談を精力的に行う岩室紳也医師の思いを込めたメールニュース! 性やエイズ教育にとどまらない社会が直面する課題を専門家の立場から鋭く解説。
Shinya Express (毎月1日発行)
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~今月のテーマ『なぜインフルエンザが大流行するのか』~
●『生徒の感想』
○『インフルは常に子どもが流行の中心に』
●『亡くなるのは高齢弱者』
○『新たな変異株(サブクレードK)だけが問題!?!』
●『ワクチンが持つ意味』
○『微量感染で免疫を』
●『微量感染のコツ』
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●生徒の感想
語彙力がなくてうまく言えないのですが、先生のお話で感じ取れたことがたくさんありました。ありがとうございました。伝わらないかもしれませんが、感動しています。今日得たものは一生忘れないと思っています。(高2女子)
普段は耳にしないような貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。正直、社会では性について遠ざけられているので、本当にこういうお話を聞くことがなく、お話の内容もほとんど聞いたことがないことばかりでした。いずれ僕もパートナーができたら、今日学んだことをよく思い出したいです。(中3男子)
自分の意見など、嫌なことは嫌と言えるようになろうと思いました。(中3女子)
最近よく、自分はなぜ他人と違う発想をしてしまうのかを考えています。この3つの感想、「今日得たもの」「普段耳にしない」「自分の意見」を読ませてもらいながら、直接関係するようには思えないかもしれませんが、今大流行しているインフルエンザについて、どうして多くの専門家もマスコミも「マスク」「手洗い」「換気」「ワクチン」しか言えないのかを考えていました。そこで今月のテーマを「なぜインフルエンザが大流行するのか」としました。
なぜインフルエンザが大流行するのか
〇インフルは常に子どもが流行の中心に
いま、インフルエンザが全国的に大流行しています。11月30日のNHKのニュースでも「インフルエンザ 去年より約1か月早く流行 特に子どもで広がる」と報道されていました。去年より早い流行の話は後ほどするとして、「子どもで広がる」というのはインフルエンザの感染経路を考えれば当然のことです。
インフルエンザは人から人にうつるウイルスですので、一番密集した集団で生活しているのが子どもたちですので「子どもで広がる」というのはある意味「いつものパターン」です。しかし、先日お邪魔した、学級閉鎖になった学校では設置されている換気扇も、サーキュレーターも使っていませんでした。要するに一番広がる学校という集団で感染予防対策ができていない、というか学校という集団では感染予防対策はできないと考えた方がいいのかもしれません。
●亡くなるのは高齢弱者
感染する中心が子どもたちなのに対して、実は死亡率が高いのが高齢者です。人口100万人当たりのインフルエンザ死亡者数は0~9歳が1.9人、20歳代で0.4人と子どもでも若者でもインフルエンザで亡くなる方はいます。一方で死亡者数は、60歳代で10.9人、70歳以上で118.7人と高齢になればなるほどインフルエンザで亡くなる方は多くなります。では、どのような方が亡くなっているのでしょうか。
コロナ禍で日本人の平均寿命が男女とも1歳ほど低下したにも関わらず、男女とも健康寿命は横ばいでした。健康寿命が横ばいということは健康で介護等が必要ではない人にはコロナ禍はそれほど大きく影響していないと言えます。それに対して、要介護の方々のほとんどがワクチンを接種していたはずですが、それにも関わらず早世、すなわち寿命が短くなったと言えるデータです。自立している高齢者は運動習慣、文化活動、ボランティア・地域活動のどれが欠けてもフレイルになる、体が弱る可能性が高くなるというのは様々なデータでも示されています。すなわち高齢者を守ろうとして面会制限を含めた様々な対策が取られたにも関わらず、結果として要介護の、高齢弱者の人たちがコロナ禍で早世していました。
ちなみにコロナ禍前にインフルエンザで亡くなっていた方は1,000~3,500人でしたが、2025年は6月時点で既に5,383人です。新型コロナウイルスでなくなった方は2025年6月現在14,037人です。なぜこのような大事なデータは報道されないのでしょうか。残念ながらこのようなデータを気にしている専門家が少ないことの表れだと思いませんか。
〇新たな変異株(サブクレードK)だけが問題!?!
