~今月のテーマ『絆(きずな+ほだし)が作り上げたAIDS文化フォーラム』~
●『25回目を迎えたAIDS文化フォーラム in 横浜』
○『「想い」が始まり』
●『できる人が、できることを』
○『#リアルとつながる』
●『性犯罪のリアルに迫る』
○『三ツ矢雄二と語るセクシュアリティ&コンドーム』
●『宗教とエイズ Part13』
○『メディアの向こうのリアルにつながれ!』
●『コンドームの縫いぐるみがつなぐリボン』
○『つながりから考える薬物依存症』
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●『25回目を迎えたAIDS文化フォーラム in 横浜』
8月3日(金)~5日(日)に開催されるAIDS文化フォーラム in 横浜( http://abf-yokohama.org/ )。先日、プログラムを見た人が「よく、これだけのプログラムを揃えられましたね」と言ってくださいました。確かに、25年連続で開催してきたこともすごいし、京都、佐賀、陸前高田、名古屋に広がったこともすごいし、3日間、聞きたいプログラムが横並びで行われる充実した内容になっているのもすごいし、何より、入場料無料というのがすごい!
「どうしてこんなことが可能になったのですか?」と聞かれても、おそらく誰も「このようにすれば、どこででも同じことができると思いますよ」という明確な答えを言えないと思います。何を隠そう、25年間関わっていた岩室紳也も、そして運営委員も誰一人として答えられないと思います。
ただ、25回も開催できたことに感謝しつつ、今月は「絆(きずな+ほだし)が作り上げたAIDS文化フォーラム」をテーマに、AIDS文化フォーラム in 横浜について少し掘り下げつつ、岩室が出演するプログラムの紹介をしたいと思います。
『絆(きずな+ほだし)が作り上げたAIDS文化フォーラム』
○『「想い」が始まり』
1994年に横浜で第10回国際エイズ会議が開催されました。しかし、入場料8万円では市民はもちろんのこと、HIV/AIDSに関心を持っている保健医療関係者も教育関係者も参加できません。そこで、前年にベルリンで開催された第9回国際エイズ会議に参加された南定四郎さんが、国際会議とは別で開催された「市民のための市民によるフォーラム」を目にされたそうです。「ぜひこれを日本でも」と考え、個人的に横浜YMCAに「何かできないか」と働きかけた結果、神奈川県も「いいアイディア」とのことで第1回のAIDS文化フォーラム in 横浜の開催につながりました。まさしく一人の「想い」が原動力でした。
●『できる人が、できることを』
AIDS文化フォーラム in 横浜の始まりで一番印象に残っているのは「文化」という言葉をYMCAの事務局の長澤さんが提案したことでした。当時、まだ30代だった岩室は「???」でしたが、積極的に反論するような思いもなく、そのネーミングになりました。この一件は象徴的ですが、それ以降も、フォーラムの運営に当たって、気が付けば大事にしてきたことが「できる人が、できることを」、「人のアイディア、思いを尊重しよう」だったと思います。
会場ボランティアの存在抜きで運営は考えられないのですが、それに長けている人がいつも上手に取り仕切ってくれています。岩室はパソコンが得意なので運営委員会の議事録作成やMLの運営を担当しています。まさしく「できる人が、できることを」を大事にし続けてきました。お陰様で、ネットに詳しい運営委員の加入でHPのリニューアルも実現し、Facebook(https://www.facebook.com/abfyokohama/)も立ち上がりました。
ここでぜひお伝えしたいことは、運営委員はもちろんのこと、プログラム主催者、プログラム登壇者は全員ボランティアだということです。もちろん、旅費だけでも出したいという思いはありますが、残念ながらその財力もないのが本フォーラムです。だから絆(きずな)、すなわち、つながりでお願いし、受ける側も絆(ほだし)、仕方がないかと受けてきてくださっています。感謝しかありません。
○『#リアルとつながる』
25年も続いているということは、第1回の時はまだ生まれていないという世代が多くなっているということです。教科書には「エイズ」という章もある時代になっていますが、逆に「リアル」に、「自分ごと」と感じない世代が多いのも事実です。そこでオープニングにはHIVに感染されている方々に登壇していただくこととしました。
薬害エイズの原告で、参議院議員の川田龍平さん。HIV陽性者団体のJaNP+代表理事の高久陽介さん。「神様がくれたHIV」(紀伊國屋書店)の著者の北山翔子さん。この3名にご登壇いただくこととお願いし、快諾していただきました。でも、この3名だけだと確かに「リアル」だけれど、現代社会にどうPRし続ければいいか、アイディアの広がりがないのでYouTuberのかずえちゃんにご登壇いただきたいということになりました。このアイディア、人選も新しく運営委員になってくださった宮崎豊久さんのお陰です。正直なところ、「会ったこともないかずえさんが来てくれるのだろうか」という不安は、実際に会ってみると「喜んで」と言っていただけました。大事なことは「想いをつなぐ」ことだと改めて思いました。
●『性犯罪のリアルに迫る』
「男が痴漢になる理由」という衝撃的な本を執筆された斉藤章佳さんのことは1年以上前から存じ上げていました。昔から「犯罪予防は健康づくりから」と言い続けていた自分にとって、斉藤さんが本の中で何を語っているのか、予防(一次、二次、三次)という視点で何を考えておられるのかに興味がありすぐに本を読ませていただきました。率直に言うと、すごく「わかる!!!」と感動するところと、「???」というところも・・・。絶対この人とつながりたいという思いがつのるばかり。でも、ご本人につながるチャンスがない。
