〜今月のテーマ『大人の包茎について』〜
●『日本的責任の曖昧さ』
○『60歳で真性包茎!!!!!!』
●『包茎のEBM(Evidence Based Medicine)!!!!!!』
◆CAIより今月のコラム「5年ぶりの大興奮」
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最初に標語ありがとうございます。
愛があるなら、コンドーム
愛がなくても、コンドーム
たったらつけようコンドーム、
つけて安心コンドーム
(A.K.)
1瞬の愛にもコンドーム
(T.W.)
これからもドシドシ送ってください。
●日本的責任の曖昧さ
プロ野球選手も所詮人間ですから婦女暴行や交通違反をするでしょう。しかし、成人しているんだから悪いことは悪いとして社会的制裁を受けて当然。犯罪は犯罪、自己責任は自己責任。酒の上での事件も強制わいせつ行為は絶対に許されません。レイプは犯罪です。しかし、マスコミには犯罪者をかばおうとするムードが………? これって絶対おかしい!
俳優の息子が覚せい剤使用で逮捕。俳優本人が罪を犯したならいざ知らず、息子、それも成人した息子が犯した犯罪の責任を親が取らなければならない………?親は死んでも死にきれない!
田中新長野知事に対する県庁職員の暴言は笑うしかなかった。しかし、慰留は責任追及を徹底すると日本的曖昧組織の中でやっていけないとを読んでのこと………?
さすが「しなやか」知事さん!
責任の所在が曖昧な社会を「しなやかに生きる」のは本当に難しい、とあらためて思う今日この頃です。
泌尿器科医としての責任感から(?)出した包茎の本の需要って結構あるんですね。「まちがいだらけの包茎知識」を出して間もないのに「本を読んで岩室先生に相談したくてきました」と2人の患者が病院を訪ねてくれました。本の中で十分説明できなかったところをついての来院だったので、
今月は『大人の包茎について』詳細解説です。
医者と患者の真剣なお・は・な・し
–岩室先生の大人の包茎外来–
◯60歳で真性包茎!!!!!!
真性包茎の人は次のいずれか「生まれつき」か「炎症(亀頭包皮炎)を繰り返した結果」だと書きました。しかし、それ以外にも実は真性包茎になる方法がありました。
「ぜひ岩室先生に」と言って外来を受診したのは予想に反して60歳代の人でした。正直「どうしてあなたが??????」と思ったもののいつものように冷静に対処。
岩室:どうされましたか。
患者:実は真性包茎になったので、手術をしないで治して欲しいと思いいろいろ調べ岩室先生のことを知りました。
岩室:私のことはどこで知りましたか。
患者:「まちがいだらけの包茎知識」を本屋で見つけ隅から隅まで読みました。岩室先生が手術をすると言えばあきらめて手術をしようと考えています。
岩室:以前のペニスの状態はどうだったのですか。
患者:完全な仮性包茎でした。
岩室:問題はなかったのですか。
患者:まったくありませんでした。
岩室:ではどうして真性に。
患者:炎症起こして医者に行ったところいろんな薬を処方されたのですが使っている内にむけなくなったのです。そして今では排尿する時には包皮(の中に尿が溜まってから出るため包皮)が膨らんでしまいます。
岩室:どんな薬でしたか。
患者:ゲンタシン軟膏、カビの薬、ステロイド軟膏といろいろ使いました。
岩室:ステロイド軟膏を使った後に真性になりませんでしたか。
患者:そう言えばそうかも知れません。
岩室:ステロイドは要注意なんですよ。ステロイド軟膏は湿疹の治療薬、等として良く使われますが、ステロイドには血管を収縮させたり、皮膚を萎縮させる作用があります。使い方を間違えると真性包茎になることは十分考えられます。
診察をしてみるとピンホール(包皮口[ペニスを覆っている包皮の先端]が針の穴)ほどの大きさでした。包皮をむくことにかけては日本一と自負している腕をもってしてもぴくりともしない包皮口で、おしっこも勢い良くでないのは当然でした。以前の私でしたらすぐに手術の決断を下していたと思います。しかし、患者さんは一縷の望みをかけて遠くから厚木病院を受診してくれたので本にも紹介したバルーニング法で広げることにしました。
患者:本に紹介されていた方法ですね。
岩室:少々乱暴な方法ですが手術をしないで済むかもしれません。我慢できますか。
患者:そのために遠路はるばる来たのですから。
ということで、普段は子供の膀胱に入れて尿を回収する時に使うバルンカテーテル(膀胱から脱落しないように先に付いている風船を膨らませて使う)という細く柔らかい管の先端にゼリーをつけて包皮口から挿入しました。風船をちょうど包皮口のところで膨らませると包皮が割けて包皮口が少しずつ広げました。
岩室:少し我慢してくださいね。
患者:(顔を歪めながら)頑張りますが痛いですね。
少しずつ拡張作業を繰り返した後、包皮口から亀頭部が見えるようになりました。ひび割れて痛々しい傷が感染しないように化膿止めの飲み薬と軟膏を処方し1週間後に再び外来受診。随分良くなっていたので、2回目からはバルンカテーテルを使わずに手だけで広げ、間もなく通院不用になる予定です。
大人になってからの包茎については何の疑問にも思わず、即手術という泌尿器科医が多いでしょう。しかし、患者さんは手術はできるだけ避けたいと考えているはずです。包皮に炎症を起こしても絶対にステロイド軟膏は使わないこと。子どもだけでなく、大人の真性包茎も仮性包茎にできます。
●包茎のEBM(Evidence Based Medicine)!!!!!!
