紳也特急 141号

~今月のテーマ『性欲って何?』~

●『学生の感想』
○『日曜日朝5時過ぎの横浜駅』
●『性欲って何?』
○『芽から育つ性欲』
●『思いやりやコミュニケーションが育む性欲』

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●『学生の感想』
★一番考えさせられたのは、「彼氏ができたらしたいこと」に、女の子はSEXしたいは書かないでしょ?ってお話。私はもちろん一緒に遊んだりもしたいけど、彼氏に喜んでほしいって思うからSEXもして喜んでもらえれば嬉しいです。あと、男の子はしたい生き物だと聞いたら、私がしないからって他の子としてしまったら嫌だから。難しいです。
★私はまだ人と交際したことがありません。でも好きな人だっていたし、ものすごくセックスに興味があります。とても、なんです。私はおかしいのかな、とも思います。好きな人がいた時は“あの人に全部ささげたい。全部欲しい”と思っていました。それくらい興味があるのに、怖いと思っています。先生に申し上げたいのは、女にも性欲があるということです。
★私は、付き合ってないけどセックスしている人がいます。私はさみしいから、つながっていたいから、ぎゅってしてほしいから、そうしてほしいけど向こうの求めていることはただやりたいそれだけだと知っています。知っていながらも、つながっていると錯覚していたい。そうずっと思ってきました。これがきっかけとなってかわれればいいと思う。時間はかかるけれど。ありがとうございました。
 ある大学で講演をした後の女子学生からの感想です。女性の感想を読ませてもらう度に、男性である自分はいつになっても女性の性欲は分からないものだと感じます。そもそも「性欲って何?」と思って少し古い広辞苑で調べると「男女両性間における肉体的な欲望」とありました。これもどこか変。そこで今月のテーマを「性欲って何?」として、性欲について考えてみました。

『性欲って何?』

○『日曜日朝5時過ぎの横浜駅』
 始発の新幹線で出かけなければならないため、最寄り駅から始発電車に乗って横浜駅に着いてびっくり。何と若者たちであふれかえっていました。こんなに朝早くからみんなどこに出かけるのだろうと思って、思わずキョロキョロと人間ウォッチングしていてやっと気づきました。彼らはカラオケや飲み屋(これくらいしか思い浮かばないのですが)で夜を徹して遊んでこれから帰る人たち。でも一人ひとりを見ていると結構きちんとした、好感度の高い若者たちで会話もはずんでいました。
 「若いっていいね」と思いながら、地下鉄のホームのベンチでいつものようにパソコンをたたきながら電車を待っていた時に、やはり徹夜帰りで少なくとも付き合っているような雰囲気ではない二人の男女の会話が耳に入ってきました。最初はお互いの仕事や職場のこと、さらには趣味やゴールデンウィークを友達とどう過ごすのかといった会話でしたが、少しずつ女性の方が積極的になり「誘ってくれたらデートに応じるよ」という雰囲気に。その思いが伝わったのか、彼が「連休のどこかで食事に付き合ってくれない」と誘って契約成立。肉食系女子が草食系男子を積極的に攻めてカップル成立に至ったような印象でした。いずれにせよ、この二人にはある程度「性欲」があり、その性欲が二人を引き付けあったことは間違いないので、女性に性欲がないと思っているわけではありません。同じ電車に乗ったこのカップルは、私が新横浜駅で新幹線に乗り換える時にはお互い肩を寄せ合って気持ちよさそうに寝ていました。もっとも、お互いが寝ているふりをしていただけかはもちろんわかりません(微笑)。思わず「お幸せに」と思いながら仕事へと向かう私でした。

