紳也特急 170号

~今月のテーマ『おちんちんの先端医療』~

●『大人がダメ!』
○『半陰陽?』
●『ミクロペニス』
○『おちんちんのサイズの測り方』
●『ステロイド軟こうの間違った使い方』
○『むきむき体操はむき(広げ)むき(剥がす)体操』
●『泌尿器科の専門誌の論文も???』

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●『大人がダメ!』
学校で講演する際、生徒さんにマイクを向けると必ず「わからない」と答える子がいます。その時、学校長や先生たちに「この学校では『わからない』は禁句にしてくださいね。『わからない』と言った瞬間から人は考えることをやめています」と言うようにしています。何でもいいから思ったこと、思いついたことを口に出せば、それが他の人と考え方が違うとか、正解は別だったと気づき、間違った悔しさから他の考えや正解が印象に残ります。いつものようにそのようなやり取りをした講演の後の感想に面白いのがありました。
「わからない」は使わないことっていったのにも関わらず、校長も教頭も使ったのはおどろいた。まさか言われてすぐに使うとは思わなかった。むずかしい話とかもあったけど、タメになる話もあったからよかった。
大人たちも日常的に「わからない」を使っていることや「考えることを放棄している」のがばれてしまいました。しかし、人と会話し続けないことは、単に考えることを放棄しているだけではなく、勉強することも放棄しているのではないかと思いました。
絶望的な面持ちで外来に1歳にも満たないお子さんを連れた両親が、「この子が生まれた病院の小児科でおちんちんが小さく、半陰陽が疑われると言われ、大学病院で検査をしたり、手術を勧められたりしたのですが」と相談に来ました。一目見て、ちょっと触っただけで、診断は「異常なし」でした。私の診断力が残念ながら大学病院の先生より優れているというより、おちんちんの先端医療、最新科学とは何かがきちんと共有されていないようです。その理由も、おちんちんは所詮おちんちんですし、そんなに真剣に考え、勉強しなくてもいいと思われているからではないでしょうか。
そこで、今月のテーマを「おちんちんの先端医療」としました。

『おちんちんの先端医療』

○『半陰陽?』
先に紹介した「半陰陽」と言われたお子さんですが、生まれた病院の小児科での検診時に「半陰陽の可能性がある」として大学病院に紹介され、様々な検査を受けたとのことでした。結果として「半陰陽ではない」とは言い切られなかったそうですが、泌尿器科に紹介されステロイド軟こうを塗るように指導されたのですが、結果的に「手術をするかしないか」の選択を迫られたとのことでした。ご両親はこの事実をどう受け止めたらいいのかがわからず、結果的に岩室の外来にたどり着かれました。
そもそも半陰陽とは何か。Wikipediaにも詳しく記載されていますが、現代性科学教育辞典では、「両性具有(androgyne)とも呼ばれ、両性の性腺組織(卵巣と精巣)を持つことを意味しています。しかし、この状態は稀で、多くは偽(仮性)半陰陽で、遺伝的変調のために、外性器が遺伝的な性や内性器・生殖器官と異なる場合をいう」と記載されています。すなわち、診断は容易ではないのですが、今回の問題は「正常なペニス」の状態を知らずに「半陰陽」を疑ってしまったことです。

●『ミクロペニス』
この原稿を書いた前日の講演会場で、以前、私の講演を聞いた際に息子さんのおちんちんのことで相談したというお母さんがお礼を言いに来てくださいました。数年前に息子さんがミクロペニスと診断され、手術を勧められていた時に私の講演会に出席し、思い切って大勢の前で「息子がおちんちんが極端に小さく、ミクロペニスで手術が必要と言われたのですがどうすればいいでしょうか」と質問されたそうです。その時、私は「おちんちんのサイズは個性ですし、むければ大丈夫なので優しく見守ってあげてください」とお話ししたとか。結果的に手術は見送り、様子を見ていたら、しばらくしておちんちんが大きくなりだし、「いまでは立派になりました」とおっしゃっていました。立派かどうかはどうでもいいのですが(笑)、そもそもミクロペニスという、わかったようなわからないような定義を平気で使う医者たちを一掃したいですね。

○『おちんちんのサイズの測り方』
先の半陰陽のケースもそうですが、「小さい」という主観的な、外見から来る印象だけでおちんちんのサイズを決めること自体が非科学的です。そもそもおちんちんのサイズは何のどこからどこまでを測るのが正確なのかについて日本泌尿器科学会でも取り決めはありません。おちんちんは亀頭部とそれに続く陰茎海綿体がその本体になり、それを皮膚がおおっている状態です。すなわち、おちんちんのサイズは基本的に亀頭部から陰茎海綿体が恥骨(おちんちんの根元にある骨)から出た所までとすべきです。ただパンツぬいだ、おむつを外した状態で見ているおちんちんは様々な要因でサイズが大きく見えたり小さく見えたりします。亀頭部と陰茎海綿体の長さが同じでも次の場合は一見小さく見えます。
1.恥骨の上の皮下脂肪が多い(皮下脂肪の分だけ小さく見えます)
2.むけない包茎(亀頭部が皮下に押しつぶされ小さく見えます)
3.上記両方が合致(皮膚が少し盛り上がった程度でミクロペニスと診断されることが多い)
もちろん亀頭部が露出できるようにし、皮下脂肪が減ればいいのですが、初診時に上記を見極めるには、何より皮下にある亀頭部と陰茎海綿体を触って、皮下脂肪の中に隠れている陰茎海綿体の大きさや全長を確認する必要があります。しかし、特に小児科の先生たちは「皮下の亀頭部や陰茎海綿体を触る」というトレーニングを受けていないため、そのような発想にさえならないようです。

