紳也特急 40号

〜今月のテーマ『寝た子を起こそう健やかに
              ー発達段階に応じた理解のためにー』〜

●『読者からのメール』
○『感染爆発が起こっているが』
●『性体験率をどう読むか』
○『若者・子どもを信じない大人たち』
●『コンドームがあったらセックスをする?』
○『「発達段階に応じた性教育」の限界』
●『「発達段階に応じた理解」を信じて』

◆CAIより今月のコラム
「世界AIDSデーに思う事」

———————————————————————
●『読者からのメール』
(小学校の養護教諭の方から)
 先日は、楽しいお話しをありがとうございました。さっさく、我が子におちんちんの話をしました。トイレを汚さないテクニックを教えてみると、実行したらしく、「お母さんすごい。まっすぐとんだよ。」と感動していました。また、本校の子どもたちにも話しました。高学年は、テレもあって少ししらっとしている子、興味はあるけど気にならないふりをしているような子・・しかし、中学年は「先生、ぼくのちんちんはこうなってる。」と自分の話を始めたり、「そうそうよごしたことある。」ともりあがりました。おちんちんの資料も、大きくコピーして保健室においています。男子がみんなで読んでほしいなとねがっています。

(女子高生Aさんより)
 はろ〜(^○^)☆ちょっと久々に紳也特急読んだよ!なんかいっつもチラ見はするんだけど何となくあの長さを読むのが億劫で・・・って、書いてる本人に言うもんじゃないね(笑)ってか、あんまAVのエッチにゴムを使ってるかどうかなんて考えたことなかったけど、結構当たり前の事だよね(^_^;)だってあれ、「仕事」じゃん!?そうでなくたって色んな病気と隣り合わせな仕事なのにゴムすらしなくてどーすんだっつ〜のねぇ。読んでてちょっと「!!!」って思ったのが女子高生が「精子を飲むと肌が綺麗になるのか」ってやつ!!!!あたしこの前彼氏に言われたの
彼>「精子飲むと肌が綺麗になるって知ってた?」って。当然あたしは
A>「何馬鹿なこと言ってんの!?そんなの聞いたことないよ(-_-;)絶っっっ対ウソ!!!!!」って言ったんだ〜。したら
彼>「でも元カノは本当にすっげぇ綺麗になったんだって!!」
A>「(ってゆーか私の肌が汚いとでも言いたいの!?i怒。思いつつ・・)もしそうだったとしてもあたしは嫌だかんね・・・・(笑)」って会話がつい最近にあったのよ(@_@)/っっこん時「こいつ、バカ???」って本気で思ったんだけど、バカは一人じゃなかったのね・・・・。ってか、どこでそんな情報を知るんだ〜?って感じ。だって私は聞いたことないもん。

 おしっこをまっすぐ飛ばして喜んだ彼、よかったね。彼氏の要求に敢然と「No」と言ったAさん、あっぱれ。いろんな便りをいただくと、性教育は奥が深いと思いつつ「寝た子を起こすな」という人にはAさんからメールは(@_@)なんでしょうね。そこで今回のテーマは「寝た子を起こそう健やかにー発達段階に応じた理解のためにー」としました。

寝た子を起こそう健やかに
 ー発達段階に応じた理解のためにー

○『感染爆発が起こっているが』
 12月1日は世界エイズデー。昨日までの第16回日本エイズ学会でも若者の性感染症が増えている、10代の妊娠中絶は増加の一途、このままでは日本のHIV感染は大変な状況になってしまうという発言が相次ぎました。NHKのニュースでも10代で感染した女性がインタビューを受けていました。実際にわれわれの所に来る感染者の方が急増しています。本当に危機的な状況だと思うのですが・・・・普及啓発でやっていることと言えばイベントや読みたくもないパンフレットの配布? 実は今日の午後は銀座ヤマハホールでエイズのイベントです。地域によってはコミュニティFMで篠原ともえさんと岩室のトークが流れているかもしれません。でも、この程度の情報提供じゃとてもとてもHIV感染爆発は抑えられません。もっともっとドラスティックな内容で繰り返しやらないとダメですよね。

●『性体験率をどう読むか』
 中学生で10%、高校生で40%、20歳で60%という性体験率を聞いてどう思われますか。わたしは中学生の90%、高校生の60%、20歳の40%はセックスをしていないと思ってしまいます。性情報が氾濫し、セックスがしやすい環境のいま、どうしてしていない人がいるのでしょうか。チャンスがなかっただけではないと思います。積極的に「しない」という選択をしている若者も少なくありません。この数字の読み方は若者を信じているか、信じていないのかで違うのではないでしょうか。

