〜今月のテーマ「コンドームが生活習慣となるために」〜
●『性感染症恐怖症になった男子高校生』
○『コンドームが生活習慣となるために』
●『まずは知識。でもそれだけでは・・』
○『コンドームが買いにくい』
●『コンドームが高い』
○『家を出る際の身だしなみ』
◆CAIより今月のコラム「オリンピックとコンドーム」
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●『性感染症恐怖症になった男子高校生』
最近、学校で講演を頼まれると、講演終了後に個別の相談を受ける機会が増えてきました。ある高校での講演が終った後、養護教諭の先生が「一人の男子生徒が昨日から思い悩んでいて緊張のあまり手先がしびれたり、気持ちが悪くなると言って保健室に来ています。時間が許せばその生徒の相談にのってやっていただけますか」ということで出張相談を行ってきました。
にわか相談室に変わった応接室に入ってきた生徒は今風の普通の生徒でした(ちなみにこの学校は地域でも進学校の部類に入るところです)。高校2年生の彼は今までに何人かセックスの経験があり、今付き合っている同じ学年の彼女とは3週間前に初めてセックスをしました。といっても彼女が途中からいやがったので挿入も中途半場で膣内に射精をしなかったとのことです。その彼女に「おりものが白っぽく、いつもと違うような気がする」と相談され性感染症が心配になって夜も寝られない状態になっています。今回彼が性感染症を心配するようになったのには訳がありました。彼は1年前に付き合っていた年上の女性からクラミジアをもらい治療した経験がありました。今回のセックスの3ヶ月前にも別の女性とコンドームなしのセックスをしていたため、その時感染した病気を今の彼女にうつしたのではないかと心配していました。彼に現在の所全く症状がないこと、今回のセックスでは挿入も不完全であったこと、彼女自身が今まで自分の帯下に気を払ったことがないため現在の状況が異常かどうか判断しかねること、等々から、彼女が彼から何らかの性感染症をもらった可能性は低いと考えられると話し、少し落ち着きを取り戻してもらいました。しかし、HIVをはじめ、彼が今までのセックスで無症状の感染症をもらっている可能性や、彼女の感染を100%否定できないことから二人とも検査を受けることを勧めておきました。
彼は1年生の時に私の講演を聞いていましたが実際の場面では使ったり使わなかったりという状況でした。「セックスをするならコンドームを着けるべきだということはわかっていました。でも、その場になった時、持っていないこともあり使わないこともありました。」と率直に告白してくれました。別の高校で相談に来た3年生の男子生徒も「コンドームを使うのは半分程度」といい、使わない理由として「高い、買うのが恥ずかしい」と言っていました。
そこで、今回のテーマは「コンドームが生活習慣となるために」としました。
○『コンドームが生活習慣となるために』
コンドームの正しい付け方(http://www.cai.presen.to/c.html)をマスターしたとしても、いざという時に使わなければ役にたちません。先に紹介した高校生達はそろって「その時もっていなかった」と言い訳をしています。手を洗った後にハンカチで手を拭くには、ハンカチを持ち歩く習慣がなければなりません。あなたがハンカチを持ち歩くのはどうしてですか。私は出かける時に当たり前のようにズボンのポケットにハンカチを入れますが、「出先で手を洗うかもしれない、ケガをしたときにハンカチが必要だから持って行かなくては」とは考えていません。そこでコンドームが必要になった時にすぐに使えるようになるために、コンドームが生活習慣になるためには、具体的にどのような知識、情報提供、教育、環境整備が必要かを考えてみました。
●『まずは知識。でもそれだけでは・・』
知識、情報提供は大切で、「セックスするならコンドーム」を生活習慣にしましょうということを具体的に伝えるだけでも半数近くの人はコンドームを使うようになります。しかし、高校生達の行動が物語るようにセックスをする場面にコンドームがなければ使わないでセックスをしてしまいます。いつも、どんな状況でも必ずコンドームを使うにはどのような条件が整わなければならないでしょうか。知識だけではなく、生活習慣のレベルにまでコンドームを持ってくるには、若者が実際のセックスの場面でコンドームを使うようにするには、何が障害になっているのか、具体的にどう伝えたら良いのかを考えてみました。もちろん、知識さえあればあとは判断能力と割りきっても良いのかもしれませんが……。
○『コンドームが買いにくい』