●『ステロイド軟こうの間違った使い方』
最近、小児の包茎手術が減ったことはいいのですが、残念ながらおちんちんのむき方の指導はまだいいかげんな先生が多いようです。一番困った指導が「ステロイド軟こうを塗って様子を見ましょう」という中途半端な指導です。
確かにステロイド軟こうを使うことで皮膚が柔らかくなります。しかし、そもそも包茎がむけない理由をきちんと理解し、ステロイド軟こうはむけない理由のどの部分にどのような効果があるのかを理解した上で処方しなければ適切な処置にはなりません。
包茎が向けない理由の一つは、包皮口、すなわち亀頭部を覆っている包皮の出口が狭い場合です。私は包皮口が狭い場合は包皮口を広げるように包皮をおちんちんの根元の方に引っ張って亀頭部を露出するような「むきむき体操」を出来るだけ多くするように勧めています。具体的な回数として、おむつをしている子どもの場合はおむつを換える度に30回ずつ。おむつが外れた子どもの場合は朝夕30回ずつと言っています。これだけでステロイド軟こうを使わなくても包皮口が広がることを経験しているので、敢えてステロイド軟こうを使いません。
ところがステロイド軟こうを処方する先生たちは「ステロイド軟こうを朝晩塗って様子を見ましょう」とだけ指導する場合が多く、1~4週程度やって変化がなければ手術を勧めたり、もう少し様子見ましょうとなるようです。この指導の問題は、目的が明確ではないことです。包皮口を広げるのが目的なら皮膚を柔らかくするステロイド軟こうを使いつつ、包皮口を広げるむきむき体操を併用しなければ広がるものも広がりません。ステロイド軟こうはむきむき体操と併用してこそその効果が表れるのです。

○『むきむき体操はむき(広げ)むき(剥がす)体操』
おちんちんをむく、の「むく」を漢字で書くと「剥く」、「剥がす(はがす)」という意味です。「むきむき体操」は亀頭部を覆っている包皮を「むく」のは包皮を翻転することで包皮口を広げるためと、亀頭部と包皮内板の癒着を剥がすために「むく」の両方の意味があります。しかし、このことを医学教育ではきちんと教えていないため、そこまで考えが及ばない医師が少なくありません。自分のおちんちんをむいた経験がある男性の医者でも、包皮口を広げたという意識や、亀頭部と包皮の癒着を剥がした記憶があればそのことを思い出しながら、その経験を元に適切な指導が出来ている人もいるでしょうが、気が付けばむけていたという先生や、自分自身がおちんちんを持っていない女性の先生たちは想像だにできないのです。ということで、「むきむき体操」は2段式ロケットのようなものと思ってください。
では全員が包皮口を広げ、亀頭部と包皮の癒着を剥がさなければならないかというとそうではありません。包皮口が極端に狭く、排尿する時に包皮が膨らんでしまうバルーニングが起こってしまう場合、実はバルーニングの際に亀頭部と包皮の癒着がはがれてしまうため、包皮口を広げるだけで容易く亀頭部を露出できるようになります。
一方で包皮口が排尿に力を入れなければならないほど狭くはない場合は、亀頭部と包皮が癒着している場合が少なくありません。その場合は包皮と亀頭部の癒着を剥離する必要があります。癒着の剥離はいずれどこかでやらなければなりませんが、一気にやると激痛が走りますので、1ミリずつ剥がし、剥がれたところの赤みが取れたら次を剥がすというように少しずつやるようにおすすめしています。ちなみに私の外来では1か月に1回の受診での剥離をお勧めしています。

●『泌尿器科の専門誌の論文も???』
多くの泌尿器科専門医が読む雑誌で「あなたの対処は間違っていませんか?」という特集がありました。そこではストレートな表現ではないもののむきむき体操への戒めのようなことが書いてありました。強引に剥くことで包皮口が傷つき、傷口が固くなりかえってむきにくくなることは事実です。しかし、無理のない範囲で包皮口を広げればそのようなトラブルは予防できます。
一番気になったのが「嵌頓包茎」への対処法で、時には手術が必要という考えでした。嵌頓包茎とは、包皮口がある程度広がっているため亀頭部を露出することが出来るものの、亀頭部を露出したままにしたため、包皮口が陰茎を締め付けるようになった結果、リンパ液が包皮に溜まってむくんだ状態になってしまった状態を言います。治療の原則は包皮口を超えてしまった亀頭部を包皮口内に元に戻すことです。そのために私が紹介しているのが
1.亀頭部を30秒握り潰し、亀頭部内の血液を体の方に戻し亀頭部を小さくする。
2.包皮口の中に亀頭部を戻す。
3.上記が上手く行かなければ、むくんだ皮膚(包皮)を少し太い針で切開し、そこからむくみの原因となっているリンパ液をしぼり出す。
4.2を繰り返す。
上記の方法でほとんどが戻せます。戻ってむくみも取れたら包皮口を広げるためのむきむき体操を繰り返し、包皮口が容易にむいて戻せるようにする。このようにすれば大丈夫なのですが、先ほど紹介した雑誌にはこの様な記載はありませんでした。もっともこれまで私がむきむき体操を指導したケースが6,945人になりましたが、これほど多く診てきた泌尿器科医はいないでしょうから、わからなくても仕方がない???
おちんちんにも最先端の医療を!!!

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