紳也特急 96号

〜今月のテーマ『つづける』〜

●『つづけるエネルギー』
○『当たり前の空間』
●『初心に戻って』
○『若者からのメッセージ』
●『歴史は繰り返される』

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●『つづけるエネルギー』
 Aさん:「岩室先生は前から中学校で講演されていますよね。私、秦野の中学校だったんです」
 岩室:「秦野の中学校はいろいろ行っていますよ」
 Aさん:「秦野○○中です」
 岩室:「何回か呼んでもらっています」
 Aさん:「中学校の時に岩室先生の話を聞いて、性のことは真面目に考えて、自分の気持ちを相手にきちんと伝えないといけないと思いました。また、命ってすごいと思い助産師になりました。先生の名前は忘れていたのですが、先日、当時の同級生の男の子に会ったら『イワムロだったと思うよ』と教えてもらいました。まさか今日の研修会で先生にお会いできるとは思いもしませんでした」 最近、中学や高校時代に私の話を聞き、そのことを覚えて下さっている人に何人かお会いするにつけ、「やっていて、つづけていてよかったんだ」とちょっとうれしくも、ほっとしました。「評価」が求められる時代に、こんな独りよがりの評価では誰も納得しないでしょうが、つづけていてよかったと感じることの一つに8月3日から始まるAIDS文化フォーラム in 横浜があります。第14回目を迎えたフォーラムについても先日うれしい評価をいただきましたので、今月のテーマを「つづける」としました。

『つづける』

○『当たり前の空間』
 あるPWH(Person with HIV)の方がAIDS文化フォーラム in 横浜のことを、「当たり前のように、あれだけPWHが大勢いる空間はないですよね」とおっしゃってくださいました。会場来場者数はカウントしていますが、PWHの方が何人来場されたかはカウントできるはずもありません。ただ、確かに、大勢の方がいらしていますし、「実は私もHIVをもっています」とカミングアウトされる方や、「地方から来たのですが、自分と同じPWHの方に会うのは初めてです」という声も少なくありません。
 AIDS文化フォーラム in 横浜はボランティア精神でつくりあげられているイベントです。内容はその時代に求められているものを取りそろえているつもりで、今年のオープニングはHIVを持っている人と、医療者の関係性について3組の当事者と医療者に語ってもらいます。今年も最新の治療や検査に関する情報から、教育現場で役に立つ情報。昨年好評だった遠見才希子さんによるピアエデュケーション、HIV/AIDSと宗教のセッションと中身は盛りだくさんですが、よく考えてみると、各セッションは多くの方が集い、コミュニケーションを図り、関係性を構築していく「空間」を提供していることに今頃気づかせていただいています。何より、私自身が多くの方と空間をシェアできていることに感謝です。しかし、同じことを続けていると、工夫のつもりで相手の求めとは逆方向のことを目指していることがあります。AIDS文化フォーラム in 横浜で言えばパトリックと紳也のセッションが反省材料でした。

●『初心に戻って』
 先日、AIDS文化フォーラム in 横浜に最初の年から協力してくれているHIVPositiveのパトリックと一緒に佐賀県で講演をさせていただきました。その時の感想の中で紹介された「気付き」をいくつか紹介します。
・パトリックの生き方に対しての覚悟がとてもかっこいい。ステキでした。
・HIVをもっているといえる勇気。人が死んだ時に泣くのは自分がその人に会えずに寂しいから。
・生まれた瞬間から死に向かう。HIVは死ぬ病気だから、残りの人生何しよう。
・パトリックさんの後悔はしない姿勢と自分が決めたことだからという言葉がとても印象に残った。
・パトリックのお葬式の計画の話。
・「自分を守る」「人を守る」それがやさしさ。
・エイズになったり、いろんな行動をするのも自分の責任。
・偏見や差別は自分の中には存在しない。それはただ自分の無知によるものだから。人生勉強だ。
・歩くことは、人生そのもの。“自分の身体が現在で、前に出ている足が未来で、後ろ足が過去“そうだな〜としみじみ感じた。
・HIVに感染したことは、誰が悪いことでもない。
・勉強できない日はない。
・はじめはパトリックのことをHIV感染者でゲイであるという気持ちで聞いていたのですが、すぐにそんな考えは消え、今話しているのはパトリックという人なんだ、に変わりました。
・自分の意思をしっかり持つことが大切だと思いました。
・親しい友人の父が、余命三ヶ月との話を聞き、最近死にたいして様々なことを考える機会が多かったのですが、今日の講演を聞いて、プラスの考え方もできるようになりました。
 実はこのトークの前に二人で最近の自分たちの講演の反省をしていました。自分たちにとってはHIV/AIDSとの付き合いは既に10数年になり、最初の思いは大事にしつつも、最初にHIV/AIDSと向き合い始めたプロセスよりも、いま、何を考えているのか。いま、何に困っているのか、といったことに話の重点がシフトしがちでした。しかし、聞き手からすると、それも初めてHIV/AIDSについて学ぶ人にとって、パトリックと紳也のコンビに求めていることは10年以上前とほとんど変わらないはずだと反省させられました。それはAIDS文化フォーラム in 横浜に来られている人の反応が、長年来ていただいている人と、初めての来場者で大きく異なる点でした。初めてわれわれの話を聞く方は、慢性感染症としての大変さよりも、「そもそもHIVって何?」や「HIVに感染することってどういうこと?」を知りたいのだということを再確認させられました。今回の講演・トークでは原点にも立ち戻って話をしたところ、われわれが感じてもらいたいことを受け取ってもらえたようでした。