そんな時にありがたいのが「仲間」の存在。同じように斉藤さんの話に興味を持った宮崎豊久さんが彼の講演を聞きに行き、連絡先を聞いてくれたので早速連絡をしました。ありがたいことに、AIDS文化フォーラム in 横浜に毎年のように講演に来てくれている松本俊彦先生とは知り合いとか。出演を快諾してくださいました。
○『三ツ矢雄二と語るセクシュアリティ&コンドーム』
大人気漫画のタッチの声優の三ツ矢雄二さんは昨年のフォーラムの前に、ご自身がゲイであることをカミングアウトされていました。その三ツ矢さんが登壇されたプログラムが大人気でした。とにかく自然体で、それこそアダルト映像の声優を演じたり(言っていいのかな)、本当に盛り上がりました。今年もぜひご参加をとお願いしたところ、再登板が実現しました。
ところが今年は司会進行をする岩室紳也に少々プレッシャーがかかっています。しらかば診療所の井戸田一朗先生がご一緒だからです。何と、お二人ともゲイの方です。壇上にいる岩室が、数の上で言うと「マイノリティ」です。社会的にはなかなかない状況ですが、大いに楽しみたいと思っています。
自分自身が「ゲイ」を理解できなかった時に亡くなったパトにこんな質問をしたことがありました。「ねっ、男が好きなら岩室はどうなの?」と投げかけたら、「趣味じゃない」とあっさり言われました。異性愛者の男に「女なら誰でもいい?」と聞いているようなもののですよね。でも、こんな話ができる仲間がいたから学べたことも多いと感謝です。
●『宗教とエイズ Part13』
AIDS文化フォーラムでいろんな勉強をさせてもらいましたが、この「宗教とエイズ」は本当に自分の生き方を変えてくれたセッションです。事務局を担ってくれている横浜YMCAは字のごとく、Young Men’s Christian Associationというキリスト教関連の団体です。ただ、AIDS文化フォーラムin 横浜の事務局を担っていただいている中で「キリスト教の教えに沿っていただきたい」といった話は皆無でした。個人的には「カトリックはコンドームや同性愛に反対」という思い込みがあったので、「触らぬ神にたたりなし」程度の認識でした。
転機が訪れたのがそれこそ14年前でした。佐賀県に講演に行った際に浄土真宗本願寺派の僧侶の古川潤哉さんと知り合う機会を得ました。仏教の立場でホスピスや若者の性の問題に取り組まれていたので、ぜひ「宗教とエイズ」というセッションを開催したいという雰囲気になり、第一回目の「宗教とエイズ」が開催されました。
といっても、この二人の思いだけでは13年もこのセッションが続くはずがありません。カトリックの方で、HIV/AIDSデスクに関わっておられる伊東和子さんが運営委員会におられたことで、今年は神道の方の登壇も実現しました。「できる人が、できることを」がこのフォーラムの実際ですし、社会全体がこのようになればいいと思っています。
○『メディアの向こうのリアルにつながれ!』
下村健一さんと言えば元TBSのアナウンサーで、お顔を見れば「あの人」と多くの人が気が付く有名人が、今年2回目のAIDS文化フォーラム in 横浜へのご登壇です。昨年はオープニングでAV女優の吉沢明歩さんとご一緒していただいたりしましたが、今年は昨年のお話しを受け、再登壇していただくことができました。
インターネットの発達で情報とどう向き合えばいいのかということへの関心が高まる一方で、そもそもメディアが発信する情報がどれだけリアルなものか、信頼できるものなのかといった議論がまだまだ足りません。
そんな堅苦しい話はともかく、下村健一さんのような超有名人をこのフォーラムにつないでくれたのが運営委員の山田雅子さんです。彼女は別の活動で下村さんと知り合い、そのご縁で昨年も、そして今年も下村さんが関わってくださることになりました。本当に「できる人が、できることを」ですね。
●『コンドームの縫いぐるみがつなぐリボン』
「Ribbon を繋ごう in YOKOHAMA」はAIDS文化フォーラム in NAGOYA主催となっていますが、中心的に動いているのがピンク色のコンドームのゆるキャラのジミー・ハットリ君です。様々なリボン運動がある中、最近はHIV/AIDSのレッドリボン運動が走りだったことを多くの人は知りません。一方で、皆さんはオレンジ・イエロー・スプリンググリーン・レインボー・パープルはどのような運動を指しているかご存知でしょうか。この企画がすごいのは、「それぞれの運動がつながりましょう」ということを狙っているところです。正直なところ、そのような発想は岩室紳也にはありませんでした。ジミー君はただのゆるキャラではありませんでした。
○つながりから考える薬物依存症
このタイトルはAIDS文化フォーラム in 横浜が産んだ本のタイトルそのものです。松本俊彦先生、安藤晴敏先生、そして岩室紳也の3人で執筆しました。薬物依存症は「ダメ、ゼッタイ」だけでは防げません。何より必要なのが「つながり」「居場所」「絆(きずな+ほだし)」です。そしてこれは単に薬物依存症の患者さんたちだけが必要としていることではなく、今を生きる一人ひとりが求めていることです。
このようにいろんな人が、いろんな人を、いろんな思いで、つなぎ続けてきたのがAIDS文化フォーラムです。フォーラムで学んだことの集大成を「HIV感染も、薬物依存も、性犯罪も根っこは同じ!?」で話します。このフォーラムを運営する機会をいただけたことに感謝するとともに、会場で皆様とお会いできるのを楽しみにしています。