むく、むかない

むくべきか、むかないべきか

そもそもこのタイトル自体が私の真意を反映していません。

むくのはなぜ、むかないのはなぜ

を保護者が考え、むくという選択をするのであればお手伝いをしますというのが私の真意、姿勢です。

今回のYouTubeは非常に面白いとと思いつつ、これを一気に見てちゃんと私の意図をくみ取ってもらえるのだろうかと思ってしまいました。
YouTubeのように、伝えてから一方的に流される情報だと、映像化されたことをつい「そうなんだと」思ってしまいます。
その背景に、九州大学精神科の名誉教授の北山修先生が指摘された点が非常に重要です。

目から入った情報はわかったような気になる。
耳から入った情報は想像力を育み記憶に残る。

です。

だからこそ、長くなりますが、敢えて丁寧にコメントをしてみました。
もちろん岡田先生からの反論も期待していますし、そもそも岡田先生とは旧知の仲です。
ただ、このように相反する意見の両輪として取り上げられるに至ったのは私の不徳の致すところだと大いに反省しています。

映像の問題点を指摘したいと思います。
内容によっては私のコメントのところで発言しているものもありますが、この映像を1回だけ見た人が話の内容をその前の映像とだぶらせて考えられるとは思えないので、繰り返しになりますが、コメントしました。

1:25
「赤ちゃんの亀頭は皮で覆われている真性包茎→成長すると自然にむけ多くが仮性包茎に」

私の患者さんで、次のような方々がいます。
●初めての性生活でむけたものの、激痛でインポテンツに
●ネット広告に騙され、不要な手術で術後後遺症に苦しむ
「成長すると自然にむけ多くが」とありますが、「どのように成長すれば」、「むける仮性包茎の状態になり、そのことを受け入れられるのか」。
トラブルに巻き込まれる人たちはなぜ巻き込まれるのか。
その人たちは「自己責任」なのでしょうか。

1:35
そもそも「仮性包茎は皮の中を清潔に保て生活や性行為にも支障なし」としていますが、本当にそうでしょうか。
1:55
「仮性包茎は全く問題ない状態」というのは言い過ぎです。

このコメントを書かせてもらった前日、「むくことを知らず」、「かろうじてむける仮性包茎だが勃起するとむけない」、「亀頭部が刺激に弱く、痛くてセックスはおろか、むいてのオナニーも出来ず」、「彼女がたまたま岩室のHPから相談」した結果、次のアドバイスをしました。
●赤ちゃんに行っているむきむき体操と同様、包皮口を徐々に広げる
●赤ちゃんに行っているむきむき体操と同様、亀頭部に少しずつ刺激を与え、ごしごし洗っても平気になるように練習を重ねる
●赤ちゃんには教えませんが、数種類のコンドームを試し、コンドームをつけた状態でオナニーをし射精ができるようにする
このような指導の結果、男性はちゃんとセックスができる状態になり、カップルに「おめでとう」と言っていました。

2:02
「真性包茎 性行為の時に痛み」とありますが、痛まないまま、セックスをし、子どもをつくり
●むくことなく大人になり、真性包茎のまま陰茎がんに
という人がいます。
そもそもむけないから亀頭部に刺激が加わらず痛くないのです。
もちろん亀頭包皮炎等を起こしていれば痛いでしょうがそうではない人も少なくありません。
問題なのは亀頭部を清潔にできず、HPV(ヒトパピローマウイルス)等が原因となり陰茎がんになったことです。

2:25
「真性包茎は保険適応で手術が可能」と聞くと、やっぱり手術と思いますが、私は「真性包茎でもムキムキ体操をきちんと行えば包皮口は広がり、真性包茎も仮性包茎になります」といい続けていますし、大人にもそのように指導しています。

2:37
「乳幼児期にむいてあげると真性包茎を予防できるという考え方があり」と誰が言っているのでしょうか。まるで岩室紳也が言っているような編集ですね(笑)。
私は「乳幼児期の子どもは真性包茎ですが、乳幼児期からむき続けると包皮内を清潔に保つことができる」と言っているだけです。もちろん包皮内を清潔に保つことができるということは真性包茎を回避できているということですが、目的が「真性包茎の予防」ではないことが重要です。

