〜今月のテーマ『あり得ない』〜
●『オナニーを知らない犯罪者』
○『あり得ない(?)講演会』
●『用意周到の弊害』
○『男女交際禁止』
●『14歳の母がだめな理由』
○『経験を糧に』
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●『オナニーを知らない犯罪者』
警察の方とご一緒する機会があり、興味深い質問(情報)をいただきました。「最近の若者たちの性の状況がよくわからない。レイプ等の強制わいせつ罪で捕まえて話を聞くとオナニーの仕方も知らない。どうなっているんですか?」と聞かれた時に、性の切り口から現代社会の病んでいる状態を訴え続けないといけないと感じました。
最近、間違った(何をもって正しいと言って良いかは難しいのですが、とりあえず正常なセックスができない若い男性たちの中に、ベッドにペニスを擦りつけて射精をする人たちが増えていることを根拠に)オナニーをしている人が多いことは男子不妊症の診療をしている医者にとっては常識になっています。冗談半分に、将来教科書の中に「正しいマスターベーションの仕方」という記載が必要になってくるのではないかというのが、かなり真実味をおびてきています。しかし、警察の方が「オナニーの仕方も知らない」とおっしゃっていることは、裏を返せば「オナニーによる性衝動の解消の仕方も知らない」ということでもあり、性衝動がおこったらアダルトビデオを参考にレイプをしてしまう人が増える可能性があることを示唆していると思えてなりません。
このことを含め、最近、びっくりさせられることが続いたので、今月のテーマを「あり得ない」としました。
『あり得ない』
○『あり得ない(?)講演会』
あるカトリック系の女子高校で講演をしてきました。性教育に積極的に取り組んでいる地域で、保健所から学校に働きかけたところ「ぜひお願いします」ということになったようです。学校の応接室に通されたら、そこにはマザーテレサの本が何冊か置いてあったので、これは「愛の反対は」と生徒に聞いたらほとんどの生徒が答えられるのだろうと思い、逆にネタが持つかが心配になりました。一方でシスターでもある校長先生との懇談では、昨年のAIDS文化フォーラム in 横浜での神父さんとのトークが役に立ち、「カトリックって結構いいかげんな宗教といわれるんですよ」ということを教えていただきました。いろんな経験をしておくものだと改めてフォーラムでのつながりに感謝です。
ところが、講演会の会場に案内されると大抵は用意されている演題、講師の名前もどこにも書かれておらず、「では、これから岩室紳也さんの性に関するお話をいただきます」という簡単な挨拶で講演を始めることになりました。生徒たちに岩室紳也が何者なのかも紹介されなかったため「ではまずは自己紹介をします。岩室紳也という医者です」と話したところ、「お医者さんなんだ(*_*)」という声が会場中を駆け巡りました。びっくりした生徒さん以上にびっくりしたのは当人の私でした。「医者の話を聞くということも生徒さんは知らないんだ」と変な緊張をしたので気持ちを静めるべく、「今朝、東京から飛行機で来ました」と続くと、「東京から来たんだ(@_@)」とこれまたびっくりの反応。さらに、「講演が終わったらまた夜の飛行機で東京に戻ります」と言うと「今日帰るんだ(@_@;)」と、たった三言しゃべっただけでこんなに反応をもらった、生徒の心をつかめた講演は初めてでした。
●『用意周到の弊害』
よく考えてみると、私に講演を依頼し、いろいろ交渉をしていた担当者はその日は都合でいらっしゃらず、とにかくぶっつけ本番の中で、すべてが私にとって新鮮な驚きでしたが、こんな講演会もたまにはいいものだと思いました。学校との連携というと、事前の打ち合わせを周到に行い、何を話す、話さない。事前学習、事後フォローといったことが重視されます。しかし、生徒の立場から見ると、事前にどんな人が来るのかを知っているよりは知らない方が「おどろき」や「感動」があるようでした。確かに講演をする際に、最初の「つかみ」が重要になるのですが、「東京から日帰りで来た医者」というだけで生徒の心がつかめるというのは新発見でした。
○『男女交際禁止』
しかし、あり得ないことはさらに続きました。生徒向けの講演後に先生方との懇談の場である先生が「本校の校則に『男女交際禁止』がうたわれているので、逆に性教育がしにくいんです」という話でした。その先生はなんとなく、「校則で男女交際禁止」と岩室に話すと「今時、時代遅れですね」といわれると思っていた様子だったのですが、私が「どうしてそのことを先に言ってくださらなかったのですか」と悔しがっていたら不思議そうにされていました。確かに当日は女子生徒だけだったのでコンドームを見せることなく終わったものの、コンドーム柄のネクタイをしていたので、「過激な性教育者」と受け止められたのかもしれません。学校長も私の話に楽しそうに反応していたすごくお茶目な生徒のことを「あの子は危ないかも」と話すなど、少し感覚のずれは感じましたが、「男女交際禁止」についてはぜひとも生徒さんたちに岩室の私見を伝えたかったですね。もしかしたらメルマガを読んでくれている生徒さんがいると期待して、思っていることを書いてみます。
