紳也特急 57号

〜今月のテーマ『性生活習慣病』〜

●『自己責任』
○『成人病は自己責任病だった』
●『生活習慣病という概念』
○『性感染症は性生活習慣病』
●『視野が広がればやさしくなれる』

◆CAIより今月のコラム
「日本のスイッチ」

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●『自己責任』
 最近「自己責任」という言葉がよく聞こえてきます。しかし、その言葉に対する国民の反応を見ていると面白いですね。イラクで誘拐された人たちの行動を「自己責任」と責め立て費用負担を求めていた人も、マスコミから逆の論調が出てくると一変して「国民を守るのは国の責務」という方向に転換しました。
 年金制度についても「支払わないやつが悪い」とか「行き先不透明な時代に年金を納めたくない気持ちもわかる」と言っていたマスコミも、閣僚や政党のトップが支払っていない事実を受けて、「支払っていない人が国のトップ、政党のトップにいるのはおかしい。責任を取って辞職すべし」と論陣を張るかと思っていたら、「支払わなかったのは自己責任というより制度上の欠陥、年金を確実に支払える環境整備が必要」と議論の方向が転換されてきました。
 このように国民の視点、マスコミの視点というのは悪く言えばコロコロ変わる。よく言えば、課題をとらえる方向性を示し、それが受け入れられれば180度違う考え方になるということのようです。エイズをはじめとする性感染症も相変わらず自己責任の、自業自得の病気と受け止められているのは、性感染症を予防する視点、概念が不十分だったためと考え、今月のテーマを「『性生活習慣病』という概念の必要性」としました。

『性生活習慣病』という概念の必要性

○『成人病は自己責任病だった』
 成人病と言われた高血圧、糖尿病、がんなどは、自分で健康管理ができない人の自己責任病と考えられていました。一日の塩分摂取量を10グラム以下にすれば高血圧は解消できることが明らかになると、高血圧は塩分を制限できない人の自己責任病。一日のカロリー摂取量を1600Kcalにすれば糖尿病にならないことがわかっているのに、カロリーをとり過ぎる、運動をしないで糖尿病になるのは自己責任。タバコを吸えば肺がんになるのがわかっているのに喫煙者が肺がんになったら自己責任だから医療保険を使わせるのはいかがなものか、といった話もありました。
 このような自己責任論が出てきた背景には、医学、科学の進歩により各病気の原因が明らかになるにつれて、病気の原因を明らかにしてやったのだから、病気の原因を取り除くのは一人ひとりの「自己責任」という雰囲気が医療関係者の中に根強かったからだと思います。何を隠そう、私も血圧が高い人の尿の中の塩分量を測定し、「塩分摂取量が20グラム以上ですよ。あなたは塩分取りすぎですから味噌汁、ラーメンの汁を飲まないように」と指導していたものです。糖尿病の人に「太っているのはよくないよ」と体重が72キロあった私が指導をしても当然のことながら効果はありませんでした。

●『生活習慣病という概念』
 病気の原因の一つが明らかになったからといってその病気が簡単に予防できるというものではありません。人が病気になるには様々な要因があるということが理解されるに従って、「かつて成人病と言われた高血圧、糖尿病、がんなどは必ずしも成人になってからおこるのではなく、子供のときからの生活習慣の積み重ねと、その人の持っている遺伝的素因、さらに環境要因が重なり合っておこる」と理解されるようになりました。
 成人病がおこる生活習慣要因としては食生活、運動、喫煙、休養、等々。遺伝的要因としては遺伝子異常、加齢、素因、等々。環境要因としては病原体、有害物質、ストレッサー、サポーター不在、等々が複雑に絡み合っています。例えば、糖尿病の疑いがあると言われたサラリーマンが自分でがんばってカロリーを制限しようと思っても、外食が多い中でどの食事が低カロリーなのかがわからないと上手にカロリーをコントロールすることができません。そんなのは自分で勉強してちゃんとコントロールすればいいという人もいるでしょうが、実際に自分がその立場になればカロリーコントロールは非常に難しいものです。しかし、最近は外食産業のカロリー表示もされてきましたし、どうしてもジュースが飲みたいと思ったらカロリーゼロの清涼飲料水もあります。お酒を飲むにもカロリーハーフのビールがあります。このように環境面からのサポートが充実されることで、運動する生活習慣がない人でも、カロリーをコントロールしやすくなってきました。

