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■■■■■■■■■■■ 紳也特急 vol,311 ■■■■■■■■■■
全国で年間200回以上の講演、HIV/AIDSや泌尿器科の診療、HPからの相談を精力的に行う岩室紳也医師の思いを込めたメールニュース! 性やエイズ教育にとどまらない社会が直面する課題を専門家の立場から鋭く解説。
Shinya Express (毎月1日発行)
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~今月のテーマ『怖い』~
●『生徒の感想』
○『怖いの原因』
●『あなたが「怖い」と思うことは』
○『日本も「怖い」国に』
●『言語化できないと闇バイトに?』
○『「ばれない」と思い込む正解依存症』
●『依存症予防には教育ではなく仲間づくりを』
〇『アダルトビデオは5人で見ろ』
●『AIDS文化フォーラム in 横浜を開催します』
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●生徒の感想
話を聞いて思ったことは、“セックス”や“ペニス”や“オナニー”などの言葉を出すと笑いが起きたり、恥ずかしかったりすることがたくさんあり、それは性について詳しいことがはずかしいことと認識されてしまうと思っているからかなと思いました。だから友人間でも話はあまりないし、性についての正しい情報も広がりづらいのかなと思いました。(高2男子)
同じクラスの高1男子の感想
・楽しく受けられた。
・めっちゃ面白かった。
・この方面の話題をずっと避けてきたので、かなり頭痛がした。
・前日からクラスが騒ぎ出し、嫌いなものが多く聞こえてくるので不快でした。講座の内容はほぼ聞きたくありませんでした。この2日間もこの後もずっと不快です。
確かに岩室紳也の性教育を聞きたくないという人はいます。しかし、聞きたくないから聞かなくていいではなく、聞きたくないことをどうして学校が生徒にある意味強制しているのか。さらに、聞きたくない人もいる一方で楽しい、面白いと思っている人がいるこの違いを考えてもらいたいです。授業もまたしかりです。
最近、ハラスメントという言葉をよく耳にします。ChatGPTによるとハラスメントとは「他人の人格や尊厳を傷つける言動や態度により、相手に精神的・身体的な苦痛や不利益を与える行為」とありました。以前はセクハラぐらいしか聞かなかったと思うのですが、最近はパワハラ、モラハラ、マタハラ、アカハラ等々、次々と新しいハラスメントが認知されるようになってきました。性教育ハラスメント、学校教育ハラスメントと言われる日がまもなく来るのではないでしょうか。
先日、私のおちんちん外来に通っている男の子が不登校だと知って次のようなやり取りになりました。
岩室:何で学校が嫌なの?
男児:怖い
岩室:何で怖いの?
男児:勉強が嫌い
岩室:何が嫌い?
男児:国語
岩室:先生も国語大嫌いだった。中学高校では2とか3ばかり
男児:(ホッとした感じの笑顔に)
そこで今月のテーマを「怖い」としました。
怖い
〇怖いの原因
今放送されているNHKの朝ドラでやなせたかしさんの弟の成績優秀な千尋さんは養子になった先の医院を継げない、医者になれない理由として「血を見るのが怖い」と言っていました。確かにそのような人もいますが、私は怖いと思ったことがありません。そこでChatGPTに「学校が怖いと思う感情がどこから来ているのか」を聞いてみました。いろんな視点からの回答がありましたが、その中で特に気になったのを紹介します。
学校という“制度”が引き起こす構造的な要因
学校は「みんなと同じように振る舞うこと」を前提とした空間です。
異なる子ども、個性的な子どもは、**「自分らしさ=危険なもの」**と感じるようになってしまうことがあります。
教育の多様化が進まない限り、「怖い」と感じる子が一定数生まれ続けるのは構造的な問題でもあります。
子どもの「怖さ」への理解と支援の方向性
