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■■■■■■■■■■■ 紳也特急 vol,282 ■■■■■■■■■■
全国で年間200回以上の講演、HIV/AIDSや泌尿器科の診療、HPからの相談を精力的に行う岩室紳也医師の思いを込めたメールニュース! 性やエイズ教育にとどまらない社会が直面する課題を専門家の立場から鋭く解説。
Shinya Express (毎月1日発行)
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~今月のテーマ『マスクの達人』~
●『生徒の感想』
○『考え方の“癖”』
●『原点、基本から考える“癖”を』
○『黙食でできる感染予防は?』
●『マスクでできる感染予防』
○『マスクでできない感染予防』
●『マスクでおこる感染』
○『絶対マスクをしなければならない場面』
●『マスクの達人講座』
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●生徒の感想
先生の絆・自立・依存の話を聞いて、独りで生きていけばいいと思っていたのが、少しは人とも関わってみようかなと思うようになった。私はあまり性格が良い人ではありませんが、自分でできるかぎりのことをして、もっとたくさんの人とめぐりあって、いい出会いができたらいいなと思った。(中3女子)
自分はテレビやSNSの情報を信じてばかりいたので考えを改めるべきだと感じた。(中3男子)
私の固定観念を破壊した素晴らしい講習でした。あなたの教えは私の人生に必ず役立つでしょう。(高2男子)
はじめに先生の身のまわりでたくさんの人が命を落としていることを知り、驚きました。また、それを阻止するために「根本を切る」という発想のコロナ対策に関する内容も、とても勉強になりました。(高1女子)
自分はマスクは絶対につけなければいけないものだと思っていて、マスクをしていない人を見ると嫌な気持ちになるので、その認識を改めようと思いました。適切な条件下ならば、別にマスクを外しても問題ないということをしっかり頭に入れなければいけないなと思いました。(高1男子)
生徒さんの感想はまるで生徒さんと対話をしているような感覚になります。そして多くの気づきをもらえます。新型コロナウイルス対策について、なぜ毎日感染者数を入力し、グラフを眺め、疑問点があればデータを加工し続け、気が付けば3年が経過しました。業務でもなく、お金になるわけでもないのにもかかわらずここまでやっているのは何故なのかを考えてしまいました。
HIV/AIDSの時もそうでしたが、適切な情報提供がされないため、たくさんの人が命を落としているからです。もちろん亡くなられた一人ひとりを存じ上げているわけではないのですが、人が亡くなることって本当に辛いことですよね。この思いがコンドームの達人の活動の原点でした。最近は新型コロナウイルスを感染症法上の5類にするために、そして政府のこれまでの情報発信をうやむやにするために、マスクも、黙食も、個人の、自治体や学校の考え方、判断にゆだねられています。そこで、今月のテーマを「コンドームの達人」に学び、「マスクの達人」としました。
マスクの達人
〇考え方の“癖”
この原稿を書いている時、NHKの朝のニュースで、寒波に備える心構えという視点に立った「知っておきたい考え方の“癖”」という放送がありました。大雪に注意という放送をしていても、結局のところ立ち往生や様々なトラブルが起きている理由をさぐったとのこと。あまり変化ないしいつもと一緒でしょという「正常性バイアス」、不要不急の外出は控えてという報道があっても、みんな外出しているし自分もいいでしょという「同調性バイアス」、これまで大丈夫だったから今回もたぶん大丈夫という「楽観主義バイアス」というのを考え方の“癖”として紹介していました。これって新型コロナウイルスに向き合う時の日本人の考え方ですよね。でも、これは考え方の“癖”ではなく、単に考えることを放棄している自分への言い訳だと思いませんか。
●原点、基本から考える“癖”を
新型コロナウイルスの感染経路は飛沫感染、エアロゾル感染、飛沫やエアロゾルが落下した食品を食べたり、手に付着した飛沫やエアロゾルに含まれたウイルスを除去しないまま食べ物を素手で触って口に入れたりする接触(媒介物)感染の3つです。私の考え方の“癖”は、常に原点に、基本に、根本に沿うことです。この考え方の“癖”はケニア時代の小学校の教師の、“Shinya, why do you think so?”と繰り返し聞かれ、自分で説明することを求められたことで培われたのかもしれません。
〇黙食でできる感染予防は?