新型コロナウイルスの時もそうでしたが、新たな変異株が明らかになると「変異株で大流行」と大騒ぎしますが、なぜ変異株だと流行するのか、これまでの変異株はその後どうなったのかという報道はありません。さらにインフルエンザが例年年末の11月から徐々に増え、年明けの1月から2月に流行のピークを迎え、夏場はほとんど感染者が報告されず、また次の11月頃から増え始めるのかの理解が浸透していません。
2009年の新型インフルエンザや2023年のインフルエンザが8月から流行しましたがその理由は明確です。2009年の新型インフルエンザ(A/H1pdm09)は新型故に流行前の血液を調べると、ほとんどの人が免疫(抗体)を持っていませんでした。そのため夏場から大流行しました。2023年に流行したA/H1pdm09もA/H3もコロナ禍の自粛の影響もあり、流行前の抗体検査では全年齢で抗体価が非常に低かったことが明らかになっています。一方で2009年に流行したA/H1pdm09は2010年には全年代で抗体価が上昇し、他のインフルエンザ同様の流行になり、さらに抗体価が上昇した2011年、2012年にはほとんど確認されませんでした。一方で流行しなかったため、抗体価が減少し、再び2013年に検出されるようになりました。
新たな変異株か否かを調べることは大事ですが、日本ではウイルスの流行で獲得した免疫力(抗体価)が流行を抑えてくれていることに着目すれば、裏を返せば感染経路対策が十分できていないということでもあります。
●ワクチンが持つ意味
先に示したように、コロナ禍で要介護の人たちが早世し、結果として日本人の平均寿命が短くなっています。早世した人たちの多くはワクチンを打っていたと思われます。すなわち、ワクチンは一定程度重症化を予防したでしょうが、全ての人にとって重症化予防にならなかったというデータでもあります。
高齢者や様々な合併症を持っている方が重症化予防のためにワクチンを接種することを否定するつもりはありません。しかし、2025年6月までに新型コロナウイルス感染症で14,037人の方が亡くなっている事実から、今のような接種間隔でいいのか、今一度検証する必要はないのでしょうか。
一方でインフルエンザも今年の6月までに5,383人が亡くなっていますし、いまインフルエンザが大流行中ということから死亡者数がさらに増えることが懸念されます。では、ワクチン以外で何に気をつければいいのでしょうか。
〇微量感染で免疫を
2009年に流行した新型インフルエンザ(A/H1pdm09)が今や毎年流行し得るウイルスになったのは、多くの人が感染して抗体を獲得したからでした。15~19歳のA/H1pdm09の抗体保有率(HI抗体価1:40以上)を見ると、2009年21%、2010年64%、2011年79%、2012年80%でした。
免疫(抗体)を獲得する方法の1つが実際にウイルスに感染することです。ここでは2012年に15~19歳の80%が2009年に流行した新型インフルエンザ(A/H1pdm09)の抗体を持っているという事実に着目しました。どう考えてもこの年の15~19歳の80%がインフルエンザを発症したとは考えられません。インフルエンザが大流行している現時点で、学級閉鎖、学年閉鎖、学校閉鎖の話は聞こえては来るもののごく一部の話です。すなわち感染し、抗体を獲得している人のほとんどは無症状で抗体を獲得したと考えられます。
コロナ禍ではインフルエンザはほぼ報告されなくなりましたが、その前後の15~19歳のA/H1pdm09抗体価の推移は次のようでした(グラフからの読み取りのため誤差があります)。2018年65%、2019年58%、2020年42%、2021年48%、2022年31%、2023年16%、2024年27%。これらの数字から見えてくることは「感染した人の抗体は意外と長持ち」なのか、それとも「発症するほどではないが感染(流行)はそれなりに続いていた」のかです。いずれにせよ、体内に入れるウイルス量を減らすことで発症を抑えつつ抗体獲得ができると言えますので、微量感染がお勧めということになります。
●微量感染のコツ
とにかく体内に入れるウイルス量を減らすことですが、完全にゼロにすることはできません。なぜならエアロゾルに含まれたウイルスは不織布マスクをしていてもマスクと顔の隙間から入り込むからです。しかし、ちょっとした工夫をすることで体内に入るウイルス量を減らすことが可能です。
マスク:不織布 個包装 外したら捨てる マスクの表面は触らない しない
換 気:空気の流れを創出し、外に出す サーキュレーター 扇風機 換気扇
手洗い:口・目・鼻にものを入れる直前 ポケットに入れたハンカチは使わない
食べ物:飛沫やエアロゾルを付着させない
上記を徹底してもウイルスが体内に入るのは完全には防げませんし、現実問題、上記を徹底することは不可能です。でも一つでもできることを増やせば、それだけ体内に入るウイルス量を減らすことができるということです。
皆さんは何を選択し、実践されますか。岩室はできることを、できる時に、できるよう、日々精進したいと思います(笑)。