「コンビニでコンドームを買うのが恥ずかしい」という高校生の学校近くのコンビニによってみると若い女性がレジを担当していました。売っている側は誰が何を買っているのかはあまり気にならないでしょうが、コンドームを買う側はドキドキものです。私も初めてコンドームを買った時の状況が忘れられません。予備校に通う途中の商店街の薬局前にコンドームの自動販売機があることを知っていましたがなかなか買えませんでした。その商店街を朝6時頃に通ると店のシャッターはすべて閉まっていてほとんど人に会わないことがわかったので、ズボンのポケットに100円玉を5個入れて自転車で乗りつけ、すばやく(といっても自販機の反応が遅くすごく時間がかかったような気がしましたが)買って脱兎のごとく走り去りました。昭和40年代と異なり、今では身近なコンビニに堂々と陳列され買い安くなったと思っているのは実は大人達の錯覚かもしれません。中学生にもなればコンドームを買うことに羞恥心を覚えるような感情を事前にインプットされています。社会全体でコンドームを買いやすい環境に変えていく運動が盛り上がるようにしたいと思っています。その点、コンドマニアのような専門店が増えて、女の子が彼氏を連れてコンドームを選んでいるように、コンドームがファッションの一つになるといいですね。
●『コンドームが高い』
あなたはコンドームの値段をどう思いますか。中学生、高校生のお小遣いでは確かにコンドームは高い買い物かもしれません。3ダース1,000円の割安パックなら計算上1個30円弱になりますが、そんなに頻回にセックスをするのでもなく、割安パックであっても一度は1,000円を払わなければなりません。その点、最近はやりの100円ショップは1回に払う金額が少なく、結局は買いやすいようなので紹介してあげてください。女性が妊娠し中絶することになったり、お互いが性感染症になって治療することを考えれば(考えられれば)コンドームは割安だということが納得できるでしょうがそこまで考えられない人が多いと思います。それに、高校生の30%がセックスをしていると言っても、多くは1年間に10回前後しかしないため、1ダースあっても使いきれないでしょう。
○『家を出る際の身だしなみ』
あなたは家を出る時、今日はもしかしたらセックスをする場面があるかもしれないと考えていますか。「今日はデートだからコンドームを持って行こう」と実際のデートの約束をしている人は別でしょうが、突然訪れたセックスの機会にどう対処するでしょうか。「コンドームがないから今日はしない」とお互いに思えれば良いでしょうが実際には「まっ、いいか」ということになる人も少なくありません。朝起きて、何となく学校に行った。帰りに友達とカラオケに行き、そこで知合った相手とセックスをする、なんてことは日常茶飯事です。セックスをする場面になってから考えるのでは「まっ、いいか」ということになりかねません。家を出る時から身だしなみとして、生活習慣としてコンドームを持ち歩くことを教える必要がありませんか。
★男性の身だしなみ
・ハードケース入りコンドームを持っている
・爪は短く切ってある
★女性の常識
・「No」と書いたレッドカードを持っている
・「愛しているならつけて」と書いたコンドームケースを持っている
以前の私はコンドームを持ち歩くことを勧めていた先生に批判的でした。自分で考え、選択し行動することが大切だと思っていましたし、みんなが考えて判断してくれると思っていました。しかし、知識はあっても使わない人が少なくないことを突き付けられて考えを改めることにしました。あなたはどう思いますか。
結局、
やっぱりコンドーム。立ったらつけようコンドーム。愛の印がコンドーム。
■コンドームに関する標語募集します。若者ウケするのを送ってください。
◆CAI編集者より今月のコラム
「オリンピックとコンドーム」
オリンピックも無事終了し、日本選手の活躍もあり、暗いニュースの多い中清々しさの残るオリンピックだったな。と海のこちらで考えています。
今回、オーストラリアの土地柄なのか、先住民族アボリジニの血をひくフリーマンの点火から始まり、ゲイ・レズビアンパレードで有名なオーストラリアならではのドラッグクイーンが閉会式に出演したり(知っていました?)マイノリティーとの融合が印象深く感じられたのは私だけでは無いと思います。
逆に考えれば問題も深いのかなとも感じ取れますよね、、、。
さて、選手村に5万個のコンドームを無料配付したとのニュースを耳にしましたが2万個追加したそうで。テレビでは一人当りの個数を報道していましたが実際は記念で持って帰ったり、コンドームがまだまだ高価な国の選手が大量に持ち帰るために相当な個数になったそうです。
しかし、長野冬期五輪ではその種のニュースは聞きませんでしたが、実は配付されていたようです。日本で配ると言うのはニュース性に乏しいのでしょうか?それとも、その時忙しく情報が入って来なかったからでしょうか?
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