「正解依存症」カテゴリーアーカイブ

岩室紳也が考える正解依存症とは次のようなものです。

自分なりの「正解」を見つけると、その「正解」を疑うことができないだけではなく、その「正解」を他の人にも押し付ける、自分なりの「正解」以外は受け付けない、考えられない病んだ状態。

このブログでは正解依存症(correct answer addiction)がまん延している状況を考えます。

LGBT理解増進法はおかしい

 いきなり政治ネタですか、と言われそうですが、皆さんに問いかけたいと思います。
 皆さんは恋人を作るとしたら、異性がいいですか、同性がいいですか、両方いいですか、それともそのような感覚はないですか。
 皆さんは自分の体の性別と、心の性別に違和感はありますか。

 実は私はHIV/AIDSに関わり始めた時、今でいうLGBTQの方のことが理解できないばかりか、それこそ偏見の目で見ていましたし、差別さえしていたと思います。ところが、ある日、友人になったゲイの人と次のような会話をしていました。

岩:なんでゲイなの?
G:岩室さんはなんで女が好きなの?
岩:男なら女でしょ。
G:じゃ、オレ異常?
岩:ごめん。確かになぜ異性が好きなのか、自分でも説明できない。

 すなわち、自分がなぜ異性愛者なのかも説明することも、理解することもできないのに、自分とは異なる性的指向の人のことを理解するなんて無理ですよね。LGBT理解増進法は中身の問題ではなく、そもそも論として異性愛者が上から目線で「LGBTのことを理解してあげる」という法律ではないでしょうか。それこそ正解依存症の人たちが良かれと思って作ったとしか思えません。

「マスク、換気、手洗い」という正解依存症

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岩室紳也も正解依存症だった

 では「岩室紳也は正解依存症ではないのか」と自分自身を問い詰めてみると、実は岩室紳也も講演の中で自分の正解を押し付けていました。

 エイズウイルスに感染しないためにはノーセックスかコンドーム!!!

 HIV/AIDSの普及啓発に携わっていた時、このようなメッセージを得意げになって伝え続けていました。確かにこのメッセージはエイズウイルス感染予防の観点からいうと、非常に科学的で正しいと言えます。しかし、講演でこのメッセージを聞いたにもかかわらず、結果的にエイズウイルスに感染した人がいたとしたら、「岩室先生に診てもらおう」と思うでしょうか。おそらく逆の思いで「岩室先生に正解を教えてもらっていたのに、それを守れなかった自分」という思いになり、私の外来を受診できないですよね。岩室紳也こそが正解依存症だったと思い知らされました。

 ここでは少しずつ、世の中に蔓延する正解依存症について、紹介しつつ、そこから脱却するにはどうすればいいかを考えたいと思います。

LGBT理解増進法はおかしい

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正解依存症とは

 岩室紳也が考える正解依存症とは次のようなものです。

 自分なりの「正解」を見つけると、その「正解」を疑うことができないだけではなく、その「正解」を他の人にも押し付ける、自分なりの「正解」以外は受け付けない、考えられない病んだ状態。

 「依存症」と聞くと薬物依存症、アルコール依存症、ゲーム依存症、ネット依存症、セックス依存症、等々を思い浮かべると思います。私も個人の問題だと思っていましたが、それは大きな誤解だと気づかされました。その結果、松本俊彦先生たちと「つながりから考える薬物依存症」(大修館書店)という本を出させていただいています。

 一言で言い切ると、それは正解依存症と怒られるでしょうが(笑)、少なくとも正解依存症は孤立、孤独の病気のようです。
コロナ禍の時、ある中学生が「親には家でゲームばっかりやっていると言われるけど、コロナで学校にも行けず、友達と遊べず、結果的に家ですることがないからゲームをしている。学校に行けるならゲームなんかいらない」と言っていました。

正解依存症まん延社会

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正解依存症まん延社会

 コロナ禍を経験し、またいろんなところで感染予防の話をさせていただく中で、つくづく感じさせられたのが、多くの人が求めていることが唯一無二の「正解」だということでした。一通り話し終わった後、「話の内容はよく分かったのですが、で、結局のところマスクは必要ですか、不必要ですか」との質問を受けると、自分自身の普及啓発能力を反省するしかありませんでした。しかし、マスクに限らず、様々な場面について同じように「〇〇は必要ですか、不必要ですか」や「〇〇は是ですか、非ですか」と繰り返し聞かれる中でふと思い出したことがありました。
 新型コロナウイルスが広がる中で、政府の専門家委員会の先生と話をする機会があった時に、きっぱり、「私は岩室先生とは意見が異なります」と言われ、残念ながらそれ以上議論を続けることが出来ませんでした。
 一方で次のように言われたこともあります。

 岩室先生は見えてくるもが多いと、楽しいと表現されていますが、多くの人は逆に混乱に陥ると思います。AかBだけでなくて、A~Zまであったら、どれが正しいのかという視点になるからだと思います。

 なるほどと思いました。新型コロナウイルスとマスクの関係のA~Dを並べてみました。

A:飛沫感染をさせないためにはマスクは必要。
B:自分が飛沫感染しないためには、飛沫を直接顔にかけられそうになったときはマスクは効果的。
C:不織布マスクをしていてもマスクと顔の隙間からエアロゾルはむしろ多く排泄されることになる上、マスクをしていてもエアロゾルはマスクと顔の隙間から吸い込むのでエアロゾル感染対策にはならない。
D:いろんなところを触った指を洗わない、消毒しないままマスクがずれた時にマスクの表面を触ったら、指についていた飛沫やエアロゾル内のウイルスがマスクの表面に付着し、結果的に吸い込むことになって危険。

 「ややこしい話はどうでもいいから、マスクは必要か不必要かを教えてくれ」という方が多いのではないでしょうか。

 確かにそのような視点に陥れば苦痛以外の何物でもないでしょう。でも、人間って、というか生きるってことはそんなに単純じゃないですよね。マスク警察が跋扈した時、科学的に考えられない、一方的に自分の意見を押し付ける人はなぜそうするのだろうか、と考えていました。そこにあったのは、正解依存症がまん延している社会でした。

岩室紳也も正解依存症だった

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