〜今月のテーマ『「いま」よりも「これから」を』〜
●『励まされる感想』
○『「いま」よりも「これから」を』
●『出来る人が出来ることを』
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●『励まされる感想』
先月のメルマガで「性教育は真剣勝負」と書きましたが、偶然にも高校生から、「心に響いた」、「岩室先生の真剣さが印象に残った」という感想をいただき励まされる思いです。感想文やメール相談、さらには外来診療といった、目の前にいてくれる多くの人たちのおかげで私は生かしてもらえているように思います。講演会で「愛の反対は金」と教えてくれた高校生にはびっくり。確かに「金」で「女性の気持ちに無関心」ということを隠そうとしているのかもしれません。
多くの人に励まされて生きている自分がいる一方で、自ら自分の命を絶つ子どもたちが後を絶ちません。「命の大切さ」という大人たちの言葉がむなしく響きます。「いじめが悪い」の一言でいじめ問題を語っている大人たちに、「あなたは人をいじめたことがないの」と言いたいですね。
国会でも「美しい日本」を目指した議論が行なわれていますが、「美しい人」の集まりがあってはじめて「美しい国」が出来るのではないでしょうか。すべての面で「美しい人」というのはまずいませんし、すべての面で美しいふりをしようとすると「八方美人」と言われてしまいます。一点でも美しいところがあれば一点美人でいいんじゃないですか。みなさんの周りに「美しい人」はどれだけいますか。一人一人がそれなりに頑張って生きていることを認め合いたいですね。
しかし、結果として辛い「いま」を生きなければならない状況の中にいる人が少なくありません。17歳の女の子から「今17才で16の時から夜の世界もしてて、辞めて辞められる仕事やなくて‥ 夜の大人とのアフターが嫌で嫌で。でも仕事の為に‥なかなか割り切る事もできなくて。生活もあるし、正直なとこ夜を居場所にしてるような気がして、逃げてるだけのような気がします。」というメールをもらいました。
皆さんならどのような声かけをしますか。「仕事を辞めて全うな道を生きなさい」でしょうか。私は「いま」を一生懸命生きる中から「これから」の方向性を見出すしかないと思っています。そこで今月のテーマを「『いま』よりも『これから』を」としました。
○『「いま」よりも「これから」を』
先日、A子さんとメールで次のようなやり取りをしました。
A:私は.高校1年生です。突然なんですが、私は最近Hをしました。コンドームなしでやってしまったのですがそのあとちゃんと生理がきたので妊娠はしてないと思うんですが、最近かゆくてしょうがないんです。生理の時のかゆさじゃないかゆさなんです。これはなんかの病気なんでしょうか?お母さん達には相談できなくて岩室先生に相談してみました。忙しいと思いますが返事待ってます。
岩:Aさん。いろんな病気が考えられます。検査しないと何とも言えません。早目に産婦人科にかかってください。
A:返事ありがとうございます。Hした相手が彼氏とかじゃないんで、どうしたらいいか分からないんですよ..。検査って結構お金かかりますか?
岩:相手は誰だったのかな?相手が誰であろうと、自分の体をちゃんと治さないと。自費ではとても高いので、必ず保険証を使いましょう。親に言えないとしたらどうしますか。
A:相手は掲示板で知り合った人です。お母さんには絶対に言えないんで本当どうしたらいいか分からないです。
岩:掲示板に限らず、男って結構危ないんだよ。お母さんには絶対に言えないその気持ちはわかるけど、じゃ、お金があるの? どうしてお母さんに言えないんだろうね。
A:そ-なんですか…。お母さんは掲示板とかそおゆうの大嫌いで前に1回掲示板やってるのばれて、もおやらないでって言われてもうやらないよって約束しちゃったのにまたやっちゃって、あってHもしちゃったから絶対に言いたくないんです。お金はまったくありません…
岩:でも、やっちゃったもんは仕方がないよね。どうして掲示板に行くのかな。
A:なんかちゃんと辞めようって思ってるんですけど辞めれないんです。なんか寂しいんですよ。
岩:だよね。みんな寂しいんだよ。でも、どうして周りの人じゃダメなんだろうね。
A:なんか、話聞いてくれるんですよ。初めてだからみんな優しくしてくれるんです。
岩:そうだよね。友達とかだと、親もそうだけど、みんな忙しいのかやさしくないよね。でも、男は実は体が目的。これは男の私が言うんだから間違いなし。いい(ちょっとつらい)勉強になったんじゃない。ここまでわかった、というか経験しないとわからないもんだからお母さんにそのまま言えば大丈夫だと思うよ。お母さんはあなたにとってどんな人?