「何が怖いのか」を無理に聞き出すよりも、「そう感じるのは自然なこと」と感情を受け止めることが第一歩です。
安心できる居場所(家庭、フリースクール、第三の場)を確保することが、恐怖感を緩和します。
本人の言葉を待つ姿勢、信頼できる大人との関係性の再構築が極めて重要です。
そもそも「学校に行く」とか「勉強をしなければならない」と言われて、それが当たり前だった私を含めた人たちには「学校に行けない」ということは感覚的に理解できませんし、「勉強はしなければならないけど、苦手な教科があるのが当たり前」なので、「勉強なんか適当にやっていればいいんだよ」とつい思っていないでしょうか。
●あなたが「怖い」と思うことは
人は誰でも「怖い」と思うことがあります。例えばトランプ大統領、プーチン大統領、ネタニエフ首相を「怖い」と思っている人はどうしてそう思うのか考えてみてください。私はこの人たちを正直「怖い」と思っていますが、それは私が大事だと思ってきた価値観や考え方と相容れない人たちだからです。日本にいる私はそう思っても、私がこの人たちに対してできることは何もないので様子見状態です。一方でそれぞれの国の国民の多数が彼らを信任しているという事実もまた「怖い」と思っていますが、皆さんはどうでしょうか。
〇日本も「怖い」国に
小中学校の教師が生徒の下着の画像を共有していたという事件に多くの国民が憤りを禁じ得ません。しかし、6月29日のTBSテレビのサンデーモーニングでコメンテーターの谷口真由美さんがこの事件について「包括的性教育ってすごい大事じゃないかと思っていて、犯罪をした側の先生たちがちゃんと性教育を学び直して、子供たちのプライベートゾーンがどこなのか、性犯罪がいかに尊厳を傷つけるか、ちゃんと学び直してもらいたい」と指摘していました。教育だけで犯罪予防が可能と本気で思っているとしたら「怖い」です。
1年ほど前に「性犯罪が減らない理由」というタイトルでメルマガを書いています。今年のAIDS文化フォーラム in 横浜で「性犯罪は予防できない!?!」というセッションを開催します。犯罪予防は本当に難しいのにそのことを考えることなく、「包括的性教育」と叫び、次の被害者が出ても「包括的性教育をやっていないから」と永遠に言い続けられることでしょう。このようなことが繰り返される日本も「怖い」国になったと思いませんか。
●言語化できないと闇バイトに?
2025年4月16日のNHKのクローズアップ現代で闇バイトの応募した人とその人たちのリクルーターがインタビューに答えていました。
闇バイトに加担した人たちは「9回加担。でも、何も感じなかった」「今回の事件も、人に申し訳ないという気持ちも浮かばなかったですし、『強盗しろ』と言われたらたぶん普通に強盗していましたし、『人を殺して』って言われたら殺していましたし、たまに自分が怖くなります」「小さいころから自分の感情を押し殺してきましたね。何も感じないというよりかは、人の気持ちが分からなくなってくるんです。全部うわべだけの会話でしたね。喜怒哀楽とか考えたことがないから、ちゃんとした表現力もなくて、『ヤバい』。すべてがもう全部まるまる全部が『ヤバい』としか出てこない」「親の意のままに、親の求めるものに応えなくちゃいけないというか、そんな思いだったので、操られているなと感じてましたね。まず、泣きたいときに泣けないっていうのが一番ですし、怒りの感情がなかったです」、と。
リクルーターとして、15人以上を闇バイトの実行犯に勧誘した若者は「電話したときとか、『ちょっと最近どう?』『学校は大丈夫ですか?』と、こちら側が聞くに徹するっていう感じで。なんか自分の今の気持ち分かってほしいとか、つらいけど誰にも理解されない、けど自分からは絶対言えないみたいな、今の自分を言語化できていない子は、すごい感情をコントロールしやすいっていうか。こちらでいう、“いいカモ”。本当におもしろいくらい、こっちが親身になって相談とかのってあげるとホイホイついてくるっていうのは、つくづく思いますね。本当びっくりするぐらいみんな引っ掛かりますね。もう顔も名前も分かんない相手に、よくこんなことをこんなに話すんだなって思ったので、本当によっぽど周りに相談できてなかったんだと思いますね」と。