20代後半の清潔そうな若者がどうしても岩室に話を聞いてもらいたいと受診。
患者:仮性包茎ですが手術もするつもりはありません。しかし、仮性包茎ゆえの問題もあり、今まで何人かの医者にかかりましたがどうしても納得がいかないのでどうしても岩室先生に診てもらいたくて来ました。
岩室:仮性包茎の問題って?
患者:仮性包茎だと普段皮がかぶっているためどうしても時々かぶれることがありますよね。(鋭い分析)。かぶれた時は医者に行くようにしているのですが(ここがあんたの間違い)かかる医者、医者、みんな言うことが違うんです。(だって医者は仮性包茎について真剣に考えたことがないはず)。ある医者は「石鹸にかぶれるのだから石鹸をつけずに洗えばいい」、別のは「化膿止めの軟膏を塗っていれば治る」と薬をくれますが完全には治りません。さらに別の医者は「ステロイドの入っていない炎症を押さえる薬を使いなさい」ともらった薬を使っているうちは良いのですが止めると悪くなります。どうしたら良いのですか。(ここまでわかっているなら自分で考えれば良いのに)。手術したらよくなるのでしょうか。でも手術はしたくないし先生も手術を勧めていませんよね。納得できる話を聞きたくて来ました。
岩室:いろんな医者にかかってあなたなりの考えをお持ちのようですのですね。まずあなたのペニスをきちんと診察をしてみましょう。ズボンと下着を膝まで降ろして下さい。そして包皮を自分でむいてみてください。
岩室:(何の問題もなくむける仮性包茎)。今のところ特に炎症らしいことは起こっていませんね。次にこのペニスにとって大事なことは「手術をしてもいいペニス」か「手術をしてはいけないペニス」なのかを見分けることです。(ここでおもむろにゴム手袋をつけて)ペニスが勃起した時のサイズを確認します、(と言いながら亀頭部を持って思いっきり引っ張ります)。引っ張る前は亀頭部の周辺に余裕があった皮膚も、亀頭部を引っ張り勃起した状態と同じ長さにするとほとんど皮膚に余裕がなくなりましたね。勃起した時これくらいの長さになりますよね。
患者:はい。亀頭部も出ます。
岩室:(皺になっている一部の皮膚を引っ張りながら)手術をして余った皮膚を切除するとしても切り取れるのはこの部分だけです。これ以上(と言いながら多めの皮膚を引っ張って)切り取るとペニスが突っ張った状態になるのがわかりますね。あなたのペニスは「手術をしてはいけないペニス」ですね。
患者:いわゆる手術すると突っ張る状態になるのですか。
岩室:その通りです。(結構賢い患者)。
患者:では手術をしないとなるとかぶれやすい、炎症を起こしやすいのをどうしたらいいのでしょうか。医者によっては「石鹸を付けて洗うからいけない」という人もいて石鹸を付けずに洗っていますがあまり大きな変化がありません。
岩室:せっけんを付けるなというのは一利はあります。実際に石鹸にかぶれる人もいますし、ただれている時に石鹸を付ければそれだけで刺激が強くなりますよね。石鹸にかぶれる人で多いのは石鹸で洗った後、石鹸を十分洗い流さない人です。包皮の中に残った石鹸でかぶれてしまいます。大事なのは石鹸で洗った後はしっかり石鹸を落とすことです。それとケガの傷を石鹸を付けて洗う人はいないでしょ。ただれている時は何も付けずに洗ってください。そして、洗い終わったら包皮をむいた状態で天日干しにするといいですよ。
患者:時々ドライヤーで乾かしますが、その時は良くなるのですがまたかぶれたり、炎症を起こしたりします。
岩室:あなたも結構工夫していますね。そもそも人間の皮膚は汗もかくし垢も出ます。それが閉じ込められた状態の所にたまるのが包茎の宿命です。汗っかきの人は朝夕に顔を洗ったりしますよね。最近は男性も油取り紙を使う人もいます。人によっては朝夕シャワーを浴びる人もいるでしょう。手を一日に何回も洗うように、ペニスもその時々の状態に応じて頻回に洗ったりして対処しなければなりません。
患者:何回も洗っていいんですか。
岩室:もちろんです。ただ、洗うことにばかり気を取られるのではなく、休みの日や夜(他の人がいない時)はむいた状態で乾かしてください。自然乾燥が一番ですよ。
患者:薬をつけるとその時は調子がいいんですがつけない方がいいでしょうか。
岩室:薬は塗り薬に限らず、自分の自然治癒力を助けることはできても、自然治癒力を補うことは絶対できません。日本人は薬を過信しすぎていますよ。何より証拠に私は自分のペニスに薬を塗ったことはありませんよ。
患者:先生はどうしてそんなに詳しいんですか。
岩室:だって自分もあなたと同じ仮性包茎だからですよ。
包茎に限らず、人間の体とは上手に付き合ってあげる必要があります。でも、ちょっと具合が悪いと医者任せ、薬任せにしていませんか。包茎のことに限らず、自分の体ときちんと向かい合いましょう。
◆CAI編集者より今月のコラム
「5年ぶりの大興奮」
編集後記
先日、約五年ぶりにサッカーを観戦した。TVでは見ることが出来ないグランド全体の動きや、ベンチサイドの様子など競技場ならではの楽しみ。
そしてなんと言ってもスタジアムを包みこむサポーターの声援、見ず知らずの人間が一つになる瞬間。TVの前では味わえない90分間がそこにあった。その熱気は寒さを、その声援はストレスを忘れさせる。家の中では出せない大声もここなら出せる。
試合が終わったあとはノドがかかれていたほどだ。スポーツの秋、家の中でTV観戦も楽しいけどスタジアムに足を運んでみてはいかがですか、家では味わえない興奮がそこに見つかるはず。
T.H