学校で給食を食べる時、生徒さんたちは黙食を強いられ続けています。しかし、これは黙食が単に正常性バイアスに、同調性バイアスになっているだけで、そもそも食事の時にリスクとなる感染経路は何かを考えることを放棄した結果ではないでしょうか。
食事中の会話時の飛沫で感染するのは、その飛沫を直接顔にかけられるか、料理にかけられ、その料理を食べた場合です。裏を返せば、会話をしても、相手の顔に、料理に飛沫をかけない、かけられないように注意すればいいだけです。「いやいや生徒たちはそれができないから黙食させている」というのであれば、生徒さんに「黙食」か「飛沫の飛ぶ方向を考えながらの会話可」のいずれかを選択させればいいのではないでしょうか。
エアロゾル感染やエアロゾルが落下、付着することに対する対策は黙食でも、会話をしていても同じで、サーキュレーター等でエアロゾルを拡散、排気するしかありません。たまたまなのかもしれませんが、NHK首都圏ナビの番組で映っている教室でそのような装置が使われているところは発見できませんでした。
https://www.nhk.or.jp/shutoken/wr/20230127b.html
しかし、エアロゾルはうんと小さい飛沫なので、黙食でも出続けています。その落下したエアロゾルでクラスターが出たという報告は聞かないので、エアロゾルの落下による接触(媒介物)感染のリスクは非常に低いと考えられます。
手に付着したウイルスについては素手で食べなければ、お箸やフォーク、スプーンで食べていれば大丈夫です。手で食べるパン食の場合は、パンを触る直前にアルコールティッシュでパンに触れる指先を消毒しながら食べればいいだけで、黙食は関係ありません。
でもこのように、飛沫、エアロゾル、落下付着したウイルスとわけて考えられないから、「黙食」という言葉に同調するのです。
●マスクでできる感染予防
マスクを着ける理由、外していい場面を確認するためにも、そして正しいマスクの使用方法を考えるためにも、そもそもマスクの意味、効用を理解する必要があります。
不織布マスクや布マスクは飛沫が口から飛び出すのを防いでくれます。しかし、ポリウレタンマスクだと、飛沫を少しは通してしまいます。
他者のくしゃみを浴びた場合はそのくしゃみの中の飛沫をもらう可能性がありますので、その時マスクをしていれば口を開けていても飛沫が口の中に飛び込むのを防げます。しかし、口を閉じていればマスクなしでも飛沫をかけられても飛沫で感染しません。
エアロゾル感染予防で唯一マスクの効果が期待されるのが、口から飛び出したエアロゾルを不織布マスクが一定程度捕捉し、空中に飛散するエアロゾルの量を減らすことだけです。
〇マスクでできない感染予防
ポリウレタンや安倍のマスクに代表される性能の悪い布マスクだと、かえって口や気道、肺が温められ、マスクを通過して排出されるエアロゾルの量が増えます。もちろん多くのエアロゾルがそれらのマスクを通過して吸入されます。不織布マスクをしていても、マスクと顔の隙間からエアロゾルが空中に排出されてしまいますし、マスクと顔の隙間から吸入されます。
●マスクでおこる感染
不織布マスクを着けていながら、マスクの表面、裏面に飛沫やエアロゾルを付着させると、それらを吸い込むリスクが高まります。子どもたちだけではなく、大人たちもマスクの表面や裏面を繰り返し触っています。コロナ前にある中学校でマスクをしている生徒とマスクをしていない生徒でインフルエンザを発症するのはどちらが多いか調べてもらったら、マスクをしている生徒さんの方が多いという結果でした。これはマスクの正しい使い方を知らないためだと当時、養護教諭の先生と話していましたが、それ以外の理由として、マスクの表面に付着した飛沫やエアロゾルの水分が乾き、より小さなエアロゾルとなり、マスクを通過する可能性も否定できません。
〇絶対マスクをしなければならない場面
しゃべりながら他人の顔に飛沫をかけてしまうのを避けられない介護。
学生に調理の指導をしながら調理の場面を見せざるを得ない実習。
他にもいろいろ考えられますが、裏を返すと、自分の飛沫が他人の顔や料理にかからないように工夫ができればマスクはいらないということになります。
●マスクの達人講座
1.マスクは不織布、個包装
2.包装から取り出すときはマスクの縁、ゴム紐、金具のところだけを触る
3.マスクを広げる時は縁のところだけを触る
4.マスクを外す際にはその形状を崩すことなく、顔に接していた面を下にして置く
5.マスクの表面、裏面を触ってしまった場合は新しいものにとりかえる
6.使用時間が長くなればなるほど、呼吸でマスクの表面に付着した他人のエアロゾルや飛沫が乾燥し、マスク越しに吸入されるリスクが高まるためできるだけこまめに新しいものに取り換える
7.使用は最長で1日
8.捨てる時はマスクに付着した自分や他人の飛沫やエアロゾルに含まれているウイルスが拡散しないよう封筒に入れて廃棄
マスクを他人の飛沫やエアロゾルを吸い込まないため、すなわち自分が他人から感染しないためにつけていると思っている人が少なくありませんが、それこそ考えることを放棄する“癖”の結果でしょうか。私は屋内マスクが解禁になったらすぐに外します。皆さんはどうされますか?