闇バイトと言えば犯罪の実態ばかりが取り沙汰されますが、その背景をこうやってNHKが取り上げてもなかなか犯罪の背景の検証が進まないことも「怖い」と思っています。
〇「ばれない」と思い込む正解依存症
今回盗撮で捕まった教師たちは秘匿性の高いアプリを使っていたと聞き、改めて正解依存症と思ってしまいました。後から考えれば当たり前のことに考えが及ばなかった人たちです。
グループの一人の名古屋市立小学校の教員が15歳の少女のリュックに体液をかけたことで逮捕されスマートフォンの解析で盗撮グループのことが判明しました。一人ひとりはヤバイことをやっているので自分は絶対に逮捕されるようなことはしないという正解(ばれない)を疑うことができないだけではなく、それを仲間にも押し付けてしまい、結果的に事件が発覚したのではないでしょうか。
テレビのコメンテーターが「包括的性教育が大事」と話しているのも、本質を見ようとしてない、見られない人は、結局のところ「教育」という正解を打ち出した自分に酔いしれていると思わずにはいられませんでした。盗撮もある種の依存症と考えると、教育をしただけで盗撮癖が治ったり予防できたりするはずもありません。
●依存症予防には教育ではなく仲間づくりを
癖は広辞苑では「かたよった嗜好または習慣」とあります。偏っているか否かはともかく、盗撮、痴漢、幼児性愛を含め、そのような事象に性的な関心を持っている人と持っていない人がいます。また、同じ性癖があったとしても、実際に犯罪的な行為に走る人と自制できる人がいます。こう書くと「岩室さんはそのような性癖を認めるのか」とお怒りになる方がいると思いますが、なぜそのような性癖を獲得するかはよくわかりませんが、まずは現実を認めることから始めないと問題は解決しません。
昔はそのような嗜好があったとしても、嗜好に好都合な資料を手に入れたり、同じ嗜好を持った仲間とつながったりすることが難しかったと思います。一方で、日常的につながっている人たちとの何気ない対話の中でその嗜好を実践した場合の犯罪性や反社会性を学ぶ人が多かったのではないでしょうか。もっとも、昔から犯罪性や反社会性を学ぶことなく罪を犯す人はいました。一方で近年のインターネットや電子機器の進化で、自らの嗜好に合致した映像等を自分自身で入手しやすくなっただけではなく、SNS上で同じ嗜好(教員の盗撮、集団での痴漢行為、等)のグループが形成されています。同じような仲間がいることで自らの嗜好の反社会性、犯罪性に気づけなかったり、「秘匿性の高いアプリがあれば大丈夫」と思い込んだりしてしまうのではないでしょうか。
〇アダルトビデオは5人で見ろ
反社会性、犯罪性を学ぶにはどうすればいいのでしょうか。私は「アダルトビデオは5人で話しながら見ろ」と言い続けています。「すげー」「あり得ない」「犯人とセックスするはずがない」「女性を冒とくしている」「いろんな意味でセクハラ」といった声を仲間から聞くとアダルトビデオの世界をリアルの世界に持ち込んではならないことを学べます。
一方で今回の教員の盗撮グループは10人で見ていましたので、「5人で見ろ」はおかしいと指摘する人もいるでしょう。同じ嗜好を、価値観を持った人だけで集まるのは危ないことも併せて伝えています。しかし、そもそも昨今は同じ価値観だけで集まる社会になりつつあるので、ますます性犯罪は増えると考えた方がいいのかもしれません。
不登校の生徒さんへの対応も、カウンセラーの役割は大きいのですが、それだけではなく普段からもっといろんな人とのつながりの中で「学校に行くためのストレスマネージメントを学ぶ機会」が必要なのだと改めて思いました。
●AIDS文化フォーラム in 横浜を開催します
2025年8月1日~3日に第32回AIDS文化フォーラム in 横浜を開催します。いろんなプログラムがありますので、ぜひいらしてください。お待ちしています。