●『性欲って何?』
 ではそもそも性欲って何でしょうか。広辞苑の「男女両性間における肉体的な欲望」というのを読んで「男女だけ!!!」と怒っている人もいるでしょうし、肉体的な欲望だけを性欲とすることに違和感を覚えている人もいるでしょう。金銭欲はお金が欲しいこと。食欲は食べ物が欲しいこと。であれば性欲は「性」が欲しいこと? では欲しい「性」って何でしょう。
 異性? 同性? 異性の体? 同性の体? 異性の心? 同性の心? 異性との関わり? 同性との関わり? セックス?
 最初の感想にあったように「私がしないからって他の子としてしまったら嫌」も、「好きな人がいた時は“あの人に全部ささげたい。全部欲しい”」も、「つながっていると錯覚していたい」も性欲。セックスという肉体的な関係性を持ちたいという欲望も性欲。セックスの結果としての妊娠願望も性欲。
 私の講演を聞いた中学3年生の女の子が「先生の話を聞いてる最中の男子の反応を見て、本当に男子はやりたがりなんだなと思いました」という感想をくれました。女性が男性の性欲を知り、女性が男性の性欲を受け入れるというのも性欲。すなわち、「性欲」とは「性に関わる全ての欲望」であり、「性的な欲望を感じること」とシンプルに考えればいいのでしょうか。

○『芽から育つ性欲』
★今中学3年生の私は、なぜかわからないけど、よくそういうこと目当てに話しかけられたり、働かないかと聞かれたりする事がしょっちゅうあります。おじさんとか知らない人にはもちろん「嫌だ」と言えますが、元彼にははっきり「嫌だ」言えませんでした...元彼が私に告ったのは≪好きだからではない≫って事は知っていました。≪やりたい≫って事だけなのも知っていました。だからこそ「嫌だ」と言ったらフラれる・捨てられると思い言えませんでした。4月から高校生になり彼氏がほしいと最近やっと思えてきたのですが、そういうのもあまりやりたいとは思わないし、もしもそーいう場面になったらと考えると中々前向きにはなれません。ちゃんとつけさせる説得の仕方を教えて下さい。
 質問にどう答えたかは想像にお任せしますが、この女の子も自ら積極的に望んではいないものの、性欲の芽があったからこそセックスをしているのでしょう。そう考えるとフラれたくない、捨てられたくないという思いも性欲の裏返し? ただ、女性の性欲は小さな芽から育つものであり、上手に育てないといけないようです。

●『思いやりやコミュニケーションが育む性欲』
★私は過去に嫌な思い出があったのですが、先生が男子に「AV女優さんと現実の女は違う!レイプされても喜ばない!」ってゆってくれて、とーーーってもこころがすっきりしました。ありがとうございます(>_<) 大人になって、もしかしたら高校生の内にSEXすることがあったら、今日の話をしっかり思い出してコンドームもしっかり用意して行いたいです。
 つらい経験を克服しながら次の性(セックス)に対する欲望を持つことができる人もいれば、初体験の時の乱暴なセックスでセックス恐怖症になって男性との付き合いができなくなったという女性もいました。その人も決して積極的にセックスがしたかったわけでもないけど、興味や嫌われたくないといった少し消極的な気持ちの性欲からセックスを受け入れようとしたようです。しかし、その時の痛さや辛さに傷つき、次なるセックスどころか恋愛に対してむしろ拒否的になっていました。その方が拒否的になっていた一番の理由は「彼を楽しませてあげられないと思うから」ということでした。。
 今では処女という言葉は死語のようです。男たちが「やっぱり処女でないと」と言っていた時代は過去のもので、「処女はめんどう」という言葉を聞いたのも10年以上前です。処女という存在が当たり前だったときは、「初体験の時は痛いらしいから優しくしないといけない」というのが男の常識でした。それが、「まさか処女じゃないよね、その年になって」という時代を通り過ぎ、相手が処女かもしれないということさえも思いもよらない男たちが多い時代になった?
 確かに男性の性欲は自己完結型(興奮→勃起→射精→満足→おしまい)です。セックスは相手がある行為であり、相手のことを考えつつセックスをしている男性にとっても、セックスはどこかオナニーの延長線上にあり、結局のところ射精という快感を得ることが主たる目的になっています。それに対して、女性の性欲は自分自身も性的満足を得たいというのもあるでしょうが、相手を楽しませてあげたい、相手に満足して欲しい、相手が自分に関心を持ってほしいという要素も強い関係性構築型のようです。しかし、処女の方とのセックスさえも自己完結型セックスだけで終わり、女性の性欲の芽を摘んでしまう可能性がある時代になってしまったのだとするとどこか変ですね。