後悔を生む正解、反省を生む選択

「反省はするけど、後悔はしない」

 この言葉は普及啓発をしている専門家として大いに反省と共に考えさせられた言葉です。
 人に何かを伝える時、つい自分なりの正解を言葉にして伝えてはいないでしょうか。私がHIV/AIDSの問題にかかわり始めた時、「セックスをするならコンドーム」という正解を伝えていたことを反省せざるを得ませんでした。
 ところがある日、家族計画の専門家の助産師さんが「岩室先生、コンドームってこうやってつければいいんですよね」とおもむろに家族計画(避妊指導)でいつも使っている試験管を取り出し、そこに馴れた手つきでコンドームをスルスルっと着けたのを見て「いやいやペニスには皮がありますからそこまで配慮しなければ・・・」と言う思いでチャンピオン君を作成しました。その後、大学生の勧めでYouTubeにコンドームの正しい装着法をアップしたところ、再生回数が新旧のバージョンを合わせると672万回を超えました。
 なぜこれだけ再生回数が伸びたかと言うと、異性愛者の男は自分のペニスにしかコンドームを装着したことがないため、ある意味自己流でやっていますので「正しい装着法」と言うのを学びたくなるからだと思っています。実はこれまで芸能人を含め、いろんな人にチャンピオン君にコンドームを装着してもらいましたが、完璧にできたのは、残念ながら亡くなってしまったHIVに感染した、ゲイで、私の患者&親友&共演者だったパトだけでした。そのパトと次のようなやり取りをしていました。

岩室:コンドームの着け方が完璧なのにどうして感染したの。その日はコンドームを使わなかったの。
パト:使ったよ。
岩室:じゃ、どうして感染したの。
パト:コンドームは所詮ゴムでしょ。たった一回破れたんだ。
岩室:その時のセックスのこと、後悔していない。
パト:どうして後悔するの。自分で、この人とセックスをしたい。コンドームはちゃんと練習して着けた。結果的に破れて感染したけど自分でchoice、選択して決めたこと。反省点はあるかもしれないけど後悔はしていない。

 人はいろんな選択をして生きて行きますが、自分で選択し、結果としていろんな困難、トラブルに遭遇しても、その結果を悔いるのではなく、その後も前向きに生きて行けるようなメッセージの届け方が大事だとパトから教わりました。逆に、自分で選択をしないから、自分で選択をさせてもらえないから後悔につながると思いませんか。

情報の入手方法で変わる正解

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