確かに「男女交際」という言葉も死語になっている時代に「男女交際禁止」というのはどこかずれているように思います。生徒さんたちの中には彼氏がいて、セックスをしている人もいるかもしれません。しかし、「男女交際禁止」と言われている中で生活し、時にはその校則に違反し、あるいは違反したいと思って生活することは理不尽さと向き合ういいストレス環境だと思います。男子校の寮生活出身者の経験からすると、女性から隔離された社会は異常なものでした。そして、女性に免疫がない状態のまま、そこから開放された男が危険な存在であることも事実でしょう。しかし、規制というストレスにさらされつつ3年間を過ごすことは決して無駄ではないと思います。ちょっと飛躍しますが、オナニーを知らない犯罪者と、オナニーで我慢してきた者の違いは実は大きいと思いませんか。
●『14歳の母がだめな理由』
14歳の母というドラマはいろんな波紋を投げかけ、「なぜ、14歳は母になってはいけないのか」ということについて丁々発止の議論をした人もいることでしょう。14歳の母は「あり得ない」存在ではなく、つい先日も15歳の中学生が母になるまでを取材したテレビ番組もありました。いろんな考え方があるでしょうが、私は「14歳でなぜ母になってはいけないのか」と聞かれたら次のように答えています。
月経は女性にとって妊娠を希望する年齢になるまでは、ある意味いらない、理不尽な生理現象です。しかし、それを繰り返す中で理不尽なこと、ストレスと繰り返し向き合わされる経験を通して、ストレスに強い人間になれるのだと思いませんか。思い通りに、理屈どおりにいかないのが子育てです。そのストレスに耐えられるようになるために月経があるような気がします。男サイドの都合のいい解釈ですが、適度なストレスは人が成長する上で重要です。男の性的欲望が自分の中で膨らんでいくと感じた時に、安易にその欲望を満たせる環境(性情報の入手、セックスパートナーの存在、等)が手に入り、一方で性衝動の処理の仕方を知らないと、警察の話のように犯罪者になってしまう危険性がないでしょうか。
○『経験を糧に』
こんなメールをいただきました。
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初めまして。今日講演を聞いた高校の生徒です。学校の授業などで聞いている保健の授業とはまったく違っていてセックスやエイズがとても身近なものだと感じる講演でした。いつもの授業なんてまったく聞いていない人たちも今日はなんだか少し耳を傾けていたような気がします。学校の保健の授業ではコンドームのつけ方なんて教えてくれません。実際に避妊にはコンドームが1番とか先生は言いますけど実際どうやってつければいいのかわからなければ意味がないですよね。そんなの知識だけの授業やったって意味ない。保健は体育とか一緒で実践しなければいけない教科だと思います。
話は変わりますが私は高校1年生の時に初めて恋と呼べるような恋をしました。今となってはどうなんでしょう・・・・?な恋でした。でもその人とずっと一緒にいたいって思ってました。付き合って半年くらいに相手からしようって言われたときはパニックでした。したくない・・・でも好き・・・でも興味もある・・・・など色々な感情が入り乱れてどう答えたいのか自分でもわからなくなりました。そのときは無理と断ったのですがその3ヶ月後相手の誕生日なのでそのときに・・・・と、言った話になってしまい。
3ヶ月後その相手としました。ちゃんと前もってコンドームをつける練習をしていたらしいです。実際にした時もつけてくれたのですが私は不安で仕方なかったことだけ覚えています。そしてその相手としてから1ヶ月まったく生理が来なくて不安はつのるばかり・・・相手にも相談しました。でも、大丈夫?などの言葉だけでまたしようなんてことを言ってきて。そのときはとてもショックでした。多分そんなストレスから生理は1週間たっても2週間たっても来なくて本当にその2ヶ月半の間はつらかったです。ちゃんと市販の検査を受けて妊娠はしないと出ましたがそれでもまだ不安で3回検査をしました。生理が来たときはとても嬉しくて泣いたくらいでした。その相手のあまりにも私を見てないってあたりに腹が立ち別れました。でも、あんな思いはもうしたくないです。やっぱりセックスは妊娠に繋がる怖さ・・・嫌ってほど身にしみた出来事でした。
今回話を聞き、とても良かったです。次・・・また運命の人が現れたときは先生の言葉を思い出して性とも仲良く付き合って行きたいと思いました。今日は長い間お話していただきありがとうございました。もっといろんな人に伝えて行ってください。私も微弱ながら先生から聞いた話を友達に話して行ってみようと思います。では長文、乱文ですいませんでした。お体には気をつけて・・・頑張ってください!!!本当にありがとうございました!!!!!
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いろんな経験を糧に人は育つのだと思います。岩室紳也が伝える声が、その糧の一つになれればと思っています。そしてメールをくれたあなたに感謝。