○『性感染症は性生活習慣病』
 上段の「かつて成人病と言われた・・・・」の前半だけを性感染症に置き換えてみました。
 『かつて性感染症と言われたエイズ、クラミジア感染症、淋病などは必ずしも成人になってからおこるのではなく、子供のときからの生活習慣の積み重ねと、その人の持っている遺伝的要因、さらに環境要因が重なり合っておこる』と考えられませんか。生活習慣要因としては性生活の低年齢化、性習慣の変化(フェラチオ、等の一般化)、コンドームを使わないのが当たり前、コミュニケーション能力の低下、等々。遺伝的要因としては(本能的)性欲、セクシュアリティ、年齢、加齢、等々。環境要因としては病原体の蔓延、ピアプレッシャー、自己主張しにくい環境、セクシュアリティへの無理解、情報(AV、ネット、雑誌、等々)の氾濫と混乱、お金、他人事意識、買いにくいコンドーム、等々が複雑に絡み合って性感染症を起こしていると考えると、性感染症をはじめとして性にまつわる健康問題は「性生活習慣病」と考えられないでしょうか。
 例えば、若い女性がクラミジアに感染しないようにセックスをしないか、せめてコンドームを使おうと思っても、セックスしていないなんて遅れてるという友達からの無言の圧力(ピアプレッシャー)に負けてしまったり、フェラチオでも感染するという情報を知らなかったり、コンビニでコンドームを買おうと思っても同級生がバイトをしていて買いにくかったり、といった多くの要因を考えると、クラミジアの感染予防は決して容易ではないことが理解できます。

●『視野が広がればやさしくなれる』
 人って結局のところ、甘かったり、弱かったり、おろかだったりします。そのためいろんな問題に巻き込まれますが、「自分のこと」として考えられないのは「自分」あるいは「他人」を取り巻く環境、状況が見えていないためではないでしょうか。イラクの問題で自己責任論がトーンダウンした人たちは、自衛隊を送っているのは自分たちが選んだ政府が行っていること、自分たちは対岸の火事と思っているのにそこに飛び込んでいった人たちがいたこと、アメリカのように「彼らのことを誇りに思う」という考え方があること、等々を知り、自己責任を責めるだけでは何も解決しないということを感じたのだと思います。
 年金にもいろんな問題があると思いますが、少なくとも閣僚たちがズルをしていたとは考えられない(考えたくない)ので納入率を上げるための工夫、環境整備はすぐにでも実行にうつされると思います。みんなの問題という意識が生まれれば自ずと様々な角度から取り組みが進みます。「性感染症は性生活習慣病」という概念が浸透すれば、視野が広がり、性感染症予防のためにコンドームが買いやすい、正確な性情報が伝えられる環境整備が進んだり、若者の性欲に対する適切な支援がされたり、と多様な方向性から、いろんな人に対するやさしい取り組みが増えると思いませんか。

○『コンドームブームに期待』
 性生活習慣病対策を効果的に進めるには、様々な方々が、それぞれの立場でできることを確実に進める必要があります。人に、お上に頼ってばかりではいけません。一人ひとりの住民もがんばらないといけないのでしょうが、実は民間企業も頑張ってくれています。皆さん、「003」をご存知ですか。久しぶりにヒットしているコンドームです。超薄型を売りに、「買いやすいコンドーム」から「買いたいコンドーム」という戦略転換ではないでしょうか。「使わなければならないコンドーム」から「使いたいコンドーム」へと若者の意識が変化し、当たり前のように、生活習慣としてコンドームが使われる時代、コンドームブームが来ることを切に祈っています。

◆CAIより今月のコラム

「日本のスイッチ」

 ここのところ、良くマスコミが世論調査を行いますよね。皆さんで無作為世論調査に参加した方はいますか?私は何年か前の選挙の時に電話がかかってきて参加したことが一度だけあります。
 今回紹介するのは自分の携帯電話を使って参加する世論調査です。
 「日本のスイッチ」は毎日新聞社が提供するサービスで、
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新聞とケータイ、2つのメディアのコラボーレーション企画「日本のスイッチ」。毎週、「今の日本、より多くの税金を使うべきなのは老人医療費?少子化対策?」や、「写真を撮る時の子供のピースサインはやめてほしい?かわいい?」など、政治や経済、社会問題から世相、風俗、日常生活まで、8つのユニークな質問を出題しています。毎週月曜日に先週の結果と今週の質問を朝刊社会面、及びケータイサイトに掲載。水曜日までに回答してもらいます。回答は皆さんのお手元のケータイで。回答した結果を集計して、翌週の 月曜日にミニ解説付で結果発表します。

ユーザ参加型の大型企画。あなたの親指で日本のスイッチを押してください!
                        毎日新聞HPより抜粋
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 毎週4万人強参加する自己参加型巨大世論調査です。私も飲み友達からの誘いで、先週から参加しましたのですが月曜日の結果が楽しみでたまりません!
 選択肢が2つなので(無回答も可)強引なステレオなのがお気に入りです。単純なだけに選択を躊躇したり、考え込んだりするものです。
 携帯電話からインターネットアクセスして毎日新聞を選んでいただければ、
簡単にあなたも参加できます。       参考サイト↓
 http://www.mainichi-msn.co.jp/column/etc/switch.html
                               W.T