A:お母さんの事大好きです。でも最近弟が病気になっちゃって話とかしてないんです。
岩:お母さんの事大好きだよね。おそらくお母さんもそうだと思うよ。
> でも最近弟が病気になっちゃって話とかしてないんです。
だから寂しいんだ。でも弟さんも大変だね。そんな時にお母さんに心配かけちゃいけないと思っているんだろうけど、それは逆。相談されない方が親は苦しいよ。
A:そ-なんですか? お母さんに心配かけたくないから家では明るくしてたりしてたんですよ。でも話す勇気でないんですよ。
岩:お母さんに心配かけたくない? どうして????? 本当のお母さんじゃないのかな?????
A:本当のお母さんですよ。でも話せないんです。
岩:本当の親子になっていないんでしょうね。いい子ぶる相手は「他人」。本当に愛している人なら、すべてについて受け入れてくれます。なぜなら、「愛の反対は無関心」。
A:高校に入る前はお母さんに全部話していました。でも高校に入るにつれてお母さんに説教されるのがうざったいとか思っちゃったりしてたんです。
岩:確かに周囲の人って「ウザイ」と思うことがあります。でも、絶対に裏切らない人、裏切ってはならない人が「身内」だと思います。それが母であり、それを信じることで、あなたも将来「母」になれるんじゃないかな。
A:確かに身内は何があっても裏切らないですね。まだちょっと不安がありますがお母さんに話してみます。話してみてまた岩室さんにメールします。話しとか聞いてもらって本当にありがとうございました。
岩:えらいね。いい連絡をお待ちしています。
A:先生.お母さんに言いました。口でちゃんと伝えようと思ったんですけどやっぱり無理で手紙でお母さんに伝えました。お母さんは.怒らないで今の私を受け入れてくれました。勇気振り絞って言って良かったです。病院にはお母さんと行こうかなって思ってます。
岩:お母さんが一番ですよ。これからもいろいろいっしょに考えていってください。病院は早目に行こうね。
A:やッぱ家族ゎ裏切リませんね!! これで家族の大切さが分かりました。岩室先生本当にありがとうござぃした!! 病院ゎ土曜日に行ってきます。
●『出来る人が出来ることを』
このようなメールのやり取りをどう思いますか。「いま」ときちんと向き合う中から「これから」の生き方が見えてくるのではないでしょうか。しかし、「いま」を批判されると人は「これから」を考える余裕を持てません。また、1人で「いま」と向き合ったり、「これから」を考えるのは難しいですよね。私はメールでやり取りをしていて、いつも、昔はこのような相談が出来る人が廻りに必ず何人かいたと思えてなりません。
いじめで子どもたちが自殺するのは、「いじめられる→自殺する」という選択肢しかその子どもたちは知らない、持っていないのではないでしょうか。いじめられている「いま」を乗り越え、「これから」をいっしょに歩んでくれる人がいたおかげで自殺をしなかった人も多いはずです。しかし、そのような事例はニュースになることはなく、「いじめられたから自殺する」という単純な図式しか知らないと、短絡的に考えるのはごく普通です。誰かに相談をする。共感してもらう。同じような体験を聞く。このようなことが当たり前のように一人ひとりの周りで起こっていれば、自殺以外の選択肢があったと思えてなりません。
足の引っ張り合いをしている社会ではなく、お互いのいいところを認め合い、積み重ねられる、「これから」に期待できる「美しい日本」にしたいですね。
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