3:02
「やってはいけない」ことをしている岩室です(笑)。
そもそも、「むくことが目的」ではありません。
むけるようになったときに私が保護者に話していることです。
●今日で病院への通院は終了ですが、今日が彼のおちんちんの清潔に保つスタートです。
●自分で洗えるようになるまでは保護者がやってあげ、自分でできるようになったらちゃんと向いて洗うことを教えましょう。
●自分でおしっこができるようになったら、トイレを汚さないよう、むいておしっこをすることを教えましょう
ここまでが習慣化されれば、思春期のマスターベーションも、性生活も大きなトラブルに巻き込まれずにすむと思っています。

3:13
「傷になったり炎症を起こして最初よりもっとくっついてしまうことも」というのは、いきなり全部をはがし、「むけたからもう大丈夫」と言っている医者たちがやっていたことです。
私は亀頭部と包皮をはがすのは、何より慎重な準備過程を経てです。
●亀頭部がある程度刺激に慣れてから。
●はがすのは1mmずつ。
●はがしても子どもが泣かない、あるいは我慢が出来る範囲で。
●抗生物質の軟膏も処方。

6:14
「やり方を間違えると傷がついたりむくんでしまったり」はその通りなので、「正しいやり方」を伝えるのが専門家の役割ではないでしょうか。

8:00
「その1人2人のために90何人が自然に脱転できるのを」
これは一理あるので、最初に申し上げたように「むくべきか、むかないべきか」ではなく「むくのはなぜ、むかないのはなぜ」

8:40
「かんとん包茎」
これはむきむき体操を行う際に必ず保護者にリスクとして伝えなければならないことです。
されにこれを予防や回避するための指導が大事です。
●包皮口が狭い時に無理に亀頭部を露出させず、少しずつ包皮口を広げる
●万が一むけてしまったらすぐに亀頭部を戻す
●その際に陰茎の根元をしっかり持って包皮を強く戻す
●戻らない時は亀頭部を30秒間、子どもが泣いても気にしないで2本の指でつぶし続ける
●亀頭部をつまんでいた指を離すと亀頭部の血液が体内に戻り亀頭部が小さくなっているのですぐに包皮を戻す
ここまでの指導をした上で指導をするのですが、そのような発想はないのですね。

8:46
「緊急手術の適用」と聞くとびっくりですよね。
確かに私も不勉強だった時はかんとん(嵌頓)包茎の緊急手術をしていましたが、今はしていません。
それは上記のように亀頭部をしっかりつぶすと嵌頓を整復できますし、それでも戻らない時はむくんでいる包皮にほんの少し太い針で切開を入れて絞ると溜まっているリンパ液を出すことで包皮を戻すことができます。
保険点数でも「嵌頓包茎整復術」というものがちゃんと認められています。

よく「一般論」や「多くの人は」という方がいますが、そもそも今の時代、中学生に「包茎」の話をすると「ほ・う・け・いって何?」と男子がお互いの顔を見合わせています。

私自身、包茎を含めて性に関わるようになった当初は完全に「正解依存症」でした。
岩室紳也が考える正解依存症とは、「自分なりの「正解」を見つけると、その「正解」を疑うことができないだけではなく、その「正解」を他の人にも押し付ける、自分なりの「正解」以外は受け付けない、考えられない病んだ状態」です。

何を隠そう、岩室紳也は包茎手術の第一人者のつもりで、非常にきれいな包茎手術を多数こなしていました。
しかし、日本泌尿器科学会総会で包茎の手術のビデオセッションで、その後、いろんな意味で教えだけではなく、支えていただいた小児泌尿器科医の先生が「今の包茎手術は不要だと思います」と発言されて衝撃を受けました。

確かに私が考えていた手術適応は、「包皮口が狭い真性包茎」でした。しかし、よくよく考えてみると、狭い包皮口は広がればいいし、そもそも包茎に手術が必要なケースはあるのだろうか、という点でした。

私の外来には様々な障害を抱えておられる方が通っています。
特に知的障害を抱えている方が、成長する過程で包皮内の清潔を保てないことも問題になっています。

ビデオの中でも言っていますが、できる人が、できることを、できる時に、できるようになる世の中になればいいと思っていますが、残念ながらいろんな意味で考えることを放棄している人が増えていると思っています。

でも私は子どもためにむきたいと思う方にはきちんと向き合い続けたいと思っています。