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■■■■■■■■■■■ 紳也特急 vol,321 ■■■■■■■■■■
全国で年間200回以上の講演、HIV/AIDSや泌尿器科の診療、HPからの相談を精力的に行う岩室紳也医師の思いを込めたメールニュース! 性やエイズ教育にとどまらない社会が直面する課題を専門家の立場から鋭く解説。
Shinya Express (毎月1日発行)
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~今月のテーマ『偏見・差別・誤解がなくならない理由』~
●『生徒の感想』
○『対話にならない人』
●『対話の基本は「問い」』
○『「問い」が生まれた背景』
●『「問い」から出発する偏見・差別・誤解の解消』
○『津久井やまゆり園事件に学べない日本』
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●生徒の感想
生徒と対話しながらユーモアや岩室先生の実体験を交えて話していたので非常にわかりやすかった。(中3男子)
対話形式での講座だったので、話が頭に入ってきやすく、わかりやすかったです。(高1女子)
映像や画像を使って説明せず、対話を大切にされている講演会はすごくわかりやすく印象にも残りました。(中3女子)
今まで受けた性教育のなかでも1番ストレートに伝えてくださる講座でした。今までは恥ずかしいと思っていた言葉も先生がすっとおっしゃってるから最後の方はなんとも思わずに聞けていました。(高1女子)
内容は少し過激なものもあったかと思いますが、このような知識はいざというときに備わっていなければならないと思いますし、日本という国が性教育について忌避感を抱いているということを痛感しました。(高1男子)
岩室先生の話し方がとても興味深く。一般的に注目を浴びたければ声を大きくするのが一番だと思うが、岩室先生は淡々と話しコンスタントに笑いを入れることでとても皆の興味を集めていたことがとてもすごいなと思いました。(高1男子)
生徒さんの感想を読ませてもらうたびにいろんな気づきをもらいます。今回、感想の中に「対話」という最近こだわり続けている言葉が出てきて、ふと「なぜ岩室紳也は対話にこだわるのか」を考えました。いろいろ考えを巡らせている内に「偏見・差別・誤解がなくならない理由」にたどり着きました。紳也特急304号で『偏見差別ゼロは無理?!?』を書かせていただきましたが、少し視点を変え、今月のテーマを「偏見・差別・誤解がなくならない理由」としました。
偏見・差別・誤解がなくならない理由
〇対話にならない人
HIV/AIDSに関わる中で、偏見・差別・誤解の塊だった岩室紳也が、気が付けばそれまで持っていた偏見や差別感情から、感染症に対する誤解から解放され、「みんなちがってみんないい」と心から思えるだけではなく、適切な感染症対策について科学的に説明できるようになっていました。自分自身が変われた時期を振り返ってみると当事者の方々と、あるいは科学的事実ときちんと向き合い、対話ができるようになった時でした。
裏を返すとその人の中にある偏見・差別・誤解を解消できない人とは対話が成立しません。その人たちに共通するのが、その人なりの正解を押し付けてくることでした。これは例えばLGBTや障害に限ったことではなく、新型コロナやインフルエンザはもちろんのこと、最近話題になっている麻疹等の感染症の問題でも同じでした。
●対話の基本は「問い」
私は異性愛者ですので、正直なところLGBTの方々のことは理解できないだけではなく、偏見もありました。しかし、ゲイの人に「なんでゲイなの?」と問いかけたら逆に「岩室さんはなんで異性愛者なの?」と問い返された時、自分への問いに返せないのに相手に聞いているおかしさに気づかされました。
良かれと思ってのことでしょうが「LGBT理解増進法」なるものもでき、「LGBTは理解しなければならない存在」になりました(苦笑)。敢えてこのようなことを言うのは、私はゲイの方との対話を通して、「理解できないのは当たり前。ただただ認めればいいだけ」ということに気づかされたのでした。先日も初対面のFTM(トランス男性)の方と話していた時にこの話をしたら強く納得してくださいました。