○『若者・子どもを信じない大人たち』
 しかし実際には大切な、ストレートな情報を伝え切れていません。
「するなら着けようコンドーム」
「気をつけろ。その一滴で子ができる」
「愛がなくてもコンドーム」
「愛があればこそのコンドーム」
 講演会の度にこのようなストレートな表現をする私も決して抵抗感がないわけではありませんが、恥ずかしいとか言っていられない状況です。メッセージを受け止める若者は講演会にも影響されるでしょうが、そんな単純なものではなく、彼ら彼女らが10何年間生きてきた中で養ってきた感性でこれらのメッセージを受け止めてくれます。「あんなにはっきり言うのは恥ずかしいはずなのに、はっきり言ってくれたことでかえって大事なことだと思えた」という感想をよくもらいます。今時、「思いやりの気持ちをもって」、とか、「お互いをわかりあってからセックスを」、と言っても「何それ」、「何ダサイことを言ってんの」、「いやだと言えば嫌われるだけ損」、と返されるだけです。

●『コンドームがあったらセックスをする?』
 コンドームを配るというのも理解されない手法のようです。コンドームを配っただけで親や地域の人から猛反発があり、配布をやめたという話はいくつもあります。主催者は何のために配布していたのですか。コンドームが大事だとわかっていながら既に刷り込まれた「コンドームは恥ずかしい、買いにくいもの」というイメージを払拭するために配布しているという目的意識を明確に持っていれば何ら問題はないはずです。「コンドームを配ったらセックスを奨励しているようなもの」という人に私は「あなたはコンドームがあったら誰とでもセックスをするのですか」と切り返すようにしています。若者もコンドームをもらったらセックスをするほど短絡的ではありません。本当に短絡的な人はコンドームなしでセックスをしてしまいます。そんな人にこそコンドームをさしあげてでも使ってもらいたいものです。

○『「発達段階に応じた性教育」の限界』
 性教育の話になるといつも引っかかる言葉が「発達段階に応じた性教育」です。この言葉は性教育の現場では当たり前のこととして言い伝えられています。しかし、本当にこのような考え方でいいのでしょうか。確かに性や体のことを教えるときに、初潮、精通を経験しているか否か、性体験があるか否かで一つひとつの情報をどう受け止めるかが変わってくると思います。一人ひとりの状況を見ながら性教育を行える家庭や一対一の状況ならいざ知らず、学校や集団で情報を伝える場合に「発達段階」という枠をはめてしまうと、その枠に縛られて適切な情報を伝えられなくなります。すすんだ子もいるけど奥手もいるし・・・・と悩んでいるとつい「すすんでいるやつは遊び人」、「不良」といったレッテルを張ってしまい、奥手の「いい子」のレベルに合わせた情報伝達でお茶を濁しておしまい、というケースが少なくないのではないでしょうか。ただ、学校には一定の縛りがあるでしょうから、そこは外部講師等を上手に活用していただければと思います。

●『「発達段階に応じた理解」を信じて』
 若い人とメールのやり取り、講演会後に校長室で話しをしていく子ども達を見ていると、実は若者の力はすごいと実感させられます。読者からのメールにあったおちんちんをむいておしっこをする感動、彼氏に精液を飲むのを「No」と言った彼女、いずれもそれぞれなりに情報を理解してもらえたのではないでしょうか。性情報が溢れています。HIVをはじめとした性感染症も蔓延しています。若者を性情報や性感染症から隔離しておくことが不可能であるならば、対処方法を正確に、科学的に伝え、その情報を若者がそれまでの経験や学習とからめて若者なりに「発達段階に応じた理解」をしてくれると信じたいと思います。一見無責任に思えるかもしれませんが、このような発想転換が大事になるのではないでしょうか。若者達を信じられる大人になりたいですね。

◆CAIより今月のコラム

「世界AIDSデーに思う事」

 12月1日の世界AIDSデーを前にして、マスコミ等によってHIV/AIDSに関する話題が数多く取り上げられている。先日は、マイクロソフト社のビルゲイツ氏がインドのAIDS支援のために$100million寄付したというニュースも報道されていた。
 世界のHIV感染者が昨年末で4200万人に上り、今年新たに感染した人が500万人、今年1年間のうちにAIDSで死亡した人が310万人という実情を踏まえると、我々は、HIV/AIDSに対してもっと関心を深めなくてはいけないなぁと考えさせられる。

 HIV/AIDSは薬を飲めば死ななくてすむ病気であるにも関わらず、こうして多くの命が失われていくのは非常に悲しい現実である。感染者の9割以上が発展途上国に集中しているこの病気は、医学の恩恵に与れない貧困さゆえに日々感染者を増大させる悲劇を生んでいる。

 日本では、HIV/AIDS=死というイメージが少しづつ解消され、いかに感染を予防するか、病気と共に生きていくかが問題となっている。しかしHIV/AIDSが生命に直結している国はまだまだ多い。このような薬は特許からはずして安く提供されるべきであろうし、先進国はその為の支援を今以上に推し進めるべきである。

世界AIDSデーをきっかけとして、より多くの人がHIV/AIDSに関心を持ち、自分に身近な問題であると同時に世界的にも重要な問題である事を理解してくれる事を、祈ってやまない。

                          I.Y