○『若者からのメッセージ』
 きょぅわ 楽しく且大切なぉ話しをしてぃただきぁりがとぅござぃます。ぁたしわ高校2年生です。最近まで付き合ってる人がぃました。付き合ぃはじめたのわ高1です。はじめわきょぅぁった事ゃそんなささぃな事を話してるだけでも「楽しぃね」ってぃってました。でも だんだんキスしたぃってゅぅょぅになりました。ぁたしわ怖かったです。(このときわまだはっきりと何が怖ぃかわからなかったケド)このままキスしてぇっちしてって進むと関係が終わってしまぃそぅで。
 でもカレわ「大丈夫。ォレずっとスキだょ。」って何度もゅってくれた、信じてましたでもキスしてそれがぁたりまえになるとディープキスになって胸触るょぅになって指ぃれるょぅになってえっちを求めるょぅになって。それがぁぇば毎日でした。カレが部活終わってぁぇるたった15分。そればかり。修学旅行の夜も部屋に誘われました。「ぁぃしてるょ。ずっとHが大スキだょ。ねぃぃでしょ?しょ?」でもぁたしが断るとひどく不機嫌になる。「他の人わしてるのになんでォレだけ我慢しなくちゃぃけなぃんだょ!!!!」ゴムっけてってぃっても大丈夫の一点張り。「大丈夫ってォレがぃってるぢゃん。信じられなぃわけ?」キスするほどえっちな事するほどメールわ減り会話わへりつらかったです。
 3学期の終わり誰かぃるかもしれなぃ学校でもせまるょぅになり「1回したらもぅ我慢できるカラ」「ォレずっとスキだょ」とぃわれ 次のひ結局…全部わぃれてませんがぁたしにとったら一緒です。その翌々日カラメールが来なくなりました。「ごめん考えたい事がぁる。今わ自分の事で精一杯なんだ…」ぁたしわもぅこれでカレの気持ちを信じてぃける気持ちでぃっぱぃでした。でも結局その2ヶ月後振られてしまいました。はじめてキスをするとき怖かったのわこの事です。えっちを拒み続けたのわ追ってもらぇなくなるのが怖かった。拒んでるぁぃだわカレが自分を求めてくれてぃるんだと思って嬉しかった。
 先生の話してくださった男とまさにぴったりでした。カレわぁたしの気持ちに無関心でした。

●『歴史は繰り返される』
 同じことを続けていると、「本当にこれでいいの?」という疑問を感じることが少なくありません。しかし、よ〜く考えてみると「歴史は繰り返される」というように、生徒さんのメッセージも実は紳也’s HPに掲載させてもらっている「大切なこと」という一人の女性の経験と瓜二つです。人は同じことを経験するんですね。歴史も繰り返されますが、先達が巻き込まれたトラブルを解決する方法も実は同じなのかもしれません。歴史が繰り返されるのであれば、歴史を繰り返さないための対策ももしかしたら変わらなくてもいいのかもしれません。微調整はしつつ、本質は何かを考え、これからも続けさせていただきます。命がある限りこれしかできないようなので。
 現時点での最新ノウハウをAIDS文化フォーラム in 横浜で紹介します。2コマやります。ぜひいらしてください。
http://www.yokohamaymca.org/AIDS/index.htm