〇「問い」が生まれた背景
HIV感染に加え統合失調症を合併している患者さんはどこで診療してもらえるといいと思いますか。専門的なスタッフが揃ったエイズ治療拠点病院を標榜する大学病院と思った人が少なくないのではないでしょうか。実際、そう思っている医者が、医療関係者が多いのも事実です。でも私はそうは思えません。なぜなら、いろんな経緯からそのような病院にかかったものの、結果的に治療が、というか、その後のその方の生活が目指した方向には行きつかず、結果的に私の外来に戻ってきた人が少なくないからです。
そもそも統合失調症という診断が正しいのでしょうか。正しいとしたらどうすればその方がそのような病気をかかえながら自分らしく生きられるようになるのでしょうか。医者が処方した薬をただただ飲めば大丈夫なのでしょうか。
敢えてこのように書かせてもらっているのは、現在の精神科医療を否定する気持ちからでもなく、「こうすればいい」という答えを持っているからでもなく、単純に「どうすればこの方が、この方のご家族が幸せに生きられるのだろうか」という、自分自身の中で繰り返されている「問い」への答えがないからです。
●「問い」から出発する偏見・差別・誤解の解消
最近、なぜかNIPT(無侵襲的出生前遺伝学的検査)の報道が続いています。報道内容の多くが認証施設と非認証施設の問題を取り上げていますが、そもそもNIPTの問題はそこでしょうか。国が決めた制度だからその制度が正しく運用されているか否かを検証するのがマスコミという姿勢でしょうか。マスコミとその利用者である国民は常に「そもそもNIPT自体に課題はないのか」という「問い」を持ってもらいたいものです。それこそ「なぜ、いま、紳也特急でNIPTを取り上げるのか」という「問い」を持っていただけた方には感謝申し上げます。「問いから出発」と書きましたが、その逆は「正解から出発」だったり、「思いから出発」と考えています。自分なりの正解に固執する人は偏見・差別・誤解から脱却できません。
NIPTの結果、21トリソミー(ダウン症)と診断された人の内、妊娠中断率が86.9%です。一方で「障害胎児の中絶は『差別』ダウン症の英女性、欧州人権裁に提訴へ」という記事があります。どう思われますか。
〇津久井やまゆり園事件に学べない日本
私が医者になって3年目から赴任した旧神奈川県津久井郡にあり、何回か往診もした津久井やまゆり園で2016年7月26日に起きた殺傷事件の際に、多くの方々に「障害を抱えている方とどう向き合うか」について考えさせられました。機会があることに繰り返し紹介させていただいている、当事者だからこその記事です。
この記事にはキーワードがいくつもちりばめられています。
植松容疑者の「正気」と闘うために
「社会の敵排除」の確信犯
広がる「生産能力ない人は無価値」
取材を受けた最首悟さんの三女はダウン症で複合障害を抱えておられます。どの言葉も重いのですが、植松容疑者が衆院議長公邸に渡した手紙の中で、「施設で働いている職員の生気のかけた瞳」という表現が最も気になったと言います。また、「職員らは過酷な勤務や低賃金に押し込まれてきた。それへの怒りは職員らの共感を呼ぶだろう」と警鐘を鳴らしておられました。実際、津久井郡の4町が相模原市に吸収合併される直前の2005年に津久井やまゆり園は指定管理者制度で社会福祉法人が運営することとなり、当然のことながら職員の給与や待遇は神奈川県職員時代と比べて低くなっています。もちろん正確な金額ではないですが、Copilotに22歳から65歳まで務めた場合の生涯賃金の差額は推計で9千万円でした。
事件が起きると犯人を責めるだけで終わってしまう。制度ができるとその制度の是非はもはや議論にはならない。なぜ「このような犯人が生まれたのか」、「本当にこの制度に問題はないのだろうか」という「問い」をこれからも持ち続けたいと改めて思いました。
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