前立腺がん検診(PSA検診)は???

PSAによる前立腺がん検診への疑問

一泌尿器科医として前立腺がん死する人を一人でも減らしたいという思いはあります。しかし、以前からPSA検診については疑問がありました(紳也特急81号) 10年以上前から問題点を指摘し続けてきましたが、残念ながら建設的な議論がないまま今日に至っています。そして、多くの方を不安にしたり、混乱させたりしていることを申し訳なく思っています。
最近、多くの泌尿器科医も「過剰治療が多すぎる」と何となく感じていただけているようですが、まだまだ「検診」という名の下でPSAが行われている変な状況が続いています。

いしゃまち掲載記事
前立腺がん検診(PSA検査)を正しく理解するために

データから考える「PSA検査」による前立腺がん検診

簡単に言うと
1.PSAはスクリーニングになっておらず、約50倍の過剰診断、過剰治療になっている
2.PSAは病理学的に「前立腺癌」と診断されるものの80%を見逃す
3.PSA異常なしでも死に至る前立腺がんが少なくない

前立腺がん死亡率の推移
(出展:がん情報サービス

1.死亡率が低下していることは事実。
2.死亡率が低下している理由が重要。
・根治療法
・抗がん剤等の進歩
・他の死亡要因の増加

PSA検診を受けるか否かで迷っている方へ
・病理の専門医も「放置しておけば死につながる前立腺がん」か「放置しておいても死なない前立腺がん」かを見分けることができません
→放置しておいても死なない確率は約98%
・PSAの検査で正常(4ng/ml未満)と言われたから安心できない
→「前立腺がん」を持っている人の80%はPSAが4ng/ml未満
→PSAで「異常なし」と言われた人がその後前立腺がんと診断されることがあります。
→その際、「検診の後に出てきたがん」と説明をされるでしょうが、実は「検診で発見できなかったがん」の可能性も否定できません。

・「前立腺がん」をどうしても発見したい方
→PSAをしないで前立腺生検を受けてください。

PSA検診の結果、精密検査を勧められた、「がん」と言われた方へ
・年代別で「前立腺がん」と診断される確率
→50歳代で10%、60歳代で20%、70歳代で30%、80歳代で50%

・「前立腺がん」と診断されなかった方
→次の年にPSA検診を受けるべきか否かをよく考えてください

・「前立腺がん」と診断された方
→放置しておいても前立腺がん死をしない確率は約98%
→どのような治療を受けるか、経過観察をするかはよく考えてください

避けたいこと、避けられないこと ・誰もが交通事故を避けたい
・交通事故を避けるため、あなたは何をしていますか?
・100%は避けられないですよね。
・自分なりに注意をしつつ、諦めるしかない。
・そう思っている人は間違っています!!!
・家に閉じこもればいいのです(笑)
・誰もが前立腺がんで死ぬのを避けたい
・前立腺がん死を避けるため、あなたは何をしていますか?
・PSA検診で発見されない前立腺がんがあります。
・最初から前立腺生検を受けるしかありません。
・がんが見つかれば、前立腺全摘術、放射線療法、内分泌治療(ホルモン療法)、経過観察等の中から自分なりの選択肢を選びましょう。

どうしても治療を選択する場合に岩室がお勧めする治療の選択順位
1.監視療法
前立腺がんの過剰治療に気づいた先生たちが行っていることです。
「療法」と言いつつ、前立腺がんがたどる経過がわからないので、それを調べる方法です。
このような相談をしてこられる方にいつもお勧めしています。
10年近く、何も変わらず経過している人が多いです。
2.放射線治療
尿失禁等の副作用が少ないので次なる選択肢としてお勧めしています。
3.内分泌治療(ホルモン療法)
すぐにPSA値は下がりますが、ずっと治療をし続ける必要があります。
4.外科手術
「全部とれた」という安心感はあるでしょうが、尿失禁、インポテンツ等、生活の質が著しく低下します。

医学の進歩に期待

・前立腺がん病理のさらなる発展を期待しましょう。
・前立腺がん死する人の早期発見に効果的な検査が完成するのを待ちましょう。
→まったくの「勘」ですが、10~20年ぐらいで何とかなるのではないでしょうか。
・それまで待てない人は、自分の選択を信じましょう。

ちなみに、岩室紳也はPSA検診は受けません。

人間ドックでのPSA検診結果

伊藤一人、他:人間ドック施設における前立腺がん検診アンケート集計報告(第13回調査)-2017年度ー、泌尿器外科、32(8)、1099-1103、2019

人間ドックでのPSA検診結果

・潜伏癌率よりも、精検者中のがん発見率が低いのは何度も受けている人がいるから。

発見された前立腺がんの進行度

・発見時に遠隔転移が認められる人が20人に1人。
・この人たちが以前PSA検診を受診していたかの検討がない。

前立腺がん死する人を早期発見することが目的であれば、何より人間ドック受診時に既に遠隔転移をしてしまっているStageDの人たちの受診歴、PSA値等を丁寧に検証することが重要になりますが検討されていません。
早期発見、早期治療の精度管理のためにも、ぜひ検診の評価のプロを入れた議論をしていただきたいものです。

PSA検診について考えていただける保健医療関係者へ
→一般の方も様々な情報をアップしていますので参考にしてください。

ネットラジオで短く本音トーク
前半は「包茎」、後半が「前立腺がん」

●専門誌での議論
定期購読している「臨床泌尿器科」の2018年12月号に「あなたは考えていますか?前立腺癌検診・生検・治療のQOLと費用対効果」という特集がありました。
問題なのは診断方法でも治療法でもありません。そもそも病理診断自体に問題があるのですが、残念ながらその議論はされていません。

●日本泌尿器科学会総会での発表演題
前立腺癌に対する永久挿入密封小線源治療 当院における最近の治療成績と有害事象の検討
このような発表が他にもありました。
小線源治療の問題点も少しずつ明らかになってきました。